コット、はじまりの夏のレビュー・感想・評価
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丁寧なエピソードの積み重ねが感動的 主演のキャサリン・クリンチの表情、自然な演技が素晴らしい
ギャンブル漬けで、人に預けておいて、家出娘呼ばわりするような、人としても駄目な父親。
終始物静かで大人しいだけなのに、変人扱いされるコット。
子だくさんで大事にされない家庭で育ってきたけれど、親戚のもとで初めて大切にされる。
とてもおだやかで優しいアイリン。
寡黙だけれど黙々と仕事して時々コミュニケーションをとってくるショーン。
(性格がコットそっくり。)
別れの日が来て、ついに我慢できなくなって、最後の疾走をするコットに、ひと夏の様々な思い出がよみがえる。
丁寧に描かれた数々のエピソードの積み重ねが効いている。
そして、ラストの一言二言が泣ける。
アイリン役キャリー・クロウリー、ショーン役アンドリュー・ベネットの静かで控えめな名演も良かったですが、何といっても主演のキャサリン・クリンチの表情、自然な演技が素晴らしい。
(蛇足)
このラストの先が気になるところですが、これは実話ではないので、観客の想像次第。
ありがちなのは、暗転後、キンセラ家の朝。
コットが学校に出かけるあわただしい日常がえがかれてクレジットとか。
いずれにしても、あの流れでは、そうでなくても苦しい家計に家族が増えて、物入りになる。
「子供を失って寂しいから頼むからコットを預かりたい」
と、ショーンが、父親ダンのプライドを傷つけないように頼めば、きっと、コットはキンセラ家の子になるでしょうね、
小さな優しさ
ひとりの孤独な少女が、新しい環境で少しずつ自分の居場所を見つけていく様を繊細なタッチで描いている。
観客と登場人物の間にある絶妙な距離感を抱かせる作品だった。
説明的な描写はなるべく避けているようで、主人公のコットが抱えている孤独感にはじめは共感することが難しい。
コットは両親と姉弟たちに囲まれて暮らしているが、どこか馴染めないでいる。
国語の授業では音読がままならず、学校でも変わり者と蔑まれ居場所を見付けられないでいる。
そんな彼女を夏休みの間だけ親戚夫婦であるショーンとアイリンが預かることになる。
コットを送り届ける父親のダンの態度は冷たく、まるで彼女は口減らしのために厄介払いをされたようだ。
どこかこの世界と繋がれないでいるコットを、アイリンはとても優しい言葉で受け入れる。
コットの受け答えのほんの過ごしのズレが、彼女の生きにくさを物語っているようだ。
特に大きなドラマは起こらない作品だ。
コットとショーン、アイリンの間で劇的なやり取りが行われるわけではない。
それでも彼らがコットに示す小さな優しさが、少しずつ彼女の心を解きほぐしていく。
たとえばアイリンはおねしょをしてしまったコットに対して、マットレスに水が染みていたのだと弁解し、彼女の罪悪感を拭い去ろうとする。
ショーンは黙ってコットの前に自前のお菓子を置く。
彼がコットに走ってポストから手紙を取りに行かせるのも、彼なりの思いやりなのだろう。
コットに対していつも穏やかな二人だが、実は彼らが過去に最愛の息子を亡くしていたことが分かる。
コットはその亡くなった息子の着ていた服を身に着けていたのだが、彼女はそんな二人の悲しい過去には気づかずにいた。
やがて夏休みが終わりに近づき、コットは自分の家に戻ることになる。
どうやら彼女には新しく弟が出来たらしいが、その報せにも彼女は興味がない素振りをする。
彼女が誤って井戸に落ちたのは、少しでも帰る時間を延ばしたかったからだろうか。
感情の高ぶりをあまり見せないコットが、最後に去っていくショーンとアイリンを追いかける姿に心を打たれる。
これからコットがどのように世界と向き合っていくのか、映画の余韻の中で考えさせられた。
こちらあみ子 を思い出した
主人公のあり様は違うけど、日本映画で一昨年の作品こちらあみ子を思い出した。本人の性格は全く真反対だけど、心の変化に自分が自覚しきれてないもどかしさ。それをこの作品、よく表してる。
愛を注げるのは実の親だけじゃない。
今年のベスト入り確実。子沢山で経済的も人手的にも大変な大家族、お母さんの出産前後のひと夏、叔父叔母の家に預けられる少女。珍しいお話でもないのに、一人一人、ひとつひとつが丁寧に丁寧に美しく描かれており、涙が止まらない。ラストの少女の一言、「daddy」の一回目二回目の意味の違い、向けられる相手の違い…台詞が少ないだけに更に印象的でこそにすべてが表れていて、また涙。
でも実の両親を、「悪者」「ネグレクトのひどい親」と決めつける気にはならないです。この親ほどではないにしろ、実の親は渦中にいるとなかなか毎日の子育てや仕事や家事で手一杯、手や愛情が回り切らないことってあると思う。なのでこの叔父叔母や祖父母など、ひたすら可愛がってくれる愛してくれる存在は子供にとって大切なことなんだなあと思わされる。別に実の親じゃなくても良いのだ。
