アメリカン・フィクションのレビュー・感想・評価
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人生の後半戦の世知辛さと寒々さが沁みる。
コンセプトはとても興味深いのだが、「黒人のステレオタイプ」にとらわれている人たちを皮肉るブラックコメディであるにも関わらず、ひとつひとつの状況がベタで平易すぎるように思えて、結局はステレオタイプの枠内から抜け出せない狭苦しさみたいなものも感じてしまった。例えば似たケースの実話としてのJ・T・リロイ騒動なんかはより複雑でより滑稽だったりするので、フィクションとしてはいささか物足りない。しかし進んでいるようで進んでいないアメリカの黒人の現状を伝えるためには、これくらい単純でわかりやすく描くべきなのかも知れない。その辺の肌感覚は、知識の乏しさや現地の空気感がわかっていないため、どこまで理解できているのか自信がない部分ではある。一方で、介護が身近な中年以上の家族ドラマパートはかなり切実な現実であり、人生の後半戦の寒々しさを描いたドラマとして身につまされるし、沁みる。
そういう人も確かにいるだろうが、もっと他にもあるだろう
侮辱的な表現に頼る“黒人のエンタメ”から利益を得ている世間の風潮にうんざりし、不満を覚えていた小説家が、自分で奇抜な“黒人の本”を書いたことで、自身が軽蔑している偽善の核心に迫ることになる(Amazon Primeより)。
わたしたちは、東北の片田舎から上京したてで高層ビル街で右往左往する若者のことを助けたいし、LGBTQというテーマでパレードに参加して声高に主張する人も、密やかに生活を送りながらも苦しみに苛まれている人もどちらも理解を示したいし、サスティナブルな商品で地元を盛り上げようとしている地方の中小企業のことは応援したい。
一方で、「片田舎から上京してきた若者」「LGBTQの人々」「地元を盛り上げたい地方の中小企業の社長」の、例えばお母さんの介護の問題や、兄弟間のお金の問題などにはあまり関心がない。ちょっと極端な例だが、日本に准えて言うのであれば、本作で扱っているテーマはこれである。
ややわき道に逸れるが、黒人選手が全体の70%以上を占めるアメリカのプロバスケットボールリーグ「NBA」では、スラムに生まれ、毎日食うや食わずの生活だった子どもが、持ち前の身体能力と血反吐を吐くような努力と最高のコーチを得て、100万人にひとりという極めて狭き門のNBA選手になり何億円も稼ぐアメリカンドリームを勝ち得た、というナラティブが大人気だが、2024年の現代において、そういった選手は、いないとは言わないが、かなり稀である。
本作でも、黒人は全員ラップを愛し、父親はだらしなく、経済格差に苦しみながら、ドラッグに溺れ、最後は白人警察官に銃で撃たれるが、人間として最も大切な尊厳は奪われなかった、というナラティブが皆が求めるものとして描かれているが、主人公の黒人小説家モンクは辟易し、「そういう人も確かにいるだろうが、もっと他にもあるだろう」と嘆息を漏らす。かれの実家は全員黒人だが比較的裕福で、兄と妹、亡き父は医者で、本人は文学の博士号を持っている。
本作では、主に白人がこうしたステレオタイプの物語へ理解を示し、「これこそが生の黒人の声なのだ」と捉えることを「免罪符」と皮肉気味に表現している。そうすることによって、自身の人種が歴史的に為してきたことがちょっと赦される気分に浸れるしどこか安心できる一方で、モンクの指摘するように、そんなことだけじゃなくてもっと色んなこと、「別の生の黒人の声」に耳を傾けなくなる。文学賞の審査会に、そのあたりのアイロニーが込められている。
とは言えとは言え、商業的な成功やエンタメ性も大切な要素ですよねはいもちろん分かってはおります、という結末はシニカルでちょっと小粋ですらある。
セロニアス・モンク
2024年5月1日
映画 #アメリカン・フィクション (2023年)鑑賞
黒人のステレオタイプな描写を嫌悪している黒人小説家は何年も本が売れてない
姉が急死し、母親のアルツハイマーが進行する中、毛嫌いしていたような小説を執筆し、偽名で出版したら大ヒットし映画化が決まる
アメリカの現状がよく分かる
ストレート過ぎたような
黒人に対する評価をストレートに表現してたのでもっと変化球でくるのかと思ってました。事前に評価されてる話を聞いていたので、もっと何かあるのではと思ってみてしまったのも良くなかったのかも。
なかなかの出来でした
大笑いするコメディではないが、ニヤっとさせられるコメディでした。大きな出来事は起きませんが、淡々と程良いテンポで話は進み飽きる事はありませんでした。
ラストの終わり方も意表を突かれ面白かったです。
アメリカではあるあるなのかも
ステレオタイプの黒人を求める社会に一石を投じる作品です。
ステレオタイプの黒人を求めているのは実は白人で当事者である黒人はそれを快く思っていない、というのは日本人である私には良く分かりませんでしたが、アメリカでは共感できる内容なのでしょうか?
