佐藤究 : ウィキペディア(Wikipedia)

佐藤 究(さとう きわむ、1977年9月13日 - )は、日本の小説家。旧筆名は佐藤 憲胤(さとう のりかず)。

経歴

福岡県福岡市に生まれる。福岡大学附属大濠高等学校卒業。友人の叔父が経営する会社で働く中で、詩人の河村悟に教示を受ける。もっとも、佐藤自身は<教示>という「記述からは、師と弟子という関係が読み取れる」として、「私としては、河村氏を師だと思ったことはない」、「教えを乞わずに、あくまで「勝手に」学んだのだ」と述べている佐藤究「詩人と小説家」 中日新聞 2022年9月30付け、11面(カルチャー)<エッセー 心のしおり>。

2004年、『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞の優秀作に選ばれる。その後、「佐藤 憲胤(さとう のりかず)」名義で2冊の単行本を刊行し、執筆を続けるも「純文学の世界で十年以上を不良在庫」として日本推理作家協会 公式サイト 会報2018年10月号過ごす。この間、警備員の仕事や、郵便局の仕分けで糊口をしのぐ。

2015年、誰に頼まれたわけでもないゾンビ小説を書いて、知己の編集者にその作品の話をしたところ、江戸川乱歩賞への応募をすすめられる。この時の事について、新人からやり直したらどうかという意味合いを受け取ったと語っている。2016年、「犬胤 究(けんいん きわむ)」の筆名で書いた「QJKJQ」が第62回江戸川乱歩賞を受賞。筆名を「佐藤 究(さとう きわむ)」に改名し、刊行された週刊SPA! 12/4号カルチャー★フェス2018インタビュー、佐藤究ツイッター

2018年、『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を受賞。

2021年、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。17年ぶり、史上2度目のダブル受賞となる。

2024年、直木賞受賞第一作となる『幽玄F』で第37回柴田錬三郎賞を受賞。同賞は河出書房新社による刊行作品として初の受賞だった。

人物

趣味は、フィギアやプラモデルの組み立てであり、プロレスも好む。

ミステリ・ランキング

  • 週刊文春ミステリーベスト10
    • 2016年 - 『QJKJQ』13位
    • 2021年 - 『テスカトリポカ』2位
    • 2022年 - 『爆発物処理班の遭遇したスピン』16位
  • このミステリーがすごい!
    • 2018年 - 『Ank: a mirroring ape』25位
    • 2022年 - 『テスカトリポカ』2位
    • 2023年 - 『爆発物処理班の遭遇したスピン』6位
  • ミステリが読みたい!
    • 2022年 - 『テスカトリポカ』2位
    • 2023年 - 『爆発物処理班の遭遇したスピン』6位

作品リスト

佐藤憲胤名義

  • サージウスの死神(2005年5月、講談社、ISBN 9784062129053/ 2020年4月、講談社文庫)
    • 第47回群像新人文学賞 優秀作
    • 初出:『群像』2004年6月号
  • ソードリッカー(2009年1月、講談社、ISBN 9784062151757)
    • 初出:『群像』2008年3月号
    • 同時収録「ライトワーム」初出:『群像』2006年4月号

佐藤究名義

  • QJKJQ(2016年8月、講談社 / 2018年9月、講談社文庫)
    • 第62回江戸川乱歩賞 受賞
  • Ank: a mirroring ape(2017年8月、講談社 / 2019年9月、講談社文庫)
    • 第20回大藪春彦賞 受賞
    • 第39回吉川英治文学新人賞 受賞
    • 第71回日本推理作家協会賞長編部門候補
  • ツォンパントリ(『中国・SF・革命』2020年7月、河出書房新社) - 河出書房新社
    • 初出:『文藝』2020年 春季号 - 河出書房新社
  • テスカトリポカ(2021年2月、KADOKAWA/ 2024年6月、角川文庫) - 株式会社KADOKAWA
    • 第34回山本周五郎賞 受賞
    • 第165回直木三十五賞 受賞
    • 初出: 第一部(『カドブンノベル』 2020年12月号) - KADOKAWA文芸WEBマガジン
    • 第一部十三章 特別公開(『カドブン』2020年11月26日〜2021年2月18日) - KADOKAWA文芸WEBマガジン
  • 爆発物処理班の遭遇したスピン(2022年6月、講談社)
    • 爆発物処理班の遭遇したスピン(初出:『小説現代』2018年2月号)
    • ジェリーウォーカー(初出:『NOVA』2019年春号 - 河出書房新社、河出文庫 )
    • シヴィル・ライツ(初出:『小説現代』2016年9月号講談社ノベルス刊『ベスト本格ミステリ2017』に再録。ベスト本格ミステリ2017 - 講談社BOOK倶楽部)
    • 猿人マグラ(初出:怪談専門誌『幽』vol.26 夢野久作特集号 2016年12月発行)
    • スマイルヘッズ(初出:『小説現代』2018年9月号徳間文庫より2019年6月に刊行の『短編ベストコレクションー現代の小説2019』に再録 - 徳間文庫)
    • ボイルド・オクトパス(初出:『たべるのがおそい』vol.6 2018年10月)
    • 九三式(初出:『小説現代 特別編集 乱歩賞特集』2019年10月号)
    • くぎ(初出:『読楽』2018年5月号 2019年6月講談社刊『ザ・ベストミステリーズ2019』に再録。 - 講談社BOOK倶楽部)
      • 第72回日本推理作家協会賞短編部門候補
  • 幽玄F(2023年10月、河出書房新社)

