ダニエル・クレイグ : ウィキペディア(Wikipedia)
ダニエル・クレイグ(Daniel Craig CMG, 1968年3月2日 - )は、イギリスの俳優。6代目ジェームズ・ボンドを『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年)から5作品演じた。『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)では、ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた。
来歴
生い立ち
イングランド・チェシャー州チェスターで生まれる。父親のティモシー・ジョン・ロウトン・クレイグは複数のパブのオーナーで、かつてはイギリス商船隊(マーチャント・ネイビー)で幹部候補生として勤務していた。母親のオリヴィア(旧姓ウィリアムズ)は美術教師である[http://www.oldeworldepubs.co.uk/cgi-bin/view2.pl?id=323 The Boot Inn (Tarporley, Cheshire). – Old World Pubs.。1972年、彼が4歳のときに両親が離婚し、母と姉とともにリヴァプールへ移る。以降12年間をリヴァプールで過ごしたが、16歳の時、ナショナルユースシアターを受験しロンドンへ移る。
キャリア
シェイクスピア『トロイラスとクレシダ』のアガメムノン役で舞台デビュー。1991年にギルドホール音楽演劇学校を卒業。有名になるまではパブでシェフとして働いていた。
1992年に『パワー・オブ・ワン』で映画デビュー。1998年、『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』のジョージ・ダイアー役で、デレク・ジャコビと共にエディンバラ国際映画祭最優秀演技賞を受賞。その後、『トゥームレイダー』や『ロード・トゥ・パーディション』などのアメリカ映画にも出演するようになる。2004年公開の『Jの悲劇』でロンドン映画批評家協会賞英国男優賞を受賞。
6代目ジェームズ・ボンド
2005年、5代目だったピアース・ブロスナンの引退を受けて、6代目ジェームズ・ボンド役への抜擢が発表された。『007』シリーズ初の、金髪のボンドとなる。それまでのボンドのイメージと大きく異なることもあって、イギリスでは発表直後にアンチサイトDaniel Craig is not Bondが出来るなど、バッシングが大きかった。これについて本人は、撮影後「批判は子供の罵りのような言葉だったけど(耳が大きすぎる、金髪はありえないなど)、実際に言われると傷ついたよ。でも、そういう人たちを納得させるための唯一の方法は、この役を上手くやりこなすことだった。俺自身ほどそれを感じていた人はいない」と語った。
また、クレイグの身長は178cmで歴代のボンドを演じた俳優(2024年時点)の中で一番の小柄であり、「ボンド=長身」というイメージが強く、撮影現場では実際より高く見せるためにシークレット・ブーツを着用し、唯一の非喫煙者(ノンスモーカー)の設定となっている。ただし、クレイグ自身が私生活でも非喫煙者(ノンスモーカー)であるか否かは不明である。
前述のような非難の嵐の中公開された『007 カジノ・ロワイヤル』で、クレイグは原作のジェームズ・ボンドのイメージに限りなく近い、寡黙でタフなボンドを演じきった。その演技力が評価され、シリーズ最高記録の興業収入を樹立した(後に『007 スカイフォール』が同記録を更新)。「ショーン・コネリー(初代)以来の最高のボンドだ」(ザ・サン誌)と絶賛されるなど、興業・批評、両方の面で成功した。また、シリーズ初の英国アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
2008年に公開された『007 慰めの報酬』、2012年に公開された『007 スカイフォール』、2015年に公開された『007 スペクター』にもジェームズ・ボンド役で出演している。
2012年に行われたロンドンオリンピック開会式にエリザベス2世をエスコートするボンド役として出演。 2021年に公開された『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』への出演をもってボンド役を引退。同作公開直前の2021年9月、イギリス海軍はクレイグを、作中のボンドと同格となる名誉中佐に任命した。後任として、7代目最有力候補にはアーロン・テイラー=ジョンソンが挙げられている。
ボンドが1953年に叙勲された設定の聖マイケル・聖ジョージ勲章をクレイグ自身も授与することが2021年12月31日に発表された。映画・演劇への顕著な貢献がその理由で、2022年9月8日にエリザベス2世が死去したため10月18日にウィンザー城で執り行われた式典ではアン王女がクレイグに勲章を授与した。
私生活
1992年にイギリスの元女優フィオラ・ロードンと結婚するが、1994年に離婚。二人の間には女の子(エラ)がいる。ドイツの女優ハイケ・マカッシュと7年間同棲したのち、日系アメリカ人の映画プロデューサーであるサツキ・ミッチェルと5年以上にわたって交際。その後、2011年6月22日に女優のレイチェル・ワイズと結婚した。二人は映画『ドリームハウス』の共演がきっかけで付き合い始めていた。2018年9月1日、ワイズとの間に女児が誕生したと報じられた。
少年時代からリヴァプールFCのサポーターである。定期的にリヴァプールの試合に訪れており、喜ぶクレイグの姿が何度もカメラに抜かれている。
出演作品
映画
※主演作品は太字表記。
年 | 題名 | 役名 | 備考 | 吹き替え |
