ムーンナイト : 特集
最注目マーベル新作が【とんでもなく面白い】
すべてが斬新、強烈に異色、最高にダークで狂気的!
予測不能の衝撃と興奮が襲うストーリーを解説&考察!
「アベンジャーズ エンドゲーム」など、世界中の人々を熱狂させているマーベル作品。その新作「ムーンナイト」が、ディズニー公式動画配信サービス「ディズニープラス」で独占配信中だ。
主人公は、イギリス・ロンドンに住むスティーヴン。いたって普通の、どこにでもいそうな男性だ。しかし彼には悩みがあった。それは、たまに記憶が飛び、気がつくと全く覚えのない場所(例えばアルプスの村など)にいたりすること――。
4月26日現在、すでに全6話中、第4話までが配信されている。が、この第4話が、これまでのマーベル作品とは一線を画す斬新な神展開を見せており「『ムーンナイト』とんでもなく面白い」とファンの間で話題に。最終話に向けて、えげつないくらい盛り上がっているのだ。
そこで映画.comでは「本作のどこがどう面白いのか」の解説と、「このさき、どんな展開が待っているか」を考察。「全話観てるよ!」という人はもちろん、「1、2話は観た」「まったく観てない」という人のお役にも立てる記事となっているので、ぜひ一読し、どっぷりと“ムーンナイト沼”に肩まで浸かってほしいと思う。
ちなみに、筆者はもう口元くらいまで浸かっていて抜け出せない。
※本記事の解説や考察は、あくまでも第4話まで視聴した映画.com編集部独自のものです。公式の見解ではありません。
※解説パートはネタバレなしですが、考察パートには第4話までの結末など重大なネタバレを含む内容が記述されます。十分にご注意ください。
【「ムーンナイト」ってこんな作品】全6話の
見どころ・あらすじ・キャストをおさらい!
●あらすじ:スティーヴンには悩みがある。たまに記憶が飛ぶこと…自分のものではない奇妙な“思い出”がよみがえること…
「現実か夢か、区別がつかない――」。そうつぶやく男の名はスティーヴン・グラント(オスカー・アイザック)。国立博物館のギフトショップで働く、温厚でうだつの上がらない主人公だ。
彼は睡眠障害を抱え、夢のなかでは度々、白いスーツを着た男と対峙する。しかし、それが現実で起こっていることか、ただの夢なのか区別がつかない。
夜通し悪夢にうなされては仕事場で「役立たず」と罵られ、スティーヴンはいつも幻覚に怯える日々を過ごしていた。ある日、自室の見知らぬ携帯電話が鳴り響き、“マーク”と知らない名前を呼ばれる――。
自分は誰なのか、何に怯えているのか。困惑するスティーヴンは、やがて自分のなかに“自分以外の誰か”が潜んでいることに気づき始める。
コントロールできない“もう一人の自分”。それは冷酷な暗殺者マーク・スペクターだった。彼はエジプトの月の神“コンス”に導かれ、ある目的を果たすべく、カルト教団の教祖アーサー・ハロウ(イーサン・ホーク)と戦っている。マークに狂気が宿る時、ダークヒーロー“ムーンナイト”が誕生する――。
●キャスト
主人公スティーヴン・グラント/マーク・スペクター役:オスカー・アイザック(「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」「DUNE デューン 砂の惑星」)
アーサー・ハロウ役:イーサン・ホーク(「ガタカ」「6才のボクが、大人になるまで。」)
レイラ役:メイ・キャラマウィ
アントン・モガート役:ギャスパー・ウリエル(「たかが世界の終わり」)
●全話数・視聴方法
ディズニー公式動画配信サービス「ディズニープラス」で独占配信中。全6話(最終話は5月4日に配信)。
【解説】本作のどこがどう面白い? 注目すると
本編が200%楽しくなる、期待を超えた魅力を発掘!
「こういうところが面白いのか、ふむふむ」と感じてもらうために、映画.com編集部独自の目線で、本作の4つの魅力を解説しよう。
[魅力解説①]サイコな演出で攻めに攻める…マーベルが冒険した“危険な作風”がすごい!
