劇場公開日 2024年3月30日

「大自然を前に自分を律せなかった者の末路」ゴッドランド GODLAND asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5大自然を前に自分を律せなかった者の末路

2024年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

氷河の上で宣教師がダゲレオタイプのカメラで撮影するポスター。見るからに荘厳さを漂わせる1枚、かつ難解な映画だろうなぁという印象を持ちつつも、興味を惹かれました。
 たしかに難解で鑑賞後も悩んでしまう映画でしたが、古さを醸し出すためか1.33:1という正方形に近いアスペクト比と、角の丸みが彼らを覗くように見ているように感じ、没入感はなかなかのモノ。ここは作り手の工夫を感じます。

 そんな本作、ストーリーとしてはデンマークの宣教師が教会からの命を受けアイスランドの地の教会を建てるというもの。しかしその宣教師の前にはアイスランドの自然と言語の通じない現地住民が立ちはだかり、宣教師はその逆境に抗っていく・・・てな感じです。

 しかし、この宣教師、自分は好きにはなれません。というのも、言葉で言うてもホントのところで周りに対し感謝しているとは思えないからです。厳しいアイスランドに自然に対し、身も心もボロボロになる宣教師ですが、助けてくれるのは現地住民です。そんな人たちに対し感謝の意が見られません。逆に現地住民:アイスランド人が尊く見えてくるのです。たとえデンマーク人を嫌っている人(アイスランドは過去にデンマークの植民地であったためか)でも、命の危機の前では助けを優先する。ボロボロで口数も減った宣教師に対し優しく接する。住民は少ないけれど助け合ってこの地で生きているのを感じます。なのに宣教師ときたら、案外冷たく接し、いつの間にか「あなた牧師でしょ?」と言うような行動に走っていくんです。

アイスランド人が慈悲ある方々に見え、かたや宣教師は俗人だったのかと。

 その時、少し話は逸れますが、“神とは?”という問いが自分の中に出来てました。そして自分の今持っている答えとして“自己を律するためにある存在”という考えがあります。神の行いは良き行い、つまり神の教えは自分が良い方向に進むための道標、ということは己を律するには神の存在が必要である、という考えを自分は持っています。それに照らし合わせた時、宣教師の行いはどうか?どう考えても自分を律せていないではないか。それゆえ彼は最後、悲しき最後を迎えてしまいます。彼は、アイスランドの地で、自分が信仰する神に試されたのです。

自分を律する力があるかどうか。

本作は、それを投げかけているのではないかと、自分は思います。

asukari-y