物語の構成はユニークです。
アカデミー賞脚色賞受賞作は皮肉たっぷりのコメディ
本年アカデミー賞で、作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、作曲賞の5部門にノミネートされ、脚色賞を見事受賞した作品なのに、我が国では配信のみとは驚き残念。なにより既に配信されてるなんて情報もまるで知りませんでした。もっともMGMの作品で今ではAMAZON-MGMとアマゾン傘下ですからやむを得ません、観られるだけ幸せと思わなくては。しかしそんなレベルの作品ではなく、ウェルメイドなシニカル・コメディなのですよ。しかし、だからこそ洋画が振るわずアニメ邦画のみがヒットの日本での興行は難しいでしょうね。
監督・主演のコード・ジェファーソンは私ら日本人には白人なのか黒人なのか不明なレベル。そもそも主演の名優ジェフリー・ライトも沢山の作品に出てますが黒人にしては色が薄く、日焼けした白人かしらんと思っていたくらい。そのジェファーソン監督が受賞スピーチで「黒人の青年にチャンスを! 2億ドルの作品もいいけれど、400万ドルの映画なら50本も造れます」と。400万ドルって6億円ですよ、邦画でそんな予算はごく一部。このスピーチで黒人なのねと分かりましたが。
それ程に黒人に対するさんざのステレオタイプへの嫌気が本作の動機で、それを小説家に置き換えて描くシチュエーション・コメディと言ってもいいでしょう。ベストセラーになるためには白人の黒人への哀れみを刺激しなければならない。黒人が人種を超えた説法を説いても売れるはずがない。だから当然に登場する黒人は薄幸でヤク中でムショ暮らしでなければならない。と。
このセオリーを忠実に表現するために、本作は観客の意識改革を要求する仕組みが痛烈。主人公モンクは小説家であり大学の教授。彼の家族は親も兄弟も皆医者で、大きな邸宅を持ちお手伝いさんも雇っている。しかも兄はゲイを公言し次々と男を漁る日々で姉は離婚を決意、海辺の別荘のお隣さんはシングルですが弁護士で、彼らが愛する酒はビールなんかじゃなく皆ワイン。こんな設定なかなか映画でもお見受けしない。いっそお手伝いさんを白人にすればとも思う。さらに母親の介護の現実は身近なトピックスであるが、その費用の高額には驚いてしまうが、主人公は眉をほんの少し歪めるだけのリッチぶり。
こんな状況下、モンクはジョークで超ステレオ小説をかき上げ、出版社に偽名で送ったところ、相手は大乗り気のドタバタがお話の骨子。軽蔑しきっていた世界観がこんなに受けるとは、いよいよ世も末で「FUCK」と口走り、白人編集者がまさかタイトルにと乗って来る始末。皮肉もとことん効いて大いに笑わせる。タイラー・ペリー、イドリス・エルバ、ラッセル・クロウ、マイケル・B・ジョーダンと実際のハリウッドスターの名を挙げ。小説世界と現実世界が次第に混然となる作劇。ここまで話を大きくすると収束にちょいと難儀で、混乱してしまったのが惜しい。
翻って、差別なんてものは実に面倒くさく、お題目ばかり挙げても一向に改善しないってわけですね。
なんで濡れてるんだ?結露でしょ
アジア人に対する差別をしれっと最後に挟み込んでた。
黒人差別は映画や小説になってもアジア人差別はならないらしい。
ジェフリーが「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストンに見えて仕方がなかったのは私だけか。
字幕はさておき、会話が笑える。
妹と。
「俺の本で人生が変わったか?」
「もちろんよ。ぐらついてたテーブルの脚の下に挟んだら安定した」
お手伝いさんと。
「モンクさん!」(ハグ)
「モンクでいいよ」
「この年じゃ新しい名前を覚えられません」
妹と。
「父さんが私に向けた感情といえば、退屈と怒りだけ」
「退屈は感情か?」
「揚げ足取りが好きね」(It’s Detecive Dictionary.)
