コラム：編集長コラム　映画は当たってナンボ - 第13回

第13回：いま、もっとも興行価値の高い男、ウィル・スミスはいくら稼ぐ？

ウィル・スミスの映画は当たる。いま、ハリウッドで確実に客が呼べるナンバーワンの俳優は、ウィル・スミスということで間違いないだろう。当然、その収入もべらぼうだ。アメリカの経済誌Forbesの発表では、07年にもっとも稼いだハリウッドスター第1位に輝いているが、その記事によると、07年6月から08年6月までに彼が稼いだ金額は8000万ドル（約85億円）、第2位はジョニー・デップで7200万ドル（約77億円）なんだそうだ。

そんなウィル・スミスの最新作は「ハンコック」だが、全米では7月に公開されており、すでに2億ドルを超える興収を記録している。しかも、驚くなかれ、全米では主演作が8本連続で1億ドルを超えるという偉業を成し遂げてしまった。

その8本について、日米の興収を調べてみた。

「ハンコック」（08）・・・・・・・・2億2600万ドル・・・・30億円～
「アイ・アム・レジェンド」（07）・・2億5600万ドル・・・・43億円
「幸せのちから」（06）・・・・・・・1億6300万ドル・・・・27.1億円
「最後の恋のはじめ方」（05）・・・・1億7900万ドル・・・・4.5億円
「アイ，ロボット」（04）・・・・・・1億4400万ドル・・・・37.5億円
「シャーク・テイル」（声優・04）・・1億1600万ドル・・・・18.8億円
「バッドボーイズ2バッド」（03）・・1億3800万ドル・・・・・20.0億円
「メン・イン・ブラック2」（02）・・1億9000万ドル・・・・・40.0億円

アクションはもちろん、ラブコメにヒューマンドラマと、ジャンル的にも穴がない。日本でも、「最後の恋のはじめ方」だけは滑っているが、それ以外はすべて大ヒット。公開すれば、常に20億円以上が見込める希有なタレントなのである。

ウィル・スミスに匹敵する俳優はいないのか？　トム・クルーズはどうだろう？　00年の「M：I－2」から06年の「M:i:III」にかけて、クルーズの主演作は7本連続で興収1億ドルを突破していたが、今年の「大いなる陰謀」で記録はストップしてしまった。一昔前に一世を風靡したトム・ハンクスはどうだろう？　98年の「プライベート・ライアン」から02年の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」まで、やはり7本連続で1億ドルを超えていたが、8本連続というのは未達である。

また、ヒット作の多いイメージのあるジョニー・デップやブラッド・ピットなどは、クセのある監督の作品によく顔を出しているため、興行収入は凸凹だらけ。連続してヒット作が続くというタイプではない。クセのある作家を好むだけあって、自身たちにも少し気難しそうな雰囲気がある。

その点、ウィル・スミスはとても気さくだ。プロモーションにも大変協力的である。特に、日本のテレビ番組へのゲスト出演では、普通のセレブは嫌がるバラエティ番組も、イヤな顔せずこなすどころか、現場で周りを楽しませてしまう天性の才能を持っている。このテレビでの好印象が、映画のヒットを強力に後押しするわけだ。

さて、日本でも先日公開となった「ハンコック」だが、国内興行ランキングでも初登場で「ポニョ」を破って首位デューを果たした。オープニングの勢いからすると、興収は30億円を超えてくるだろう。夏休みのハリウッド映画が不振だった分を、「ハンコック」で取り返して欲しいものである。いや、できれば、夏休みのもっといい時期に公開して欲しかった。（eiga.com編集長・駒井尚文）