劇場公開日 2024年1月12日

「外国で生きる若者への理解と共感をはぐくむために」ニューヨーク・オールド・アパートメント 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5外国で生きる若者への理解と共感をはぐくむために

2024年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

評者自身も仕事の都合で一定期間アメリカで過ごした体験があり、市民カレッジと言うのだろうか、わずかな授業料でESL(第二言語としての英語)を教わるクラスに通ったこともあるので、懐かしさを覚えるシーンが多々あった。もちろん似たような経験がなくても、進学や就職、転勤などを機に地元を離れて不慣れな場所で暮らし始める時の心細さは大勢が知っているだろう。またコンビニやファストフードの店員など、接客業に従事する外国人に接することも年々増えているし、職場や学校でも移民やその二世・三世、あるいは留学生や技能実習生と一緒になる機会も増えているのではないか。本作のような題材を扱う映画を鑑賞することで、外国で生きる若者、あるいは不慣れな環境で疎外感を味わっている人たちへの理解と共感がはぐくまれ広がるといいなと願う。

不法移民という境遇に関しては、技能実習生として来日するもブラックな職場から逃げ出したベトナム人女性たちを描く「海辺の彼女たち」を思い出したが、比較すると本作のほうが明るく希望もたくさん感じられる。"boys meet a girl"の要素がそうしたポジティブな印象に大きく貢献しているのだろう。大人への通過儀礼とでも言うべき“体験”が描かれているが、2人目の際に「おいおい、初めてでそれはチャレンジャーすぎる……」と余計な心配をしてしまった。

高森 郁哉