ジーン・リース : ウィキペディア(Wikipedia)

ジーン・リース (Jean Rhys, 1890年8月24日 - 1979年5月14日)は、イギリスの小説家。イギリス領ドミニカ出身のクレオール(父はウェールズ人、母はスコットランド人)で、本名はエラ・グウェンドレン・リース・ウィリアムズ(Ella Gwendolen Rees Williams)という。

生涯

16歳から本国で教育を受けるべくイギリスへ渡るが、植民地育ちという疎外感から学校でなじめなかった。ほどなく実家は没落し、彼女はコーラスガールとして生活するようになった。やがて彼女はパリへ流れていき、多くのボヘミアン的芸術家らの中で暮らすようになる。この頃の貧窮した暮らしが、のちの作品『カルテット』に表れている。

リースが作品を出版したのは1920年代から1930年代にかけてである。一度結婚したが、夫が第一次世界大戦中に行方が知れなくなり、食べていくためにペンを取った。その後30年以上沈黙を守り、1966年に出版された『広い藻の海』(日本語訳では『サルガッソーの広い海』というタイトルのものも出ている)で初めて注目を浴びた。『ジェーン・エア』に登場する精神障害者の、前半生を語る異色の小説で、後に映画化された。これをきっかけに、過去の作品群が再出版された。

作品

  • The Left Bank and Other Stories(1927)
  • Postures(1928) のち『カルテット』Quartetと改題して1929年に出版
    • 『カルテット』岸本佐知子訳、早川書房、1988年。ISBN 978-4-15-203371-0
  • 『マッケンジー氏と別れたあとで』After Leaving Mr Mackenzie (1931)
  • Voyage in the Dark(1934)
  • 『真夜中にお早うを』Good Morning,Midnight (1939)
  • Wide Sargasso Sea(1966)
    • 『広い藻の海:ジェイン・エア異聞』篠田綾子訳、河出書房新社〈今日の海外小説〉、1973年。
    • 『サルガッソーの広い海』小沢瑞穂訳、みすず書房〈ジーン・リースコレクション〉、1998年。ISBN 978-4-622-04669-1
      • 『灯台へ/サルガッソーの広い海』池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2-01、河出書房新社、2009年。ISBN 978-4-309-70953-6 ※ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(鴻巣友季子訳)と併録。
  • Tigers Are Better-Looking:With a Selection from 'The Left Bank' (1968)
  • Penguin Modern Stories I(1969)
  • My Day :Three Pieces (1975)
  • Sleep It Off Lady(1976)
  • Smile Please 未完成、自伝 (1979)
  • 「彼らが本を焼いた日」篠田綾子訳『イギリス短編24』集英社〈現代の世界文学〉、1972年。
  • 「あいつらのジャズ」小野寺健編訳『20世紀イギリス短編選・下』岩波文庫、1987年。ISBN 4-00-322702-6
  • 「懐かしき我が家」鈴木晶・森田義信編訳『ニュー・ゴシック:ポーの末裔たち』新潮社、1992年。ISBN 978-4-10-525101-7
    • 「懐かしき我が家」(森田義信訳)北村薫編『謎のギャラリー:こわい部屋』新潮文庫ISBN ISBN 978-4-10-137325-6
    • 「懐かしき我が家」(森田義信訳)北村薫編『こわい部屋:謎のギャラリー』筑摩書房〈ちくま文庫〉、2012年。ISBN 978-4-480-42962-9
  • 「河の音」西崎憲編訳『短篇小説日和:英国異色傑作選』ちくま文庫、2013年。ISBN 978-4-480-43034-2
  • 『あの人たちが本を焼いた日:ジーン・リース短篇集』西崎憲編、亜紀書房〈ブックスならんですわる・3〉、2022年。ISBN 978-4-7505-1746-9

関連項目

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