弟と。
「母さんの様子を見てきてくれ」」
「母さん!!!」
「叫ぶなよ。原始人か?」(Don’t yell. Be civilized.)
コメディとしては◎。
文学の世界にも需要と供給があるらしい。
なかなか書けないモンクが、「空港で売れる本」を書き上げたところ、絶賛の嵐。
赤や黒のジョニー・ウォーカーの横に青を並べたシーン。
わかりやすくて笑える。
どうなっていくのかと興味津々。
タイトルを変えれば出版を取り止めるだろうと、提案した辺りから急降下?急展開?
本が売れ、映画化されることでお金が入ってお母さんを良い(高級)施設に入れることが出来てよかったね。
…という話なのかなぁ。
しかし、お母さんのこと、お父さんのこと、いろいろ深掘りしたくなる内容はたくさん。
やや物足りない。
確かに良く練った脚本だ
アメリカにおける黒人たるをコメディ要素とドラマ要素を上手く混ぜながら観せてくれる。
エンディングで想定外のニヤリがあり個人的には好み。
JAZZを聴く方ならエンディングの『Autumn Leaves』で、もうひとニヤリある
クリエイターは大変
とても面白いし、テンポも良いし、音楽も効果的でセンスが良かった。
ステレオタイプの黒人文学を白人や他国の人間が求める状況はたしかに日本でもあるし、同情的な目線が現代社会の批評にはつきものである。が、それこそが差別的な目線である。という気づきがあった。そういったバイアスはどこかで無くなっていくのが真の平等なのだろう。
複数の結末を連想させるメタ的なラストも最高
現実はアワードの場では真実を語り、後日暴露本を出し映画化したという解釈としたい。
モンクの望みである、迎合するようなfuckな小説が評価されてはいけないという信念をつらぬく。
母の介護施設は貰える。
世間に嘘をついたという罪悪感を拭える。
唯一デメリットのように思えるのは、金のために嘘をついた作家として認知されることだが、これは真実であり、世間に嘘をついたまま生きていくという罪悪感も拭えるし、モンクは今後も彼の本来書きたい物を書き続けることもできる。
自身の名声や気付き上げたものを捨てることで、得られるものがある。ということにしたい。
彼の家族は姉も兄も彼もいきすぎているがセンスのあるブラックジョークが好きな人たちだから。
日本人なので、わかりにくいこともある
Amazon Primeで鑑賞。前評判通りの面白さ。だがアメリカの人種問題がしみ込んでいないので皮肉がクリティカルに通じない。仕方なし。ステロタイプの黒人イメージ、そうなんだ違うんだそうだよな。一歩遅い視点からの認識に。映画は文化だもんね。
あいまいな境界線が映画の中にあって(観た人にはわかる)、これは頭の中の話?本の中の話?プロット?現実?といった具合でいったん思考の処理が急速に求められる。
そういう点で深く集中しないといけない。なので疲れちゃった。
エンディングがなぁ。エンディングがなぁ。エンディングがなぁ。
めっちゃ皮肉
典型的な黒人を描くことが「考えさせられる」という思慮深い評価を受けるという皮肉。
「マイノリティ=可哀そう」と描く作品をどこかで自分は求めているのかもしれないと、ちょっと怖くなった。
モンクはあだ名だったのね。
☆3.8な感じでした。
淡々と進んでいく、とろーんとした序盤なのだが、やけくそ作品「マイ・パフォロジー」が代理店のお眼鏡に叶うあたりから、コメディコメディ!笑いましたね!ただし大人な笑いだと思います。出版社?の社長さんとの掛け合いは全ウケです。電話機奪い合うあたりなんかバカバカしくてもう~~笑
「なんだそれは?ストリートファッションと言っただろ」
「そうしたよ」
「ばかな。セサミ・ストリートかよ」
ウケる~。めっちゃそんな感じだし。
ファミリーも雰囲気よく。バカな兄貴だな~とか思いながらも、そうでもなかったりでハートフル。こういうマッタリとしたハートフル・コメディってアメリカ人は作るの上手いですよねえ。
日本だと山田洋次さん作品みたいな。三谷幸喜さんのギャグ路線じゃなくて、やわらかーい笑いっていうか。こういうの日本でも復活してほしいな。今の日本のコメディ(らしきもの)は不景気や時勢の香りが漂い過ぎて笑いにくい。
評価会議のランチタイムのやり取り。不器用な主人公の、それらしい不器用正論が出てきて、なんだか身につまされる感じもしました。「当てる仕事」と「やりたい仕事」なんか違って当たり前…と考えてますが?なるべく近づけるのを努力と言うんだよと思いながら頑張っていきたい。とか考えてしまった。
そんなこんなをぶっ壊すラスト。見ていて「えっ!?」となるラスト10分の流れ「なんだよ~もうー」と思いながらもニンマリ。私は好きでしたね!
