劇場公開日 2007年6月9日

300 スリーハンドレッド : 映画評論・批評

2007年6月5日更新

2007年6月9日よりサロンパス・ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にてロードショー

映画鑑賞が新たな次元に突入したことを告げる一作

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音楽を聴くときに聴覚にすべてを委ねるように、すべてを視覚に委ね、ただ、網膜に映る動きと質感を味わうこと。それだけで本作によって映画を見るという快楽が新たな次元に突入したことが分かるはずだ。

「シン・シティ」で実現された実写でもアニメでもない新映像は、本作でさらに進化を遂げた。まず、その光量、色調、質感の緻密さ。薄曇りの空から降り注ぐ光の微妙な差違が表現され、さらに物語の時代に即して、映像には古代ギリシャのテラコッタの壺の色調とざらついた質感が与えられている。

加えて、速度の妙。スローモーションにも複数の速度があり、早回しもコマ落としも使用。例えば敵の兵士を槍で刺すといったひと連なりの動作が、3種以上の速度で描かれるのだ。この速度の妙味をさらに、兵士達が纏うケープを宙に舞わせて強調。そして、観客がこの映像に陶酔したい、と思った瞬間、映像は速度を落とし、その陶酔に身を委ねる時間を与えてくれるのだ。その愉悦。これらの質感、速度、図像で実現された、リアリズムとは別次元の美意識に貫かれ、身体の切断も流血もただひたすらに美しい。

監督が次に挑むのはアラン・ムーアのカルト・コミック「ウォッチメン」の映画化。その映像を見るのが今から待ち遠しい。

平沢薫

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