最大の特徴は、謎めいたサイコスリラー的な展開だ。第1話からスティーヴンは度々意識を失い、気がつけば自分はアルプスの山奥にいて、武装した男たちから追われていたりする(しかもどうやら2人ほど殺したらしい)。
スティーヴンのなかにはマークという“もうひとりの自分”がいて、マークが体の操縦権をにぎると、スティーヴンは意識を失うのだ。第1話ではスティーヴンの視点のみで描かれるため、マークが行動した時間はごっそり省略される。私たちは何が起きたのかわからず混乱する。しかしこのことが謎を加速させ、スリルを生み、この先に何が待ち受けるのか猛烈に知りたくなる。
やがて誕生するのは、闇をまとうダークヒーロー。そして血、火薬、煙、死、異形の怪物、神が物語を支配する……。これまでのマーベル作品は、「アベンジャーズ」などスーパーヒーローによる豪快なバトルが印象的だった。しかし「ムーンナイト」は、それらとは一線を画す危険かつ異色の作風。だからこそマーベルファンは必見なのだ。
そしてマーベルに親しみがない人にとっても、尋常でないスリルと緻密な構成ゆえに全く予備知識は必要なく、“規格外に面白いサスペンス・ドラマ”として観ることができる。この奥深さが「ムーンナイト」の最大の魅力と言えるだろう。
[魅力解説②]主演オスカー・アイザックの“神業的演技力”…人間はここまで見事に変化できるのか!
物語の次は役者だ。主演オスカー・アイザックは、もはや“神業”とも言える超ハイレベルな演技を見せつけている。
「スター・ウォーズ」シリーズや「DUNE デューン 砂の惑星」で偉大な尊敬を集めるキャラクターに扮してきたアイザックだが、本作では優しいが気弱なスティーヴン役に。イギリスなまりが混ざる奇妙な英語をしゃべり、ペットの金魚に愛しげな眼差しを投げかける姿など、観ていてクスクスと笑いがこみ上げてくる。
しかし、ひとたびマークが表に出てきた瞬間、雰囲気はガラリと一変する。言葉はアメリカ英語になり、姿勢は歴戦の戦士にふさわしい臨戦態勢となり、眼光は信じられないほど鋭くなる。存在感を変化させること自体は、役者にとって必須スキルゆえ、さして珍しくはない。しかしアイザックはその振れ幅と精度が神業的なのである。
また、スティーヴンの顔をとらえるカメラはローアングル(下からあおり気味)、マークの顔をとらえるカメラはやや正面である点も見逃せない。アイザックは眉根を下げるか上げるかでもキャラを切り替えており、アングルの微妙な調整によりその演技を効果的に強調している。
なお、日本語版声優の関智一の演技も素晴らしいので、字幕派の人もチェックしてみることをおすすめする。
[魅力解説③]神秘的な古代エジプトと神話がからむ物語…「遊☆戯☆王」「インディ・ジョーンズ」好きにグッとくる!
スティーヴンとマーク、ふたつの人格をめぐる出来事に深く絡んでくるのが、古代エジプトと神話だ。主人公はエジプトの月の神コンス(驚くほど傲慢で自分勝手なやつ!)の力を借りてスーツを召喚し、ムーンナイトへと姿を変える。そして強大な敵となるアーサー・ハロウは、かつてコンスの力を得ていたがあることから決別したようで、現在は“未来の罪人”を裁く女神アメミットの復活を目論んでいる。
これら古代エジプトのモチーフに、世界的人気コンテンツ「遊☆戯☆王」を想起する人は少なくないだろう。アメミットやオシリスなど聞き馴染みのある名詞が頻出するので、ワクワクが心の奥から泡のように吹き上がってくるはずだ。
そしてピラミッドの内部に潜入し、伝説上の怪物と格闘し、謎ときの末に驚くべき事実を発見したりと、トレジャーハンティング要素もふんだんに盛り込まれている。「インディ・ジョーンズ」「ハムナプトラ」「グーニーズ」「アンチャーテッド」などを楽しんだ映画ファンも、高確率で夢中になっていくだろう。
[魅力解説④]正義の反対は悪ではなく、また別の正義…ヒーローとヴィランが“正反対の思想”でぶつかる展開がアツすぎる!
