中村宏 : ウィキペディア(Wikipedia)

中村 宏(なかむら ひろし、1932年9月20日 - )は、日本の画家。日本大学芸術学部美術学科で学ぶ。東京造形大学客員教授。児童文学の挿絵を担当する際は「中村ヒロシ」の表記も使用する。静岡県浜松市出身。

概要

1932年、静岡県浜松市下池川町に生まれる。第3子、次男。生家は、祖父萬吉が創設し、祖母みつが校長を務める浜松高等家政女学校(現・浜松学芸中学校・高等学校)にあった藤井亜紀編「年譜、展覧会記録」『中村宏|図画事件1953-2007』東京新聞刊、2007年1月20日発行(186-197ページ)。1939年、静岡県立師範学校付属小学校入学。1945年、静岡県立浜松第二工業学校入学。1948年、静岡県立浜松第二高等学校編入学。1951年、日本大学芸術学部美術学科入学。指導教授は野口弥太郎、吉岡憲。主任は山脇巌。在学中に映画学科で牛原虚彦からエイゼンシュテインのモンタージュ論を学ぶ「中村宏自作年譜」『中村宏画集1953-1994タブロオ機械』(美術出版社、1995年7月)。1953年、青年美術家連合に参加。1955年、日本大学芸術学部美術研究室へ入所。前衛美術会へ入会。1958年、日本大学芸術学部美術研究室を退所。1950年代、政治的・社会的な事件や事象を取材して描かれた作品群は「ルポルタージュ絵画」として注目を集めた。それ以降も、時々の社会状況と深く関わりながら描かれてきた作品は広く支持されており、戦後日本美術史において高く評価されている。1969年、美学校(現代思潮社)創設に参加、中村宏油彩工房を担当。1975年、桑沢デザイン研究所に勤務。1982年、東京造形大学に非常勤講師として勤務。2004年、東京造形大学客員教授に就任。

性的な雰囲気や心的世界などを奇抜な画面構成と特異な表現で描く。非常に独特のその絵柄には、現代ポップアートにもつながる世界がある。雑誌の装丁なども多く手がける。

空に浮かぶ蒸気機関車や、セーラー服姿の一つ目少女、そして高速で流れる車窓の風景などが彼の作品の一貫した愛玩キャラクターといえる。戦後一貫して具象にこだわり、独自の絵画を追求した作品であることが特徴。観る者にとって強烈な印象を残す。この一連の作品『円環列車・A-望遠鏡列車』及び『円環列車B-飛行する蒸気機関車』は発表から半世紀を経てアーバンギャルドのアルバム『メトロスペクティブ』の装画として使用された。

さまざまな事件や事象を記録し伝えるところからスタートした彼の作品は、現在に至るまで、常に実際の鑑賞者を念頭において構想され、描かれてきており、絵画の中に、鑑賞者に対してコミュニケーションを積極的に促すような“記号”や“図”、“絵言葉”などの、線描をベースにした独自の「図画」的な要素を盛り込んだ幅の広い仕事が展開され、観る者の視点を捕らえるための独自の探求が続けられているため、中村の作品は、何よりもまず、ひとりの鑑賞者が事件に遭遇するかのように出会う画面として現れており、常に個々の鑑賞者をまきこみ続ける作品である。