単行本未収録作品

佐藤憲胤名義

  • ヒトラーの骨(『群像』2005年4月号)
  • プラスチックハンガー(『群像』2005年5月号)

佐藤究名義

  • ペンキ塗りたて(『早稲田文学 』vol.033 2017年2月発行)
  • 超新星爆発主義者(『小説宝石』 2020年10月号)
    • 『真藤順丈リクエスト!絶滅のアンソロジー』(光文社2021年8月 / 光文社文庫2022年9月)収録 - 光文社
  • 邪説巌流島(『小説すばる』フラッシュフィクション「千字一話」2021年8月号)

書評・解説・レビュー 

  • 【書評】零下四〇度の地で見出された〈時〉『収容所のプルースト』ジョゼフ・チャプスキ著 岩津航訳 共和国刊(『文藝』2018年夏季号)ISBN 978-4-907986-42-1
  • 【舞台考察】バレエ「M」、三島が残した<ムスビ> 東京バレエ団『M』/振付:モーリス・ベジャール(朝日新聞 2020年11月1日) - 朝日新聞デジタル
  • 【書評】新刊ドラフト会議「プロレス社会学のススメ―コロナ時代を読み解くヒント」斎藤文彦、プチ鹿島著 ホーム社(『Number』1046)直木賞作家も「借りがある」。プロレスを再検証し、見えた魅力。
  • 【レビュー】復讐ではない正義や力の在り方/取材・文:稲垣貴俊(『THE BATMAN-ザ・バットマン-』2022年アメリカ映画/パンフレット)
  • 【書評】メタファーの霧、寓話の実験室『信仰』村田沙耶香著 文藝春秋(『群像』2022年9月号)
  • 【書評】うしなわれた温かきディストピア『アド・バード』椎名誠著(集英社文庫45周年記念「あの人の集英社文庫」2022年10月) - 集英社文庫
  • 【コラム】洋上の悪夢、失われた王国からの警告 (『BLACK DEMON』2023年アメリカ映画/パンフレット)
  • 【解説】コーマック・マッカーシーが教えてくれた「書くことの本質」『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』(コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳)(ハヤカワepi文庫 2023年3月) - ハヤカワepi文庫
  • 【書評】『街とその不確かな壁』村上春樹著 新潮社(『週刊現代』2023年5月20日号)
  • 【解説】インドネシアの神話的な混沌の海『ドゥルガーの島』篠田節子著 新潮社(波 2023年9月号) - 新潮社