本作のヴィラン(悪役)は、名優イーサン・ホーク演じるカルト教団のリーダー、アーサー・ハロウ。アメミットとハロウは、手を取った者が「将来、悪事を働くかどうか」を見分け、「悪事を働く」と判断した場合、その者の命を奪う。未来の可能性から悪人を裁けば自動的に被害者はいなくなる。これこそが真の正義である、と考えているのだ。
一方でスティーヴン&マークに力を与えるコンスは、“罪を犯した者に制裁を与える神”。将来の可能性ではなく、結果に対して罰を与えることを正義としている。コンスとアメミット、どちらかが悪なのではなく、どちらも正義。ただ方向が違うだけだ。
第2話ではハロウが「コンスは悪の道を歩んだ者を罰する。それでは手遅れなのだ。(中略)その点アメミットは悪事が起こる前に裁きを下し根源を断ち切る。彼女こそ必要だ」と語るのに対し、スティーヴンが「アメミットが裁く“罪を犯す前の人たち”ってまだ無実だよね。頭で考えるのは罪じゃない」と反論する場面があった。
謎が謎を呼ぶ展開は、やがてアメミット/ハロウ、コンス/スティーヴン&マークの、まったく正反対の“強烈な正義”がぶつかり合うドラマチックな物語へと移行していく。鏡合わせの思想を持つ主人公と敵が戦う構図は、優れた作品の条件のひとつと言える。2人の正義が、どのような結末をたどるのか見逃せない。
【考察】第4話で急転直下の“神展開”! ラストの
意味は?神々の決闘も? 気になる“今後”を予想する
※以下、特にネタバレ注意!
そして4月20日に配信された第4話は、アメミットが封印されている墓の内部が主な舞台。共同監督のアーロン・ムーアヘッドが「最大のサプライズがある」と予告していた通り、まさかまさかの展開が怒涛の勢いで描かれた。
特に3つの出来事が鮮烈だった。
1. レイラの父親が傭兵団に殺されており、マークは傭兵の1人として現場にいたこと。
2. スティーヴンがアレキサンダー大王のミイラを発見し、その喉からアメミットを封印した神像を入手したこと。
3. そこへハロウらが乱入。操縦権を握ったマークがハロウの銃撃を受け、墓の内部に溜まる深い水の底へと沈んでいったこと。
物語が急転直下し、面白さに拍車がかかった第4話。続く第5話、第6話が俄然楽しみになってきたが、これまで描かれた内容を基に「この先はこうなると、さらに面白くなるかも」という考察をしてみた(※あくまでも、編集部独自の解釈です)。
[考察①]前代未聞のMCU作品! アベンジャーズなどとのクロスオーバーはどうなる?
本作の舞台はロンドンとエジプト。主にアメリカや宇宙を拠点とするMCU、「アベンジャーズ」シリーズのヒーローたちとは、いまだに絡みがない。
しかしながら、同じ世界であることは確かなようだ。というのも随所に関連を思わせるモチーフが盛り込まれているからである。
例えば第2話でMr.ナイトがジャッカルのような怪物と戦う場面では、バスの側面に「GRC」の広告が掲出されている。ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で登場した「世界再定住評議会(Global Repatriation Council)」、サノスの指パッチンで消滅していた人々を支援する組織のことだ。
さらに第3話では、モガートがレイラに「マドリプール以来だ」とささやいていた。マドリプールとは、こちらも「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」に登場した犯罪都市のこと。同作と「ムーンナイト」は関わりが深いかもしれない。
また、第3話で登場したエジプトの神々が「人類に干渉しない」というポリシーを貫く点は、「エターナルズ」を思い起こさせる。一瞬にしてピラミッドの内部へ移動できる“ポータル”も、「ドクター・ストレンジ」を彷彿とさせて楽しい。
そして何より、マーベルのドラマ作品は映画シリーズとのクロスオーバーを度々実現させてきたことを考えると、本作も何らかのサプライズが用意されていてもおかしくない。「ワンダヴィジョン」は「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」、「ホークアイ」は「ブラック・ウィドウ」とリンクしていた。“その瞬間”があるのかないのか、注目して待とう。
[考察②]神の間にも“紛争”の危機? いまだかつてない“神々の戦い”がぼっ発するかも?