雄大な時間と小さな変化
映画というメディアが持つひとつの特性に“時間の流れ”の描き方というのがある。故に映画は時に時間軸をずらして見せたり、前後の時間を入れ替えるなどの魔法を使って観客を翻弄し、魅了する。では、本作の時間の描き方はどうだろうか?複雑な時間のトリックはない。だが、木漏れ日溢れる美しい自然美を背景に映し出しながら、ゆったりと流れる時間を観客に堪能させる。これは実に贅沢な映画体験だ。
コットが走り出す、手を繋いで水を汲みに行く、農場の手伝いを行う、そんな些細なシーンの一つ一つにこそ彼女の心身の成長が垣間見られる。そして、それは同時にコットを預かる親戚夫婦の心の隙間を埋めていく。髪を梳かす、街に買い物に行く時に渡すお小遣い、洋服を試着したコットを見つめる表情。直接的な言葉は使わないものの、それら全てが偽りのない愛の形として描かれていく。
だが、その雄大な時間の流れもやがて終わりを迎えることとなる。実際、そこからの展開は早く、寒々しくも映る。しかし、親戚夫婦と過ごした時間の中で確実に起こった小さな変化の蓄積こそが最後に大きな感動を呼ぶ。一度見ただけで理解したとするには勿体ない作品であり、特に舞台となる夏の終わりにこそ繰り返し観たくなるであろう良作に出会えた。
自然な愛
小鳥のさえずり、木々を渡って木の葉を揺らすそよ風、月夜のさざなみ
そのような自然の営みの音が全編を通じて人の自然な営みとしての愛の在り方を思い起こさせる効果を与えていたように感じた。
主演の少女の尊さは私の拙い表現力では伝えきれない。素敵でした。
ひと夏のパパとママの、少女へのいたわりに胸をあつくしました。
当人に自覚があるかなしかは別として、悪意が全ての人から消えることはないのでしょう。それでも人の心を動かすのはやはり善意なんだと信じたいと思いました。
さてどっち?
ああいう終わり方は本来嫌いなんですが、なぜかこの映画は許せるかも。「おじさんさよならありがとう」なのか「やっぱりおじさんと暮らしたい」なのか、どちらにとらえても感動です。まあ親父が「ショーン、娘をたのむ」なら良いんだけど。
タイトルからは想像できない…
飲む打つ買うのダメダメパパと子だくさんママの家族の一番下の娘が、子供の無い親戚に一時的に預けられたことで、子供らしさというか人間らしさを取り戻していく内容
最後は泣いた😢周りからもすすり泣きが…
いい映画だけれど、寡黙すぎて‥‥。
アイルランドの風景がきれいだし、主役の少女は、透明感のある美しさ。ところどころ意味不明なシーンもあるが、少女のひと夏の経験を描いたいい映画だ。しかし、少女コットと、心を通わせるショーンの二人が、あまりにも寡黙過ぎて、いまひとつ感動に至らなかった。
ラストシーンも、少女の今後を想像すると、複雑。でも、見て損はない映画だと思う。
空気感は好きだけど、きれいすぎる
好きなスタンダードサイズの作品。
映るものが絞られることで、観ていて心地良い。
それぞれが不器用な登場人物がうまく演じられていて、セリフは多くなくとも、気持ちが伝わってくる。
田舎の風景や、家庭間の対比、子供を巡る夫婦の思いなど、短いながらも感じることが多かった。
ただ、映像はとてもきれいなのだけれど、画が整いすぎているというか、印象的なものがあまりなかったのが正直なところ。
自分が見慣れてしまったのか、画の綺麗さをもとめて、少しリアリティがうすくなってしまったのか。
総じて、期待通りの作品でした。
コットの気持ちに応えてもらえたら
コットが、大人びた整った顔立ちなので、9歳に見えなかった。
うつむきがちなところも、15~6歳の思春期の少女の様。
あんな父親がいるやたらに子沢山の家に育ったらそうなるか。(クズな父がいる家は何故か子沢山が多い気がする。)常にネグレクト気味だし、おねしょするのもストレスのせいでしょう。
ほぼ厄介払いで、母方の親戚で子供のいないアイリンとショーン夫婦に預けられて、心細くても不安でも、どうしていいか分からずに、やはり無表情で黙ってうつむいているよう。
当初は冷たかったショーンが、徐々に彼女を受け入れていくところは心が温かくなる。
この夫婦が実は昔一人息子を失っていたことが分かってから、更に理解が深まり、本当の家族の様になったのにひと夏で別れの日が来るって、え、そうなの!? 好きなだけ預かっていい、とコットのママ自身がわざわざ手紙で書いてきたくせに?(好きなだけ預かっていい、って言い草にむかむか。自分たちが娘を預かってもらう側なのに。)
アイリンとショーンも、返せと言うなら、と一時的に預かった理解で、養子にするような方向に行かない。そこまで引き受けるつもりがないのだろう。
養子にするのは大変な責任を負うことになるし、リスクもあるからそれは当然だ。
