劇場公開日 1992年7月18日

「宮崎駿自分を問い直す」紅の豚 lotis1040さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0宮崎駿自分を問い直す

2013年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

興奮

十代のころに映画館でこの映画を見た。
そのころは、何もない娯楽作品だと思って見ていた。
何かこの人の作品はいつも説教くさいなと思っていたからだ。
これは珍しくその説教くささがなくなっていい感じだなと思った。
大人のための戦争ごっこ映画というのもなかなかよかった。
今改めて見返すとこの映画の本質ではないのだなと思う。
静かなる男のオマージュにしろ、紅の翼のオマージュにしろそれは一部分でしかない。
豚は宮崎駿自身だった。
豚というものを彼自身の観点から捉えるなら、それは動物農場に出てくる豚だ。
最初は農場の豚として、人間と戦う立場にあったがやがて動物たちを人間の手先として支配するようになる。
その豚だ。
彼は自分を人間の手先なのだと位置づけた。
金のために働かされる豚を自分だと認識した。

きな臭いクロアチアを描きながら、実はいつも自分自身のことを絵映画にしている。

キスによって人間に戻れると思っているのはそうあって欲しいという願望でしかない。
キスは許しだからだ。豚は、人間の手先になってしまった以上人間の手先を続けるしかなくなってしまった。
その悲しみを描いた悲劇がこの作品の本質である。
宮崎駿という人は、このあたりから暗闇をさまよい始める。

lotis1040