出展

個展

+会期会場
第1回個展1953.3長崎北荘画廊
第2回個展1956.7.21-31神田・タケミヤ画廊
第3回個展―場所と風景1962.1.8-14銀座・サトウ画廊
第4回個展1962.1.16-20銀座・村松画廊
第5回個展―観念絵画1964.2.17-22新橋・内科画廊
第6回個展―真昼の国家1964.11.19-23早稲田大学、早稲田祭
第7回個展1966.6.6-19京都・アヅマギャラリー
第8回個展1967.1.30-2.13銀座・青木画廊
第9回個展1969.3.14-23新宿・紀伊國屋画廊
第10回個展1971.11.30-12.9新宿・紀伊國屋画廊
第11回個展1972.11.30-12.9銀座・青木画廊
第12回個展―フランケンシュタイン氏的呪物ノタメノ部品1974.11.9-23中野・中野紅画廊
第13回個展1975.10.6-18日本橋・ギャラリーヤエス
第14回個展―素描展―車窓編1977.5.7-19中野・中野紅画廊
第15回個展―車窓編1980.11.28-12.7広島・遊子館ギャラリー
第16回個展―車窓編1981.3.16-21銀座・サトウ画廊
第17回個展1981.4.13-25名古屋・GALLERY79
第18回個展1981.4.22-5.2豊橋・隆英堂画廊
第19回個展―〈車窓編〉TYPE9~TYPE121982.11.22-12.4彩鳳堂画廊
第20回個展―中村宏の世界展1984.7.26-8.12千葉・ギャラリーちいら
第21回個展―TOYOBJECT1986.1.27-2.8御茶ノ水・淡路町画廊
第22回個展―ドローイング展1986.9.18-10.7池袋・ギャラリー呆緒bo
第23回個展―開廊10周年特別企画中村宏1950-1960年代1986.10.20-11.15神田・アートギャラリー環
第24回個展1987.10.9-21浜松・ギャラリーアート・デューン
第25回個展―素描展―タブロオ・マシーン1988.2.1-13アートギャラリー環
第26回個展―タブロオ機械1989.3.20-4.1アートギャラリー環
第27回個展―開廊13年目の9月へミッシング・リンク・メモリー1989.9.4-16、9.25-10.7アートギャラリー環
第28回個展―境界線シリーズ1990.1.8-27アートギャラリー環
第29回個展1990.5.10-30浜松・ギャラリーアート・デューン
第30回個展―黄色法則1991.1.7-23アートギャラリー環
第31回個展―開廊記念企画 中村宏―黄色法則1991.6.10-29アートギャラリー環
第32回個展―限界標示1993.1.5-22アートギャラリー環
第33回個展―タブローによる中村宏展1993.7.10-8.3浜松・ギャラリーアート・デューン
第34回個展―タブロオ機械1995.8.1-29京橋・INAXギャラリー
第35回個展1996.7.11-30浜松・ギャラリーアート・デューン
第36回個展1997.2.8-28銀座・空想ガレリア
第37回個展―境界としての《タブロオ機械》の場所1997.4.1-28名古屋・中京大学アートギャラリーCスクエア
第38回個展―1970-80年代1998.2.16-3.7村松画廊
第39回個展―図表の震度1999.5.17-29村松画廊
第40回個展1999.10.28-11.16浜松・ギャラリーアート・デューン
第41回個展2000.7.8-28浜松・ギャラリーアート・デューン
第42回個展―『図画蜂起』出版記念展2000.10.2-8銀座・スパンアートギャラリー
第43回個展―図表の震度・II2001.4.2-21村松画廊
第44回個展2002.9.30-10.22浜松・ギャラリーアート・デューン
第45回個展―図画蜂起2002.10.1-11池袋・ガレリア・プント
第46回個展2004.5.31-6.5、6.14-19村松画廊
第47回個展2005.9.8-9.3浜松・ギャラリーアート・デューン
第48回個展―中村宏・図画事件1953-20072007.1.20-4.1東京都現代美術館
第49回個展―中村宏展1955-20052009.4.20-5.16ギャラリー川船
第50回個展2009.8.24-9.12ギャラリー川船
第51回個展―タブロオ・マシン[図画機械]中村宏の絵画と模型2010.7.25-9.5練馬区立美術館
第52回個展2010.8.23-9.4ギャラリー川船
第53回個展―一点消失・中村宏2011.10.3-22銀座・ギャラリー58
第54回個展―消失点・中村宏2013.10.7-19銀座・ギャラリー58
第55回個展―「絵画者・中村宏」展2015.2.14-3.29浜松市美術館

著書

  • 『中村宏○画集 望遠鏡からの告示』(現代思潮社) 1968
  • 『機械学宣言 地を這う飛行機と飛行する蒸気機関車』(稲垣足穂共著、仮面社) 1970
  • 『機甲本イカルス』(稲垣足穂著、中村宏画、呪物研究所) 1973
  • 『呪物記』(大和書房) 1973
  • 『学園魔女戦争』(宮崎惇著、中村宏画、鶴書房、SFベストセラーズ) 1978
1980年には、ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)でも刊行された
  • 『中村宏作品集★車窓篇』(深夜叢書社、エクリチュール叢書4) 1980
  • 『中村宏画集 1953-1994 タブロオ機械』(美術出版社) 1995
  • 『図画蜂起 1955-2000』(美術出版社) 2000
  • 『絵画者 1957-2002』(美術出版社) 2003
  • 『中村宏|図画事件 1953-2007』(東京新聞) 2007
東京都現代美術館、名古屋市美術館で開催した展覧会に際して刊行された展覧会カタログ

児童文学

  • 『ライオンがならんだ』(佐野美津男、理論社、童話プレゼント) 1966
  • 『にいちゃん根性』(佐野美津男、太平出版社) 1968
  • 『ピカピカのぎろちょん』(佐野美津男、あかね書房) 1968
  • 『犬の学校』(佐野美津男、国土社、創作子どもSF全集) 1969
  • 『消えた二ページ』(寺村輝夫、理論社) 1970 - 再刊時に『消えた2ページ』と改題
  • 『東京・ぼくの宝島』(佐野美津男、国土社) 1970
  • 『だけどぼくは海を見た』(佐野美津男、国土社、創作子どもSF全集) 1970

関連項目

  • シュルレアリスム
  • 幻視芸術
  • 幻想絵画

外部リンク

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