寄稿 

  • 「特別料理 menu119」(『小説すばる』2016年10月号)
    • 「勝負師のスパイス」『ベストエッセイ2017』(光村図書出版)収録ベストエッセイ2017 - 光村図書。
  • 「人はなぜ闘うのかを問い続ける、命の表現がここにある」特集「ありがとうプロレス」(ダ・ヴィンチ 2017年8月)【ダ・ヴィンチ2017年11月号】今月のプラチナ本は 『Ank: a mirroring ape』 - ダ・ヴィンチニュース
  • 「武林隠者 名もなき拳法家」コラム oh! my IDOL(『小説すばる』2017年11月号)
  • ドグラ・マグラと人類の無意識について(『民ヲ親ニス』「夢野久作と杉山3代研究会」会報 第5号、2017年11月20日発行、ISBN 9784883451142)
    • 2017年3月11日に筑紫野文化会館で開催された「夢野久作と杉山3代研究会」第5回研究大会の基調講演に加筆修正
  • 「エドガー・アラン・ポー『ポオ小説全集3』177年後のモルグ街へ」私の一冊(『ミステリーズ’86』2017年12月)
  • 「時空の裂け目から顔をのぞかせる昭和」未来に読み継ぎたい平成の3冊(サンデー毎日 2018年1.7-14新春合併号)
  • 「『読むこと』から免れると危ない」わが人生最高の10冊(『週刊現代』2018年6.30)何故…ミステリー作家が問うた「人が人を殺す」という問題 佐藤究「人生最高の10冊」 - 講談社
  • 「佐藤究の《亀》」作家の字典(『小説BOC 10』2018年夏号)小説BOC 10 - 中央公論新社
  • 「ニューヨークのボートの下」私のTRIP体験(『TRIPPER』2018年秋季号)TRIPPER - 朝日新聞出版
    • 『ベストエッセイ2019』(光村図書出版)収録 - 光村図書。
  • 「黄金期のスイング・ジャズの音色のように」筒井康隆この一作『美藝公』(『文藝別冊 筒井康隆 総特集 日本文学の大スタア』KAWADE夢ムック 2018年10月)文藝別冊 筒井康隆 総特集 日本文学の大スタア - 河出書房新社
  • 江戸川乱歩と夢野久作ー葬儀映像と葬儀記念写真から(『民ヲ親ニス』「夢野久作と杉山3代研究会」会報 第6号、2019年4月30日発行、ISBN 9784883451203)
    • 2018年3月17日に拓殖大学で開催された「夢野久作と杉山3代研究会」第6回研究大会に於いて、平井憲太郎(江戸川乱歩の孫)×杉山満丸(夢野久作の孫)×佐藤究、三名による鼎談レポート
  • 「死に向かってビルドアップされてゆく肉体」(『文藝別冊 三島由紀夫1970』KAWADE夢ムック 2020年3月) - 河出書房新社
  • 最新翻訳小説地図70人アンケート -『Xと云う患者 龍之介幻想』デイヴィッド・ピース/訳:黒原敏行(『群像』2020年6月)- 講談社
  • 「見果てぬ夢-メキシコ」新春特別エッセイ特集(『小説宝石』2021年1・2合併号) - 光文社
  • 「暗黒の資本主義」コラム私の黒歴史(『野性時代』2021年3月号) -KADOKAWA
  • 16人の著名人が明かす私のお気に入り動画(週刊ポスト2021年9月10日号)直木賞作家・佐藤究氏 YouTubeでは「面白い人間を見つけたい」
  • 「作家を作った言葉」第一回(『STORY BOX』2022年1月号) - 小学館
  • 『私が選ぶ国書刊行会の3冊』(国書刊行会創業50周年記念小冊子 2022年11月) - 国書刊行会50周年記念特設サイト
  • 「詩人のトランクから」(館報『日本近代文学館』第310号 2022年11月 )
  • 「『ジョジョ』の源流はここにあり。」(『JOJO magazine 2022 WINTER』2022年12月) - 集英社
  • 「佐藤究・選 『本当の戦争の話をしよう』=ティム・オブライエン著 村上春樹・訳」今週の本棚・なつかしい一冊(『毎日新聞』2022年10月)
    • 『みんなのなつかしい一冊』(毎日新聞出版 2023年8月)収録 - 毎日新聞出版。
  • 「ペンキの魔術師の灰」オヤジとおふくろ(『文藝春秋』 2024年4月号 )
  • 「方位磁石」気づけば、相棒(『小説宝石』第310号 2024年7月号 )

インタビュー

書くことで気づかされた「物語とは、敗れた者たちのためにあるんだ」

「そんなネタ、大丈夫?」と言われるような作品に挑む

  • 『幽玄F』熱血新刊インタビュー/取材・文=吉田大助 撮影=黒石あみ(小説丸 2023年10月)
  • 佐藤 究、三島由紀夫に挑んだ新作長編『幽玄F』を語る/構成・取材=円堂都司昭、写真=林直幸(Real Sound 2023年10月)「重視したのは、死の享楽や美を持たせないこと」

対談

講演

企画

  • 文豪レジェンドTシャツ(共同企画:ハードコアチョコレート、丸山ゴンザレス)ハードコアチョコレート
    • 江戸川乱歩
    • 松本清張
    • 小泉八雲
  • 出版企画 テテクイカテテクイカ
    • 河村悟著『純粋思考物体』(2022年9月)
    • 河村悟 詩集『裂果と雷鳴 或る天使刑の破片』(2024年2月)

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/10/28 03:40 UTC (変更履歴
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