Netflixシリーズ「グラスハート」佐藤健&町田啓太&志尊淳が語る“過去一”が詰まったそれぞれの魅力
2025年8月13日 13:00

主演とエグゼクティブプロデューサーを兼ねる佐藤健が、長年温めてきた企画をNetflixシリーズとして実現させた「グラスハート」(7月31日から世界独占配信)。劇中バンド「TENBLANK」のメンバーを演じる佐藤健、町田啓太、志尊淳の3人が集結し、「この人でなくては」という佐藤の熱烈なオファーで実現したキャスティングの裏側から、1年以上に及んだという過酷な楽器トレーニング、そして「藤谷そのもの」だったという佐藤のプロデューサーぶりまで、作品に注がれた並々ならぬ熱量を語り尽くした。(取材・文:磯部正和)

■信頼で結ばれた「TENBLANK」の誕生秘話
――町田さん、志尊さんが揃われたのは、佐藤さんの「この人でなくては」という熱烈なオファーがあったからだとうかがいました。キャスティングの決め手と、現場での佐藤さんのプロデューサーぶりについてお聞かせください。
佐藤健:まず「華がある」というのが大前提でした。その上で、深みのあるお芝居ができて、かつ人間性も信頼できる人。カメラが回っていないところでのありようも含めてお願いしたいと思える相手でした。
志尊淳:役について「こう作っていこう」という話は特になく、それぞれが役者のプロとして呼ばれている以上、自分の作り方でアプローチする形でした。それよりも、健くんがプロデューサーとして作品に入るのも初めてだろうし、とにかく彼の持つ熱量にみんなが引き寄せられていた感覚が強いです。細かい部分までものすごくこだわりを持って突き詰めている姿を見て、僕らもできることをやっていこうというスタンスでした。
町田啓太:本当に妥協のない人だなと。プロデューサーとしても役者としても、作品づくりに全力投球で、やりたいことを形にしていく様がすごいなと思いました。主演だけでも大変なのに、プロデュースも兼ねるのは相当考えることが多いはず。僕だったら毛細血管が燃えて大変なことになると思います(笑)。でもそれをケロッとした顔でやっているのが、すごいなと思いながら見ていました。健くんから表立って「こうしてほしい」というオーダーはなかったですが、彼の中に「こうやりたい」という明確なビジョンがあるのは伝わってきました。だから、僕らはどうアプローチしようかと、志尊とよく話していましたね。「健くん、ああやりたいんだよね」「じゃあ、こうやるほうがいいかな」みたいに相談しながら、呼んでもらったからには作品を底上げしたいという気持ちで臨んでいました。

■1年以上の猛練習と“藤谷”からの無茶ぶり
――ライブシーンのリアリティに驚きました。1年以上に及んだという楽器のトレーニングや、演奏シーンでのエピソードがあれば教えてください。
佐藤:撮影期間が8カ月あり、その間もずっと練習していたので、1年以上やっているのは間違いないですね。僕はもっと早くから始めていましたが、ひたすら黙々と家で楽器を弾いていました。
町田:僕らも1年ぐらいですね。演奏する曲が両手じゃ収まらないくらいあるんです。しかもどこを撮られてもいいように、1曲まるまる全部練習しました。ほとんど使われていない部分もあるんですけどね(笑)。
志尊:僕は人生で初めて、監督とプロデューサーに「撮影日を変えてください」と直談判しました。11月から練習を始めて、クランクインが1月の「エリーゼのために」のシーンだと聞いて。送られてきた音源が「本当に人が弾いているの?」というレベルで(笑)。「できたよね」というクオリティにしたくなくて「もう少し時間をください」とお願いしました。結果的に撮影が4月になったので3カ月猶予ができましたけど、それでもギリギリでした。しかも一番怖いのは佐藤健という人で(笑)。演奏の2週間前に「志尊、この曲さ、ベースやった方がかっこいいぞ」って言ってくるんですよ。「え、それやれってこと?」「ああ」「無理でしょ」「いや、お前ならいける」って。本番5日前には「この曲、ハモってた方がかっこいいと思うんだよね」とか。
町田:僕もコーラスを頼まれたけど、「ギターをやりながらは無理です」と唯一お断りしました(笑)。でも本当に、健くんに「やってほしい」と言われたら、やるしかないという気持ちでしたね。
佐藤:僕が言いたいわけじゃなくて、世界中の2人のファンの声を代弁してるだけなんです(笑)。志尊のベースが見たいし、2人の歌声も聴きたいじゃないですか。

