【本日公開】10年にわたり向き合った潜水事故、深海シーンは深夜に撮影! 「ラスト・ブレス」監督インタビュー独占入手
2025年9月26日 13:00

“地球上で最も危険を伴う職業”のひとつ、飽和潜水士の衝撃の実話を映画化し、“生存確率ゼロ”からの脱出を描くサバイバルスリラー「ラスト・ブレス」(公開中)から、アレックス・パーキンソン監督のオフィシャルインタビューを、映画.comが独占入手。ドキュメンタリーを劇映画としてリメイクした経緯や、深海描写に込めたこだわりなどを語り尽くした。
潜水支援船のタロス号が北海でガス・パイプラインの補修を行うため、スコットランドのアバディーン港から出航した。ところがベテランのダンカン(ウッディ・ハレルソン)、プロ意識の強いデイヴ(シム・リウ)、若手のクリス(フィン・コール)という3人の飽和潜水士が、水深91メートルの海底で作業を行っている最中、タロス号のコンピュータシステムが異常をきたす非常事態が発生する。
制御不能となったタロス号が荒波に流されたことで、命綱が切れたクリスは深海に投げ出される。クリスの潜水服に装備された緊急ボンベの酸素は、わずか10分しかもたない。海底の潜水ベルにとどまったダンカンとデイヴ、タロス号の乗組員はあらゆる手を尽くして、クリスの救助を試みるが、それはあまりにも絶望的な時間との闘いだった。

BBCやナショナルジオグラフィックで活躍してきたドキュメンタリー作家のパーキンソン監督は、人間の極限状況や自然との関わりをテーマにしたリアルで緊張感あふれる映像表現で評価されてきたプロフェッショナル。2012年に起こった潜水事故を題材にしたドキュメンタリー「Last Breath(原題)」が高く評価され、劇映画「ラスト・ブレス」として新たに映画化した。

きっかけは、友人がこの事故に関するビデオを作っていたことでした。そのビデオは石油ガス業界で働く人に安全性や衛生を教えるためのものだったのですが、その友人から事故について教えてもらいました。それで、すっかり飽和潜水という未知の世界に魅了されたんです。それと、本作でフィン・コールが演じている、深海に取り残された潜水士、クリス・レモンズの経験に共感したんですよね。
クリスと彼を助けようとした人々の経験は、人間の勇気や希望の力を物語っています。人々が共通の目的に向かって団結するとき、信じられないことが起こるんです。誰もが知らない世界に、誰もが共感できる物語があるということは、作り手として素晴らしいバランスだと感じました。それで、これは語られるべき物語だと確信したんです。

数年かけてドキュメンタリーを製作したのですが、その後、本作のプロデューサーから今回の「ラスト・ブレス」の企画を提案されました。最初はエグゼクティブプロデューサーとして関わっていたのですが、途中で監督もやることになりました。企画を聞いたときから、劇映画はドキュメンタリーの枠を超えて何でも描ける白紙のキャンパスのようだと感じていて、当初から今回の企画はドキュメンタリーのリメイク以上のものにしようと考えていました。この驚くべきストーリーを可能な限り、最大限のスケールで描き、登場人物たちの感情の旅路を新たな側面で追求したいと思ったんです。
それと今回の映画では、可能な限り、起こったことに忠実であるべきだという責任を感じました。それは、あの夜に驚くべきことを成し遂げた彼らの功績をきちんと描きたかったからです。結局、今回の映画は完成まで4年ほどかかりました。私がこの物語と向き合ってから10年ほど経っているので、この事故については表も裏も知り尽くしていると言えますね。

深海シーンの撮影はマルタ島にある野外スタジオで行ったのですが、タンクに海水を貯めて海を再現しました。このタンクは直径100メートル、水深11メートルほどの巨大なタンクです。わざわざ海水を使ったのは、海水の粒子には生命感があるので、深海らしさを表現できるからです。ここは撮影場所に最適だったと思います。
ただ、ひとつ問題があって、この施設は屋外にあったので、明るいうちに深海シーンを撮影できなかったんです。海底を表現するには夜通し撮影する必要がありました。そこで毎日、夜が来るのを待ち、3週間かけて深海のシーンを撮影しました。それと、水深11メートルで撮影するということは並大抵のことではありません。ちょっとしたことがきっかけで、事故が起こる可能性があります。なので、キャストやスタッフを含め、全員で万全を期して撮影に臨みました。

3人とも本当に素晴らしかったのです。そもそも私はずっとドキュメンタリーを撮っていたので、今回が初めての劇映画です。映画の撮影現場に足を踏み入れること自体、初めての経験でした。初日に3人の演技をモニターの前で見た瞬間、彼らは世界一流の役者なんだと実感しました。特にウッディ・ハレルソンは彼が演じたダンカンと同じで、みんなの父親代わりになってくれました。それがシム・リウやフィン・コールへの態度にも表れて、現場の雰囲気はすごく良かったですね。
苦労したのは潜水シーンです。この映画では「Dry for wet」と呼ばれる、地上で撮影したものを水中のように見せる技術は一切使わず、全て本当に潜水してもらい、その姿を撮影しました。やはり、役者が実際に水中で演技していると、そのリアリティが見ている方にも伝わると思います。なので、シムとフィンにはかなりの時間を潜水訓練に費やしてもらい、ほぼスタント無しで演じてもらいました。ただ、ふたりともダイビング経験があったので、すごく楽しんで水中シーンを撮影していましたね。
それと、水中にいる俳優に演出をつけるときには、潜水指揮者(dive supervisor)に意見を求めながら、俳優への連絡は私が行いました。本来、ダイビングのときには潜水指揮者がダイバーの“神の声”であるべきなのですが、演出と指示を一本化させるためにそのような工夫をしました。

もちろんドキュメンタリーも作りたいのですが、今は劇映画の脚本を2本書いています。ひとつは「ラスト・ブレス」以上にスリリングなスリラー映画で、もう1本はコメディ映画です。どちらも実話をもとにした作品です。今回、「ラスト・ブレス」の脚本を書いたことがきっかけで、フィクションの面白さに目覚めちゃったんです。次の作品も楽しみに待っていてください。
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