劇場公開日 2003年8月10日

名もなきアフリカの地で : 映画評論・批評

2003年8月1日更新

2003年8月10日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

ただボーッと悠然とした大地と時の流れに浸っていればいい

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ナチスによる迫害を恐れて、あるユダヤ人家族がドイツからケニアに脱出。父親がまず単独で渡航して農場での仕事を得て、後で妻と幼い娘を迎えるが、ブルジョワ生活に慣れ親しんだ妻は新しい住環境に不満だらけなのに対し、引っ込み思案の性格だった少女の方は、むしろ大自然に囲まれた生活に自らを解放し、現地の生活習慣にとけ込んでいく……。

そんなわけで、原作者の自伝に基づく、感動の大河ロマンといった作品なんだけど、僕のようなヒネくれた性格の観客としては、むしろそうした図式に対する先入観からかえって身構えちゃうところがあって、簡単にいうと、泣ける要素が満載であることが容易に予測できる映画であるがゆえに、むしろ簡単に泣かされてたまるか……とがんばってしまうわけだ。

ところが、本作は意外にサラリとした演出というか、泣かせてみせるといった意気込みをむしろ蒸発させ、ただボーッと悠然とした大地と時の流れに浸っていればいい……といった作りになってる。アフリカや「女性」を過剰に美化することもないし、強いていえば欠点がどこにも見当たらないことが唯一の欠点といったところか。若手女性監督カロリーヌ・リンクの成熟ぶりに称賛の拍手を送りたい。

北小路隆志

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