世紀の問題作!「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」を10倍味わうためのポイント10 : 清水節のメディア・シンクタンク

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コラム:清水節のメディア・シンクタンク - 第18回

2017年12月25日更新

第18回:世紀の問題作!「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」を10倍味わうためのポイント10

中身を伏せたままの宣伝展開で多用されたコピーは「衝撃」。蓋を開けてみれば、過激に「過去を葬り去る」映画だった。公開直後から賛否が激しく分かれ、世間を騒然とさせているエピソード8こと「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」。たった1本の映画に人々がこんなにも熱狂し、あるいは反発し、スター・ウォーズ(以下、SW)が持つ、娯楽を超えた力を再認識させている。僕は本作を大肯定し、称賛すべき要素が多いSW史上屈指の名編だと考える。ただし作劇的な瑕疵は少なくない。<レイ三部作>の第2部としては、主人公の扱いが希薄すぎる。観客の読みを裏切り続けるため、プロット運びはぎくしゃくしている。ルーカスが信奉した「神話の法則」に従う直線的な進行を避けたゆえ、当然の結果だろう。英雄となるはずの者の試練よりも、賢者のトラウマと葛藤に比重を置き、新たな世界観を打ち出すことに懸けたのだ。血筋に基づく選ばれしヒーローの成長ではなく、ごく普通の者たちの眠れる力に可能性を見出すという、大転換。アクションは多彩でユーモアも忘れない。二転三転する歪なエピソードの集積を、シンメトリーな構図による正攻法の画で見せ、心地よいクロスカッティングによって映像的な停滞を感じさせない。コアファンの視線を意識した「フォースの覚醒」とは対照的で、たどり着く境地は意外性にあふれ大胆不敵。驚きと謎に満ちた、ライアン・ジョンソンのSWを紐解いていこう。
 ※ここから先は【ネタバレあり】!!「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」鑑賞後にお読みください。

■【SWを構成するDNA】

画像1 (C)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

1.<意外なオマージュ> さりげないオマージュは随所にちりばめられているが、ピンチに陥ったときのお決まりのセリフ「嫌な予感がする」がなかったと嘆くファンも多い。しかし、オープニングの戦いの最中、BB-8に言わせているというのだ。ビープ音では気づかない。期待をかわしながらもSW愛を忍ばせる。いかにもジョンソンらしい作法だ。ルークが海に生息する哺乳動物の乳を搾り、薄緑色のミルクを豪快に飲むシーンがある。エピソード4「新たなる希望」で、将来に期待と不安を抱くルークが、ラーズ夫妻と食卓を囲みながらブルーミルクを飲むシーンへのオマージュだ。孤島オクトーでの暮らしはルークの食生活をワイルド(!?)に変えたが、相変わらずミルクを飲むその姿は、威厳あるジェダイ・マスターになりきれなかった現在をも感じさせる。

2.<ルーカスへの敬意> SW映画を革新した本作だが、創造主ルーカスの精神は受け継いでいる。ディズニーが「我々はファンのために何を作りたいのかを考えねばならない」とする、監督の創造性を奪うプロデュース方針をルーカスは公然と批判した。そんな確執も踏まえ、極力ジョンソンは「好きにした」のだ。「シン・ゴジラ」における牧・元教授のように。いや、ファンからの批判も恐れず、かつてのルーカスがそうしたように。また、ルーカス精神の継承は、こんなところにも表れている。冒頭のスペースバトルでファースト・オーダーに大量の爆弾を投下し、強烈な印象を残す反乱軍の爆撃手ペイジ。演じるのはベトナム女優ベロニカ・ンゴー。その妹役で、フィンと共に大活躍する整備士ローズに扮した女優ケリー・マリー・トランの両親はベトナムからの移民だ。ルーカスがSWの構想を抱いたのは、ベトナム戦争が泥沼化した時代。エピソード6「ジェダイの帰還」で帝国軍がイウォーク族のゲリラ戦に手こずる様は、アメリカ軍が南ベトナム解放民族戦線に翻弄される戦いのメタファーだった。ベトナムに出自をもつ俳優が、強大な軍隊に一矢報いる光景は、SWの原点を思わせる。

■【レイとベンのフォースSkype】

画像2 (C)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

3.<ベンが暗黒面に堕ちた理由> スノークによって、空間を超えて繋がれたレイとベン・ソロ(カイロ・レン)。指と指を差し出し触れ合う瞬間はエロティックでさえあり、虚空を見つめて対話する2人のカットの切り返しは「君の名は。」よろしく愛の交感のようでもある。巷では、FaceTimeならぬ“ForceTime”とか“フォースSkype”と呼ばれ始めているようだが、エピソード5「帝国の逆襲」におけるダース・ベイダーとルークの精神感応を推し進め、結び付ける力を強化したフォースの新解釈といえる。レイはベンと語り合うことで、ルークの嘘を知る。当初ルークは「ベンの心に拡がる闇を食い止める力がないとわかったときには手遅れだった。説得を試みたが逆に襲われた」とレイに打ち明け、それは回想シーンとなって現れる。しかし、ベンはレイに「真実じゃない」として真相を語り、ベンの主観による回想シーンが現れる。それを受け、さらにルークの主観による真相。1つの事実を捉えた微妙に異なる3つの回想で真実ににじり寄る。この構成は「羅生門」からインスパイアされたものだ。娯楽活劇ではない黒澤映画からのSWへの引用というのも、ジョンソンの独自性である。

4.<レイの両親とは誰か?> 「帝国の逆襲」ではベイダーがルークの父であるというサプライズが用意されたが、今作ではベンがレイの両親を「飲み代のために娘を売ったガラクタ漁り。すでにジャクーの共同墓地に眠っている」と言い当てる。レイはベンの言葉を信じたようだ。スカイウォーカー家の血筋とは無縁のヒロイン。それは、エピソード1「ファントム・メナス」におけるアナキンの身の上も思い起こさせる。しかしベンの言葉を真に受けていいのか。銀河に新しい秩序をもたらすために手を組もうとダークサイドに勧誘したときのベンの言葉であり、両親の帰還を待ち望んでいるレイの心を攪乱させるためのフェイクの可能性はないのか。エピソード7「フォースの覚醒」には、両親が宇宙船で飛び去るレイの回想シーンさえあった。あれは、レイの主観によって都合よく書き換えられた記憶だったとでもいうのか。答えはエピソード9まで持ち越されたと考えよう。

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[筆者紹介]

清水節

清水節(しみず・たかし)。1962年東京都生まれ。編集者・映画評論家・映画ジャーナリスト・クリエイティブディレクター。日藝映画学科中退後、映像制作会社や編プロ等を経て編集・文筆業。映画誌「PREMIERE」やSF映画誌「STARLOG」等で編集執筆。海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」日本上陸を働きかけ、DVD企画制作。著書に「いつかギラギラする日/角川春樹の映画革命」、新潮新書「スター・ウォーズ学」(共著) 。WOWOWのノンフィクション番組「撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画制作でギャラクシー賞、民放連賞最優秀賞、国際エミー賞受賞。

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