このレベルなら劇場公開すればよかったのに。
悪くないですよ。そんな一作。
黒人の本音
大半のアメリカの白人層がアフリカ系黒人に抱いているであろうイメージを風刺したコメディ、口では差別反対、皆平等などと綺麗ごとを並べても小説や映画などのエンターティンメントの世界では見下しがちな本音が出てしまうのかも・・。
奇妙な家族構成の内輪話が延々続くので正直どうでもいいと醒めた気分で観ていたが、ラストで2作目の映画が本作だったと臭わす結末に唖然、一本取られました感、弟が自分の役は誰が演じるのかと聞くと、タイラーペリーと答えていましたね、アメリカのエンターテイメント業界はユダヤ系アメリカ人が牛耳っている中で実力で成功したレジェンドを引き合いに出すところも流石です。
モンクをいじっているくせに何故かモンクの曲はかからずじまい、最後にマイルス・デイヴィスの枯葉がかかりました、誰もが認めるモダンジャズのレジェンド、黒人の実力を納得させたかったのでしょう・・。
アメリカ人ではないのでエピソードのあるある感はさほど感じませんでしたが現地では、さぞうけたでしょう、アカデミー賞も納得です。
差別の根深さ
なかなか良い映画だったと思う。アメリカでの黒人差別の風刺だと思うけれど、今までにない視点から捉えていると思う。BLM運動や多様性求める声やミートゥ運動や…正しい方向に進まなければ、という世界?の流れは感じるものの、何か違和感を感じることも多い。この映画はそんな違和感のひとつを描いているように感じた。
一歩踏み込んで言わせて貰えば、先日アカデミー賞を貰った日本映画。本当に価値を評価しての受賞だったのか?と感じたことを思い出した。
こんな違和感を感じつつも、長い時間をかけて、いつかは違和感なしで生きていける世の中がやってくるのかも知れないし、そうでもないかもしれないし…
差別意識を払拭するなんて、そんなに簡単なことじゃないよね、と改めて感じました。
全体的にはのんびりと集中して、楽しめる映画でした!
テーマの割にコメディタッチなので軽く観れる。 ジョニーウォーカーを...
テーマの割にコメディタッチなので軽く観れる。
ジョニーウォーカーを使った例え話は分かりやすかったな。
ラストがぼんやりした感じだったけどこれも白黒はっきりする最近の映画を観慣れてしまった弊害か。
強烈な嫌味
黒人のインテリ作家が、ふざけてクソな世界(まさにF**K)を描いたら白人に無茶苦茶ウケてしまうというとんでもない作品。
アメリカに住んでいないアジア人には会話がおしゃれにさえ聞こえるという。
実際の生活の中の身内の問題は万国共通、アメリカなのでゲイとかドラッグは過剰ではあるが介護とかは基本同じなので共感出来る。ただラストをちょっと何パターンか見せてしまうのはちょっとブレた感じがしました。
タイトル決める所が1番ウケた。
低予算で頑張っているが…
低予算で頑張っているが、コメディとしてもホームドラマとしても中途半端。メタフィクション・オチもありきたり。日本人にはなかなか楽しみどころが掴めないタイプの映画。劇場公開できなかったのもしょうがない。
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