劇場公開日 2024年4月19日

「嗣麻子を崇めよ!」陰陽師0 MAKOさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0嗣麻子を崇めよ!

2024年4月21日
Androidアプリから投稿

…あ、いや嶋田久作氏が出ていたのでつい。

このところ映画を観てはいたんだが微妙な作品が続いててどうもレビューを書く気になれなかった。
この作品も夢枕獏のファンなんでとりあえず観ておくか。くらいの気持ちで鑑賞に行った。
で、直前に佐藤嗣麻子監督作品で在る事を知って、ならば当然脚本も担当してるので鑑賞前に確信した。
これは、"当たり" だ。

自分はテレビドラマ「YASHA-夜叉-」の時からの佐藤嗣麻子監督のファンだ。
当時なんて格好いい演出だろうと感心したし監督が女性で在る事に驚いた。
ので長年のファンで有る事を盾に親愛を込めてここでは勝手に嗣麻子さんと呼ばせていただきます。

嗣麻子さんに付いて行こうと確信を持ったのは映画「エコエコアザラク」です。
間違い無く学園ホラーの最高傑作でこのジャンルが好きな映画馬鹿への満漢全席でした。DVDに阿呆みたいな値段が付いてます。なんとかしてください。

が、その後明らかに予算が削られた「エコエコアザラクⅡ」以降、ドラマの脚本やゲームのムービーシーンの演出ばかりで監督作品は「K-20怪人二十面相」まで十年以上も間が開く事になる。間違い無く、ハブられた。

日本映画界はほぼ完全に男社会だ。
そもそも撮影現場はブラック企業がホワイトに見える位の過酷さで先ず女性はついて行けない。メイクや衣裳を別にすれば女性スタッフなんて1割以下だろう。
そんな中で海外で経験を積んだ才能有る女性監督がどうなるか、後はお察しだ。

嗣麻子さんの名を聞いて、「えっ?キムタクのYAMATOの脚本書いた人でしょw」
なんて事を言う人が居るかもしれないが、テレビなら全77話。劇場版でも全4作の作品を1本の脚本にするという無理難題。
誰が書こうが失敗が目に見えいて、明らかに火中の栗を拾わされたのだ。
非常に下品で下世話な邪推だが、山崎貴監督は責任を取ったんじゃないかな。

本作の脚本兼監督に嗣麻子さんが抜擢された経緯は知らないが、そんな山崎貴監督の推挙が有ったんじゃないかと思う。CGは同じ白組だし。

そしてようやく本作についてだが、夢枕獏原作の映像化作品は微妙な出来の物が多い。中には「大帝の剣」なんて噴飯物の作品も有る。
そもそも夢枕獏の小説の面白さは作者特有の文体にも有る。そんな物映像で伝える事など出来る訳が無いので、結果原作小説は面白いのに映像化すると微妙な作品ばかりになる。

だが本作は原作から安倍晴明と源博雅というキャラクターだけを借りてきて、あとは嗣麻子さんの持ち味全開のオリジナル脚本なので、面白く無い筈がない。
ちなみに「エコエコアザラク」とは呪術という共通点が有る。

陰陽寮で起きた事件のミステリーから始まり美しい美術とロケーションの下で展開する主人公二人の出会いと友情、スペクタクルなCGと無くてもお話的には困らないだろうに挿し込まれる格好いいアクション。
思わず貰い泣きしそうになった博雅と姫様の悲恋にミステリーと共に明かされる晴明の誕生秘話。

イロイロ盛り込んで結果、話が偏ったりとっ散らかったりする作品も多いが、嗣麻子さんはこんな感じの闇鍋料理を仕上げる手腕が抜群に高い。そこいらの監督とはハッキリ言ってレベチだ。滝田洋二郎監督の2作品など、比較するのも失礼だ。

嗣麻子さんはアクション演出も得意な筈だが、ちゃんとアクション監督のポジションを用意して「ベビわる」の園村健介監督に任せているのもアクション好きの好感度が上がるところだ。

嗣麻子さんのファンとしては云いたい事がイロイロ有って、ちょっと長くなった。
夢枕獏の原作のファンとしては原作の雰囲気がもう少し欲しかったところだが、間違い無く今一番のオススメだ。
佐藤嗣麻子監督のファンでも夢枕獏の原作のファンでも、山崎賢人のファンでも染谷将太のファンでもいいから、とにかく観に来てくれ。

嗣麻子さんの認知度を上げるにはヒットや大ヒットじゃ足りない。いっそ旦那さんの作品超え位のヒットをしてほしいと本当に思う。
山崎監督ごめんね。

MAKO
ゆきさんのコメント
2024年5月1日

MAKOさんのレビューに大共感!
嗣麻子監督への愛溢れるレビュー、私もファンなので嬉しかったです(^。^)
そして日本映画界についても同感です。実は主人が照明技師なのですが、もう時間の概念がないのか!!な、あり得ないスケジュールだし(おかげで常にワンオペだ!)女性スタッフは過酷過ぎてすぐ辞めちゃうらしいし、日本のエンタメ界は世界からみても遅れていますよね。と、文句も出ますが、映画好きとして楽しませてもらっているので、中々難しいです
('◉⌓◉’)

ゆき