劇場公開日 2023年12月1日

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「いわゆる「差別問題」を描いた作品。おすすめ枠。」隣人X 疑惑の彼女 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5いわゆる「差別問題」を描いた作品。おすすめ枠。

2023年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年413本目(合計1,063本目/今月(2023年12月度)14本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 原作はあるようですが見ていません。
タイトルや予告編、映画本編の最初の予告等を見ると「未知の惑星から人がやってきて~」という程度の差こそあれSFものかなという印象を受けますが、ここでいう「X」は「わからないもの」のことであり、映画のストーリー的には「何らかの差別意識をもって人に接する行為」それ自体が「隣人Xへの接触、交流」というところに論点があたっている(すなわち、今年ミニシアターで多く放映された「福田村事件」の現代版とも言いうる映画)ことはわかります。またこれに付随して「雑誌社の行き過ぎた報道・取材の在り方」という論点もサブ筋として描かれています。

 こういった論点があることはすぐにわかるので(少なくともSFものでないことだけは100%いえる)、この問題にアンテナを張っている方にはおすすめかな、といったところです。逆に言うと問題提起型の趣旨が強く、それにあまり魅力を感じない方には(映画はみてなんぼ、という考え方の方には)合わないだろうといったところです。

 採点上気になった点として以下があります。

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 (減点0.3/コンビニで郵便切手を買うときに重量を測定する行為が「法律に触れる」と言えるか)

 ・ 本音と建前が色々存在し面倒な問題ですが、「法律に触れる」は正しくないのでまずいです(後述)。

 (減点0.2/台湾人の子の日本語能力の描かれ方)

 ・ 現在、令和5年度においては日本語教育については「漢字文化圏」か「非漢字文化圏か」である程度アプローチが違いますが、漢字文化圏の方の学習は3~4年分の差があるとされるため(むしろ、初級の段階から、大陸(あるいは、台湾)の字と日本の字の字体の違い等に論点があたる)台湾出身のあの子の極端な日本語の不慣れさはかなり違和感があります(特に日常的に漢字を使う中国(台湾、香港)は特に日本語学習に有利で(日本語→中国語学習の逆もしかり)、あそこまで極端な不慣れさは奇妙にすら思えます)。
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 (減点なし/参考/コンビニで郵便切手を購入するときに重量を測定する行為一般)

 ・ 結論からいうと「法律違反ではないが、トラブル防止を避けるため、やんわりと「法律で禁止されている」と書いているだけであり、映画の描写もリアル日本の描写(各種大手コンビニほか)も正しくはない」のです。

 まず、コンビニで郵便切手が購入できるのは、法律としては「郵便切手類販売所等に関する法律」、あるいはこれに準拠して決まっている「日本郵便業務委託規約」によるものです。

 しかし前者は「不足のないようにして差別なく売りましょう」というもので、後者は「何を委託するか」を定めるものですが、この規約を見ると

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第3条 受託者(次項及び第3項に規定するものを除く。)は、当社からの委託に基づき、次の各号に掲げる業務を実施することができるものとする。
(1) 郵便切手類の販売
(2) 印紙の売りさばき
(3) 販売品の販売
(4) ゆうパックの引受け
(5) 前四号に掲げる業務に付随する業務
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 …で、(1)の「郵便切手類の販売」がそれに該当しますが、具体的に「重量をはかってこの場合にはいくら」ということを禁止する行為が(5)(付随する業務)に含まれるかどうかは一概に否定できず、22条以下の個別規定を見ても「計量をするな」までは書かれていません。

 また、どちらにせよ規定が何もないし(規定がないので)罰則規定も何もないので「法律に違反するため」というのは明確に誤っています。

 実際には、コンビニにおいてある「計量器」(はかり)と、郵便局で使うそれとで微妙な差が生じて「10円足りません」というように送り返されることが実際に存在し、そのトラブルにコンビニが巻き込まれたくないため(また、逆に個々の従業員にコンビニの本来業務以外のこれらのことまで教えると業務がパンクする)、このように「やんわりと断っている」(換言すれば、結局の理由は「トラブル防止」)というヘンテコな状況になるわけです(100円も足りないということを分かったまま郵便ポストに入れる客も稀なので、普通は10円、20円足りないというような状況で「微妙に重量オーバー」という状況で発生する)。

 ※ なお、郵便切手自体は「サービスを受ける対価として貼るもの」ではありますが、郵便物を送ることが普通に起こりうる日本では一種の「税金もどき」の一面もあるため「10円足りない」だけでも容赦なく送り返されてきます。

 ※ この点、「民営化された郵便局」とはいえ大都市の大きな郵便局以外は17時にはしまってしまうので(早いところだと15時など)、「民営化されたが、公的な要素もある郵便局」と「それを補完するコンビニなど」の相互補完が望まれる中、それでも「計量をかたくなに拒否する」のは、上記の「郵便局側が10円でも足りないと容赦なく送り返してくる」という実際上の問題があるわけです。

yukispica