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トランスジェンダー女性描いたオスカーノミネート作「ナチュラルウーマン」チリの主演女優が来日

2018年2月23日 21:00

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「ナチュラルウーマン」主演のダニエラ・ベガ
「ナチュラルウーマン」主演のダニエラ・ベガ
(C)mitsuhiro YOSHIDA/color field

[映画.com ニュース]2018年3月4日(現地時間)に開催される、第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされているチリを舞台にした映画「ナチュラルウーマン」が2月24日から公開される。自分らしさを守るため、差別や偏見に闘いを挑んだトランスジェンダーの女性を描いた作品だ。主人公のマリーナ役を演じ、自身もトランスジェンダーであることを公表している歌手で女優のダニエラ・ベガが来日し、作品を語った。

ウェイトレスをしながらナイトクラブのシンガーとして歌うトランスジェンダーのマリーナは、歳の離れた恋人オルランドと暮らしていた。しかし、オランドは自身の誕生日の夜、自宅のベッドで意識が薄れたまま亡くなってしまう。最愛のオルランドの死により思いがけないトラブルに巻き込まれ、容赦ない差別や偏見を受けるマリーナは、女性として生きていく権利を胸に前を向いて歩くことを決意する。監督は「グロリアの青春」のセバスティアン・レリオ

--マリーナの人生がまるであなた自身に重なってしまうような役でした。監督からオファーを受けた経緯を教えてください。

「はじめは監督にトランスジェンダーについて知りたいと言われ、映画のプロジェクトのことは詳しく聞かずに、相談役のような感じで1年半くらい、自分の人生哲学やプライベートなどあらゆることをおしゃべりしていて、ある日突然、この映画の脚本が送られてきたのです。そこでこれまでの事が、映画のためだったのかと後からわかりました。脚本を読んで、ドイツに住んでいるレリオに『面白いけど、ほとんど理解できない』と伝えると、『演じるのは君だよ』と言われて。電話口では『わかった』とは言ったけれど、そのあと3日間飲み歩いて酔いつぶれて、二日酔いが覚めた後ににきちんと現実と向き合い、オファーを正式に受けました」

--トランスジェンダーの役を演じる気負いはありませんでしたか?

「プレッシャーと言うよりも、私たち(トランスジェンダー)の物語が少ないので、そこが注目されるのは理解できます。しかし、私たちの事をよく知っている人が見れば、別のところに注目するはずです。トランスジェンダーという部分以外のところ、その先の部分も見てほしい。例えばニコール・キッドマンは女性だからといって、女しか演じられない、とは言われないでしょう。私が特別なのではなく、どんな俳優も大なり小なり、自分の経験や感情を演技に生かしていくものだと思います」

画像2(C)2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA
--強さと美しさを兼ね備えた素晴らしい演技でしたが、役(マリーナ)にはあなた自身の経験も投影されているのですか?

「映画を見ていただければ、その強さと美しさは全体の女性性であり誰もが持つものであるとわかると思います。監督とも話して、『尊厳・粘り強さ・反逆性』という普遍的な女性性の3つの要素を柱にこの役を構築しました。ですので、周りの誰かを真似したとか、自分を投影したとか、特定の誰かを参考にして演じたわけではありません。どういう形であれもっと自由に生きるためにはこの3つの要素の上にマリーナのキャラクターを築いていくと決めました。俳優は自分が演じる役柄について、その人物像を考え、創造する責任を負っていると思います」

--あなたが生きていくうえで大切にしているもの、ポリシーは何ですか?

「“反逆性”と“抵抗”と“愛”です。私は何か公式にタイトルを持っているわけではないし、歌も演技も独学で、大学を出ているわけではありません。アートへ通じる扉はすべて閉ざされていて、だから反逆児である私は窓から入ってほしいものを手に入れました。政治権力、差別や偏見、自由に生きるものを拒むものに対して、私は抵抗します。今、私たちが生きる世界は、前の世代が作り上げたものに他なりません。私たちが多様性という新しい認識を築くことで、次の世代が進む道になっていくのです。生きたいように生きる人生の為に、私は闘います」

--この映画を今から見る観客に一番届けたいものは?

「メッセージというよりも問いかけです。この映画を見終わった後に観客が自分に問いかけてくれればいいなと思います。自分がどこまで共感できるのか、共感の限界を広げるのか、狭めるのか、許されない範囲があるのか、どこまで身体性を自分は許せるのか、もっと自由な世界をつくるのか、それとも多様性を認めない世界をつくるのか、壁をつくるのか、橋をつくるのかです。映画は答えを与えるものではなく、問いかけなのです」

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