「思春期の入り口」ハリー・ポッターと炎のゴブレット とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5思春期の入り口

2021年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

寝られる

原作を読んだ時から違和感のある設定。
 物語のための設定かと突っ込みどころも満載。
 この後の原作も、急に世界観を広げて、やたらにいろいろな縛りをつけて、話をこねくり回して、悲壮感等や不可能感を出すための設定に振り回されて、拡散してしまい、ダイナミックさが失われていった。それでもスネイプ先生が気になって、最後まで読んだし、映画も観たけれど…。

 マクゴガナル先生同様に思う。「なんでこんな危険な競技をあえて生徒にやらせる?」…これから対峙する戦いのための実習?だったら全員に訓練させないと。危険すぎるからと途絶えていたものをわざわざ復活させてまで。
 今回、コロナ禍の中でのオリンピックを見ていて、なおさら思う。オリンピックは、その舞台のために日々の研鑽を続けていたアスリートのための場だった。けれど、この大会は違う。この3つの競技のために研鑽を研ぎ澄ましていたという伏線はない。無理くり設定。

 そして、ラストに解き明かされる、ある教師の謎。なにそれ?というオチ。強いという鳴り物入りだが、そんな風に捕まっちゃうなんて…。
 親友?違いに気づかないものなのか?マルフォイならともかく。しかも、ハリーたちがポリジュースを使ったような一瞬ではなく、あんなに長くともにいたのに。

 しかもヴォデルモ―トの罠も周りくどすぎて…。ダンブルドア校長の庇護下にあるから普通に手が出せないという理由なんだろうけど…。

 そして、ハリーの学校内での立ち位置。映画ではハリーの活躍に絞って映画化されているのに、原作でも、クディッチでも活躍するメンバーなのに、なぜ、ダンスパーティの相手選びに難航する?一般的な学校なら、サッカーで活躍する選手なら、モテモテなはずだ。ハリーが奥手でも、今の少年・少女なら自分から売り込みに来ると思うけれど。ハーマイオニーが側にいるから勘違いされたのかな?ちょっと設定に無理が…。原作でも、もてない理由は奥手だからで済まされていたような…。
 (特に、5巻のロンのエピソードを思い浮かべるとなおさら?が飛ぶ…)

学校生活4年目。
 学校以外の世界が入ってきた前作。でもまだそれはロンドン周辺のことだった。
 一気に世界(といってもヨーロッパ)に拡がった今作。
 そして、生徒達の、大人の仲間入りへの練習と世界が拡がる様子は微笑ましかったが。

 淡い初恋。羨望・やっかみ、友情。喧嘩している真っ最中に対峙させられる”大切なもの”。(笑)。
 マルフォイや、他の寮の人々が疑うならともかく、14歳にもなって(3年と+α毎日一緒にいて)、長年の友人であるハリーが自分で入れたと思うロンや同じ寮生には開いた口がふさがらないが、物語としてはよいアクセント。いつも一緒のお神酒徳利の初めての喧嘩?
 ダンスパーティの相手探し。上記のように???が飛ぶが、二人でごそごそやっているさまがおかしい。スネイプ先生に睨まれることよりも重大な案件というのが、成長を感じるとともに微笑ましい。

 ハ―マイオニ―の美しさ。あまりの美しさに、原作で”美しい”とされていたチョウやフラ―がかすんでしまった!!!ロンとハリーがハ―マイオニ―を意識する瞬間として満点。ハーマイオニーが、ロンやハリーを見るときのはにかんだ様子がまた良い。キュンキュン来る。

 でも、一番目を見張ったのはロン。ちょっとやさぐれて。まさに思春期・反抗期まっただ中という出で立ち、表情。女の子は多少気になるはずなのに、ぼさぼさの髪。
 まじめ堅物優等生のハ―マイオニ―。
 いつも自分ができると思っている以上の難題にぶち当たり、成育歴からくる劣等感をひきづりつつも、必死に課題をこなさざる得ないし、かつダンブルドア校長や養父・シリウスに認めてもらいたい感もあって、結果優等生っぽく見えてしまうハリー。
 それに比べて、ロンは期待もあまりされない四男坊、その他大勢に埋もれてしまいがちになってしまう立ち位置から、二人に比べて自由。多少不良化したってあの兄たちを手本に、あのお母さんなら大丈夫。そんな雰囲気が座っている様子からだけでもみてとれる。う~ん、凄い。
 ”活躍”という点では見劣りしてしまうが、等身大の少年としては一番自然で、この物語にリアリティを感じさせてくれる。

元々、ハリーたちの魔法学校入学から卒業までを日々を綴ると発表された物語。
 彼らの1年の暮らしを、彼らの成長の様子とともに描き出されることが、そのスタイルのはずなのに…。
 どうしてこうなった?ラスト「騒がしくない(何にも起こらない)年なんてないだろ(思い出し引用)」というように、読者の関心を集めるための、映画化前提の、無理くり設定にも見えてしまう。
 こんなに大掛かりな設定にしなくとも、ファシズムが忍び寄ってくる様は描けると思うが、そんな地味な物語で読者を引き付けるのは、映画化するのは難しいということか。

と、原作から違和感ありまくりだが、この原作の映画化としては、よくまとめたなと思う。
 さすがに4作目で、魔法のワクワク感は尽きた。競技もゲームをクリアするようで今一つ新しさはない。
 けれど、アクションは派手になり、役者は頑張った。

 ただ、私の再生機器が悪いのか、水中の映像は何が何やら、わからなかった。展開は原作を読んでいたのでついていけたけど…。
 反対にラストのヴォデルモートとの対決は、闇夜でなんだかよくわからないだけに、緊迫感が増していて、原作で読んでいたにもかかわらず衝撃を受けた。

長大な物語の途中。
特に、後半部の序章として終わるだけに、この映画でカタルシスが得られるわけではない。
次の物語がわかっていれば予告のような終わり方にもできようが、それもできない。
なので、1本の映画としては不全感が残る。
監督の責ではないのだが評価は下がる。

とみいじょん