夫婦ふたりで穏やかに満ち足りて暮らしているので生活に波風たてることはないです。
あるいは、自分たちの子供は亡くなった息子だけだから、かも。
だが、せっかく居場所をみつけたコットの気持ちはどうなるのだろう。
いいことは続かない、と人生投げないだろうか。
家に連れて行った途端にもとの寡黙でうつむいた女の子に戻って、周囲に気を使い元通り家の中の「秘密」を使い分けるようになるコット。
こんないたたまれない姿を見ているのに、ショーンとアイリンは自分たちが引き取るとは言わない。他所の家のことには口を挟まないというスタンスに見える。
親から継続的な虐待を受け、施設に保護されたのに保護解除されて親元に返され、結果最悪の事態になった野田市の女児の例を思い出した。
家に戻された時の女児の絶望を思うと胸が詰まる。
大好きなアイリンとショーンが行ってしまう、何を言えばいいか何をすればいいか、9歳の子供にできるのは力の限り走って、優しいおじさんに飛びつくこと。
コットが「ダディ」と言ったのは、実父とショーン、どちらを指したのだろう
鬼みたいな「ダディ」が追ってきている気をつけて、と実父のことを指したのか、
または、とっさにショーンを「ダディ」と呼んだのか。
後者だったら、ショーンは是非、コットの気持ちに応えてあげてほしいと思う。
コットを抱きしめたショーンは、彼女を実父に引き渡すのか。
クズ父はこれまでのところ暴力ふるってはいないようだが、今後は分からない。
野田市の女児のようにならないといいと願ってしまった。
アイルランド 少女の夏
あらすじ読むのがキライだから、
アイルランド、少女の夏
それだけの情報で観ました。
アイルランドの自然が綺麗で美しく、センスよく切り取っては、絵画みたいな素晴らしい画を観せてくれます。
牛のミルクについて、少女コットが言った言葉が好きだわ(笑)
そうだよね、そのとおり(笑)
汚れていない子供の心。
静かで、優しく、美しい、映画かな?
最後は、どう受け取りますか?
たぶん、みんな同じでしょうけど(笑)
スコアは、70点ぐらいです。
おとなしいハイジ
題名から、性自認や、性的指向に目覚める少女の話かと思って警戒していましたが、違いました❣️
あやうく、佳作を観る機会を逃すところでした。
はっきりとした虐待はなさそうでも、冷たく乾いた雰囲気の家、明るくはないけれど、接し方には愛がある親戚。愛情の有無は子どもにもわかります。
ひと夏預けられたくらいでは、明るい子にはならないし、実家も変わらないし、実家に帰らないといけないのも変わらない。
それでもきっと、この夏の思い出が、これからのコットを支えてくれるはず…❣️
そう信じたい、余韻のありすぎる最後の場面でした🩷
都合のいい時間に上映されていたから、という消極的な理由で観ましたが、思わぬ拾い物でした。観てよかったです😊
最高の体験をありがとう
物語の紡ぎ方、魅せ方、オチへの流れ、そして振り返ると演出意図が私ごときでも理解できる。フラッシュバックのようにすべてのシーンが最後の余韻として心に来る。
私にとっては最高の映画でした。
この控えめで育児放棄されてきた子どもの演技を主演の彼女がどうしてこ...
この控えめで育児放棄されてきた子どもの演技を主演の彼女がどうしてこんなふうに適確に演じられてしまうのかということにまず驚く。表情、佇まい、頑なな感じ、繊細さ、人との距離感、すべてが素晴らしい。
ショーンが最初、目も合わさない冷たい関わりだったのは、息子への感情を消化できていなかったからなのだということが後でわかる。ショーンはむしろ優しすぎるくらい優しく少女を抱き抱えるからだ。逆に少女に過剰に優しさを示す妻の方はむしろより深い心の傷にさいなまれていることが後でわかる。日常の中の心の亀裂、怖いくらいの表現。
原題の「Quiet girl」
そのままの静かな展開で前半は少し眠くなりましたが、静かな中にもしみじみとした良作品だと思います。静かな彼女が感情を爆発させたラストシーン泣かない人いる?そしてダディは誰に言ったのか。きっと抱きしめてる人よね。
原題「The silent girl 」そのままの静かな映画
前評判を読んだことによる期待が高すぎたのか、起伏が自分にとっては無さすぎて、半分寝かけてしまった。原題が「The silent girl」だからかな?預け先の牧場のおじさん(このおじさんとの出会いも素っ気ない)とのふれあいがもう少したっぷり描かれてたら、もう少しおじさんとの牧場仕事のシーンが多かったら、もっとよかったかも。
透明感のあるとても美しい映像でした💛
アイルランド映画って初めてかも。主人公の内気な少女コットが、初めて家族の愛に包まれ、殻を破って成長する姿が、とても美しく描かれてて、じ〜んときちゃいました😃
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