---|---|---|---|---|
1992 | パワー・オブ・ワンThe Power of One | Sgt. ヤッピー・ボータ | デビュー作品 | |
1995 | 星の王子さまを探してSaint-Ex | ギジャウメ | ||
タイムマスター/時空をかける少年A Kid in King Arthur's Court | ケイン先生 | 伊藤栄次(VHS版) | ||
1997 | Obsession – Besessene Seelen | ジョン・マクホール | ||
1998 | 愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像Love Is the Devil: Study for a Portrait of Francis Bacon | ジョージ・ダイアー | ||
Love and Rage | ジェームズ | |||
エリザベスElizabeth | ジョン・バラード | 坂口賢一 | ||
1999 | ザ・トレンチ(塹壕)The Trench | ウィンター軍曹 | 秋元羊介 | |
2000 | Some Voices | レイ | ||
ホテル・スプレンディッドHotel Splendide | ロナルド | 大川透 | ||
永遠のアフリカI Dreamed of Africa | デクラン・フィールディング | 関俊彦 | ||
2001 | トゥームレイダーLara Croft: Tomb Raider | アレックス・ウエスト | 大川透(ソフト版)堀内賢雄(フジテレビ版)てらそままさき(テレビ朝日版) | |
2002 | Ten Minutes Older: The Cello | セシル | オムニバス映画、「星に魅せられて」に出演。 | |
ロード・トゥ・パーディションRoad to Perdition | コナー・ルーニー | 千田光男 | ||
2003 | シルヴィアSylvia | テッド・ヒューズ | TBA | |
パッションThe Mother | ダーレン | (吹き替え版なし) | ||
2004 | レイヤー・ケーキLayer Cake | XXXX | 小杉十郎太 | |
Jの悲劇Enduring Love | ジョー | TBA | ||
2005 | ジャケットThe Jacket | ルーディー・マッケンジー | 手塚秀彰 | |
Fateless | アメリカ兵 | |||
ミュンヘンMunich | スティーヴ | 土田大 | ||
2006 | ルネッサンスRenaissance | バーテレミー・カラス | 声の出演 | 小杉十郎太 |
Infamous | ペリー・スミス | |||
007 カジノ・ロワイヤル007 Casino Royale | ジェームズ・ボンド | 英国アカデミー賞 主演男優賞ノミネート | 小杉十郎太(ソフト版)藤真秀(テレビ朝日版) | |
2007 | インベージョンThe Invasion | ベン・ドリスコル | 小杉十郎太 | |
ライラの冒険 黄金の羅針盤The Golden Compass | アスリエル卿 | 東地宏樹(劇場公開版)藤真秀(テレビ朝日版) | ||
2008 | フラッシュバックFlashbacks of a Fool | ジョー・スコット | 製作総指揮 | 田坂浩樹 |
007 慰めの報酬007 Quantum of Solace | ジェームズ・ボンド | 小杉十郎太(ソフト版)藤真秀(キングレコード版、BSジャパン版) | ||
ディファイアンスDefiance | トゥヴィア・ビエルスキ | 小杉十郎太 | ||
セレブ・ウォーズ 〜ニューヨークの恋に勝つルール〜How to Lose Friends & Alienate People | 本人役 | カメオ出演 | TBA | |
2011 | ライフ -いのちをつなぐ物語-One Life | ナレーション | ||
カウボーイ & エイリアンCowboys & Aliens | ジェイク・ローナガン | 小杉十郎太 | ||
ドリームハウスDream House | ウィル・エイテンテン | 藤真秀 | ||
ドラゴン・タトゥーの女The Girl with the Dragon Tattoo | ミカエル・ブルムクヴィスト | てらそままさき | ||
タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密The Adventures of Tintin: Secret of the Unicorn | レッド・ラッカム | 声の出演 | 森田順平 | |
2012 | 幸福と栄光Happy and Glorious | ジェームズ・ボンド | 2012年ロンドンオリンピックの開会式内で流されたショートフィルム。エリザベス女王をバッキンガム宮殿から開会式会場までエスコートした。 | (吹き替え版なし) |
007 スカイフォールSkyfall | 藤真秀 | |||
2015 | 007 スペクターSpectre | 共同プロデューサー | ||
スター・ウォーズ/フォースの覚醒Star Wars: The Force Awakens | ストームトルーパー(FN-1824) | カメオ出演 | TBA | |
2017 | ローガン・ラッキーLogan Lucky | ジョー | 青山穣 | |
マイ・サンシャインKings | オビー・ハーディソン | (吹き替え版なし) | ||
