劇場公開日 2007年6月29日

「『ダイ・ハード』である必要性、なし。」ダイ・ハード4.0 cross yukiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0『ダイ・ハード』である必要性、なし。

2007年8月7日

笑える

単純

2時間現実逃避をするためのアクション映画としての及第点はクリアしている。いや、だけどなぁ~・・・。
違うんだよ。この話、娘との絡み以外、全て別に『ダイ・ハード』じゃなくてもいいし、ブルース・ウィリスじゃなくてもいい。

『ダイ・ハード』第一作が奇跡の超傑作たる最大の理由、それは物語の“箱庭的展開”にあるのだ。
“ごく限定された空間内”の極限状況下に偶然居合わせた男が、不運を乗り越える知恵で顔の見えない敵に迫り、最終的に一掃する・・・。第一作は、アクション映画の体裁をとりながら、その実観客に知的興奮をもたらすという離れ業を見事にやってのけていた。
“国家の存亡をかけた戦い”みたいなボンクラな状況を運と重火器と筋肉で無理矢理切り抜ける、みたいな凡百の下らないアクション映画とは、脚本の時点でデキが全く違ったのだ。

ところが今回はどうだ。
とにかく、主人公のジョン・マクレーンが“偶然”“運良く”生き残る場面が連発。オマエどんだけ運いいんだよと。
知恵もまわさず機転も利かさず、とにかく前に行くだけ。とりあえず驀進。なんだ、年取ってバカになったのかマクレーン。アンタはもっと機転の利く人間のはずだろ!
しかも今回は“国家の危機”ですからね。物語のあらずじからしてボンクラのかほり。第一作「高層ビル」→第二作「国際空港」→第三作「ニューヨーク市」ときて、今回は「アメリカ合衆国」。どんどんフィールド広がってます。
もし現実にアメリカの全通信網がストップしたら、全世界の金融・政治・軍事系統が大パニックになって、その機に乗じてどっかとどっかは戦争始めたり、アメリカ自体にも核ミサイル打ち込んでくる国が2、3ヶ国あってもおかしくないだろうに、その辺のディテールは一切スルー。「もし実際にこんなことが起きたら・・・」っていうリアルな恐怖感がカケラもない。

しかも肝心のアクションシーンが、引いたり寄ったりのタイミングに意図を感じないヘンなカット割りで何を見せたいのかがわからない場面が多く、ストーリーだけでなく画的な緊迫感もいまいち・・・。

せっかく10何年も待たされたのに、帰ってきたのはボンクラアクション映画でしたよ。
いや、最初に言った通り「ボンクラアクション映画」としての出来はメチャクチャ悪いというほどでもないんだけど・・・違うんだよ!僕らが『ダイ・ハード』の看板に求めてるのはそんなもんじゃあないんだ。

ハートがないんだよ、ハートが!!
『ダイ・ハード』も結局、単なるフランチャイズ商品にまで落ちてしまったか・・・。

あー、残念でならないっす。次作に期待。

cross yuki