ギザの大ピラミッドの内部にて審判を行い、コンスを裁いたエジプトの神々(ハトホル、ホルス、イシス、テフヌト、オシリス)。第3話ラストでは力をあわせてコンスを封印したが、どうやら彼・彼女らも一枚岩ではないようだ。ハトホルのアバターであるヤツィルが、マークにアメミットの墓の手がかりを伝えるという、神々の総意にそぐわない行動を見せていたからだ。
また、アーサー・ハロウはマークを銃撃した後、すぐにでもアメミットを復活させにかかるだろう。ここで気になるのは、人間に干渉しない神々は、この“緊急事態”に介入するのか、それとも傍観を続けるのか、ということ。もしも対応策の議論が摩擦を起こし、対立が激化すれば、神によるシビル・ウォー(紛争)が起きると予想できる。
となると私たちは、いまだかつてない戦いを観られるかもしれない。第一、人間の姿(アバター)なのにあんなにも存在感と魅力にあふれる神々が、ほとんど見せ場もないまま物語が終わるだろうか? マーベル作品のクリエイターたちは、そんなこと許さないはずだ。
[考察③]第4話ラストに衝撃シーン…あれって一体、どういうこと!? 第5話・最終第6話も見逃せない!
第4話終盤の展開は、あまりにも急すぎてすぐには頭が追いつかなかった。簡単におさらいしてみよう。
墓の水たまりに沈んだはずのマークは、気がつくと清潔で無機質な病院のようなところにいた。まるで「ジョーカー」のクライマックスシーンのよう。そこで自分は車イスに座らされており、レイラがビンゴを奪っていったり、アーサー・ハロウがこの施設の責任者のような口ぶりで「感情を整理しよう」「きみはきっと良くなる」などと説教してくる。
ハロウの前から逃げ出したマークは、なぜか置いてあった棺のなかからスティーヴンを助け出す。同じくして、なぜかカバ(なにかの神?)が扉の向こうから現れ、「ハイ!」と挨拶してくる……。
こうして文字で整理してみると、そのシュールかつショッキングな内容が際立ってくる。しかしこれは、おそらくマーク/スティーヴンの精神世界で起きた出来事だろう。撃たれたマークは仮死状態に陥り、そこで夢のような、しかしやけにリアルな体験をする。関わったことのある人物が役割を変えて登場していることや、マークとスティーヴンが対面しハグする様子が、これが現実ではないことを示唆している。
考えるに、この精神世界で、マークとスティーヴンは抱えている苦悩や課題を克服するのだろう。なぜならば内なる世界で現実の苦悩を解消し、それまでよりも一段も二段も成長し復活する……「マイティ・ソー バトルロイヤル」など、古今東西の物語でよくみられる“普遍的でアツい展開”を踏襲しているはずだからだ。
となるとマークたちはこの先、さらなるパワーを手にする。コンスの力を借りずともスーツを召喚し、ハロウたちに対峙する? あるいはひ弱だと思われていたスティーヴンが、マークたちを驚かせるような活躍を見せる? そんな筋書きが待っているかもしれない。
そしてもうひとつ、異彩を放っていたのが、ラストに登場したカバだ。エンドロールでは「Taweret ANTONIA SALIB」(タウエレト アントニア・サリブ)とクレジットされている。「大いなる母」という意味の名を持ち、女性や妊婦の守護者であるため、庶民からの人気が高い神“タウエレト”のことだろう(アントニア・サリブは、演じた女優)。
タウエレトといえば、実は第1話に登場していた。博物館のオフィスで「カバを持ってきて」「カバの女神タウエレトだよ」とスティーヴンが会話するシーンだ。10秒にも満たない場面だが、これが伏線だったのかと驚かされる。
彼女が具体的にどう活躍するかは、現時点ではまったくわからない。なにせ、遠慮がちに「ハイ!」と挨拶しただけだから……。しかし、日本語版声優が人気声優・潘めぐみであるだけに、第5話、最終第6話にもしっかり登場してくるに違いない。マークとスティーヴンの味方になるのか、敵になるのか? いずれにせよ、強く注目すべき重要キャラクターだと言える。
ほかにもマークとスティーヴンが今いる病院のような場所は何なのか、そしてアメミットやコンスの復活、コンスがレイラを次のアバターに狙っている真意、神々の行動の行方などなど、謎はまだまだ残されている。このすべてがあと2話で収束するのならば、怒涛かつ大興奮な物語が繰り広げられるのは間違いなさそうだ。
以上、「ムーンナイト」第4話までの解説&考察はいかがだっただろうか。時間をかけて真剣に考えたが、きっと本編は、我々の期待のハードルを軽々と超えてきてくれるのだろう。続く5話、最終回の6話が、怖いくらい楽しみだ。