2019 | ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密Knives Out | ブノワ・ブラン | 藤真秀 | |
2021 | 007 ノー・タイム・トゥ・ダイNo time to Die | ジェームズ・ボンド | 共同製作 | |
2022 | Glass Onion: A Knives Out Mystery | ブノワ・ブラン | Netflixオリジナル映画 | |
2025 | Wake Up Dead Man: A Knives Out Mystery | |||
TBA | Queer | リー |
テレビ
※主演作品は太字表記。
年 | 題名 | 役名 | 備考 | 吹替 |
---|---|---|---|---|
1993 | インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険The Young Indiana Jones Chronicles | Schiller | 第2シーズン第21話「Palestine, October 1917」 | |
炎の英雄 シャープ 2 イーグルを奪えSharpe's Eagle | Lt. ベリー | テレビ映画 | ||
1996 | ハリウッド・ナイトメアTales from the Crypt | バリー | 第7シーズン第9話「Smoke Wrings」 | |
モール・フランダース〜燃ゆる運命の炎〜The Fortunes and Misfortunes of Moll Flanders | ジェームズ・“ジェミー”・シーグレーヴ | テレビ映画 | 山路和弘 | |
Our Friends in the North | ジョージ・“ジョーティ”・ピーコック | |||
1997 | ハンガー/トリロジーThe Hunger | ジェリー・プリチャード | 檀臣幸 | |
氷の家The Ice House | D.S. アンディ・マクローリン | テレビ映画 | 安原義人 | |
1999 | Shockers: The Visitor | リチャード | ||
2001 | バトルラインSword of Honour | ガイ・クラウチバック | ||
2002 | コペンハーゲンCopenhagen | ヴェルナー・ハイゼンベルク | ||
2005 | アークエンジェルArchangel | フロック・ケルソ | 家中宏 | |
2006 | フィフス・ギアFifth Gear | 本人 | ||
2012 | サタデー・ナイト・ライブSaturday Night Live | 本人(ホスト) | 「Daniel Craig/Muse」 | |
2017 | 刑事★コムラッド 〜同志に別れを〜Comrade Detective | アントン・ストレーザ | 声の出演(英語版吹き替え)2話出演 | |
2020 | サタデー・ナイト・ライブSaturday Night Live | 本人(ホスト) | 「Daniel Craig/the Weeknd」 | |
2021 | ジェームズ・ボンドとしてBeing James Bond | 本人 | テレビ映画 |
コンピュータゲーム
発売年 | 題名 | 役名 | 備考 | 吹き替え |
---|---|---|---|---|
2008 | 007 慰めの報酬007: Quantum of Solace | ジェームズ・ボンド | 声の出演 | 小杉十郎太 |
2010 | ゴールデンアイ 007GoldenEye 007 | |||
007 ブラッドストーンJames Bond 007: Blood Stone |
日本語吹き替え
専属声優(フィックス)
- 藤真秀
- 2009年に「日曜洋画劇場」で放送された『007 カジノ・ロワイヤル』で初担当。同シリーズからジェームズ・ボンドの吹替を務めて以降、専属(フィックス)でクレイグを担当しており、『』で担当した際には「ダニエル・クレイグ声優」「誰よりも彼(クレイグ)の演技を知る藤」と評されるほどに定着している。
- 藤はクレイグの魅力について「ひとつひとつ表情や仕草は抑えた演技なのに、感情をしっかり伝えることができること。見つめられると、どんな女性も落ちそうなブルーの瞳も魅力的です」と語っている。なお、クレイグ自身最後のボンド映画となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で演じた際には自身の声優としての経験もシンクロし、思わず涙するほどに感情移入したと語っている。
- また、藤によるクレイグの吹き替えは同業者間でも評価が高く、初担当となった『007 カジノ・ロワイヤル』(テレビ朝日版)の演出を手がけた鍛治谷功は「まさしくジェームズ・ボンドを演じるために生まれてきた方」と評しているほか、『007/慰めの報酬』(BSテレ東版)のプロデューサーを務めた久保一郎は吹替版の製作時に「ダニエル・クレイグのボンドは藤真秀さんがベストだと確信した」と語っている。
その他の担当声優
- 小杉十郎太
- 『レイヤー・ケーキ』で初担当。藤に先行して多く吹き替えており、初期の担当声優として定着していた。
- 2011年の『カウボーイ & エイリアン』を最後に起用が途絶えている。
このほかにも、てらそままさき、大川透、安原義人、千田光男、東地宏樹、青山穣なども声を当てている。
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/09/25 16:26 UTC (変更履歴)
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