トゥモロー・ワールド : 新作映画評論

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映画

トゥモロー・ワールド

劇場公開日 2006年11月18日
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トゥモロー・ワールド 11月18日より日劇1ほか全国東宝系にてロードショー

近未来SF映画の概念を覆す傑作

Photography by Jaap BuitendijkPhotography by Jaap Buitendijk

近未来SF映画の概念を覆す傑作! 21年後が舞台だが、描かれていくイギリスの様相は、今世界各地で静かに進行している“現実”を集約したもの。テロの横行、不法移民の急増、広がる貧富の格差、弱者を切り捨てる政府……。それらすべてが、女性の不妊化という人類から未来を奪う突発的事態で、一挙に顕在化したにすぎない。メキシコ出身で社会の矛盾を見て育った異才、アルフォンソ・キュアロン監督は、明日にも我々を襲いかねない“悪夢”を見事に映像化してみせた。

主人公のセオ(クライブ・オーウェンが好演)は、生きる意味を失っていたが、奇跡的に子供を宿した娘キーに希望を見いだし、彼女を救うことに命を賭ける。その心情と息詰まる逃避行を、彼の視線でとらえた臨場感あふれる手持ちカメラ映像で観客に体験させるのだ。なかでも、軍と反政府組織が難民キャンプと化した街で繰り広げる市街戦下での救出劇は、6分を超えるワンショット撮影により、圧倒的な迫力で激しく心を揺さぶられる。

さらに監督は、セオを助ける親友をヒッピーに憧れる老人にしたり、セオにキーを託す元妻ジュアリンの母親を「9・11」で亡くなったことにするなど、過去をもさりげなく物語に取り込む。そして、新旧UKロックをキャラやシーンに合わせて全編に流し、60年代から何も変わっていない事実を呼び覚ます。

その上で、人類の本能的で根源的な感情に最後の希望を託し、深い余韻に包まれるのだ。

山口直樹

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