■音楽と映像の化学反応が生む、圧倒的な世界観
――作品を拝見して、ライブシーンのカメラワークなど、映像の圧倒的な美しさに引き込まれました。映像へのこだわりについてお聞かせください。
佐藤:僕は音楽と映像の化学反応の力をすごく信じていて、そういうドラマにしたかったんです。アニメではよく使われる手法ですが、実写で音に合わせてカットを細かく割っていくのはあまりない。だから、自分がやろうとしていることが実写でうまくいくか知りたかった。企画をNetflixに持ち込む前にテスト映像を撮影して。「この方向でいけばできる」と確信が持てました。本編では「美しい映像」が絶対条件だったので、映像の天才である柿本(ケンサク)監督にお願いしました。「このシーンは名シーンにしたいから」とざっくり希望を伝えると、監督が「わかった」とイメージを形にしてくれる。そのおかげで、どのカットも飛び切りキレイにできた。Netflixの大きな規模だったから実現できたことで、本当に幸せな環境でした。
町田:完成した作品を観て、まず「気持ちいいな」と思いました。圧倒的な映像美と音楽の迫力があって、普通に観て楽しめる。この映像は柿本さんじゃないと絶対に撮れないクオリティ。改めて天才だなと思い知らされました。ライブシーンは本当に「やばい」って言われるくらいの時間をかけて、ものすごい量の映像を撮っていたので、何がどう使われるか全くわからなかったです。だから完成した映像は新鮮で、「こうなっているんだ!」と驚きました。
志尊:僕も映像のことは完全に柿本監督に委ねていました。監督は役者を本当に信頼してくれる方で、「あなたたちがやったものを僕が切り取るんで」というスタンス。一番近くでフレームを決めながら撮ってくれるので、そこへの信頼はずっとありました。僕らが演奏で甘かった部分を、カメラワークで臨場感たっぷりに見せてくれている部分もすごくある。役を背負ってどうパフォーマンスするかをとことん突き詰めて、あとは監督に委ねる、という感じでした。

――原作で描かれる「TENBLANK」の音楽にはメロディがありません。そんななか、曲を具現化していくという作業は相当な難易度の高さだと思われますが。
佐藤:最初からイメージがあったわけではなく、「TENBLANKの音ってどうする?」というゼロの状態から始まりました。とにかくいろんな音を聴きまくって、少しずつ「こっちの方向かな」と近づいていった感じです。野田洋次郎さんをはじめ、素晴らしいアーティストの方々に脚本を読んでもらい、各々がイメージして作ってくれた曲を僕たちが聴いて制作を進めていきました。
――お二人は「TENBLANK」の楽曲を聴いてどんな感想を持ちましたか?
町田:原作が90年代の物語なので、当初はその時代の音楽をイメージしていました。でも、健くんから「現代的な音楽性に寄せる」と聞き、どうなるんだろうと楽しみにしていたんです。実際に楽曲を聴いてみたら、素直に「これ、かっこいいな」と。どの曲もクオリティが高くて感動しました。特に、初めて健くんの歌声が入ったデモを聴いた時は「めっちゃうまいじゃん!」と驚きました。声質と楽曲がすごく合っていて、彼の歌声とのマッチングまで意識して作られているんだなと感じました。
志尊:僕はこの作品においては、(佐藤演じる)藤谷が作る音に引っ張られてついていくというスタンスでした。健くんが「TENBLANK」の音を追求している中で、僕自身の主張は必要ないなと。最初に「グラスハート」を聴いた時点で「これは間違いない」と確信できたので、あとは藤谷が作った曲をひたすら演奏することに徹しました。ただ唯一、劇中で僕の役(坂本)が作った曲だけは、彼の思いを深く理解するために、藤谷が編曲したものと何度も聴き比べて研究しました。その曲は歌詞が直前まで決まらず、健くんに「志尊が書いちゃえよ」と言われるほど思い出深い一曲です。

■互いが語る「過去一」の魅力と、俳優・佐藤健の集大成
――互いの才能に惹かれて集まってきたという、ある意味で健全な集合体である「TENBLANK」のような関係性についてどう考えますか?
佐藤:バンドって羨ましいですよね。俳優にはそういう感覚がないので、昔からずっとグループに憧れがあります。バンドもそうですし、アイドルグループとかも。
町田:グループにいる経験もありますが、俳優業は結局「個」の戦いなので、また感覚が違いますね。
佐藤:グループならではの大変さもあるのか。
町田:そうですね。どちらにも良い面と大変な面があるなと感じます。結局は「誰と一緒にやるか」が一番大きいのかもしれないですね。
佐藤:まさに人次第だよね。僕は本当にずっと一人で仕事をしてきたので、やっぱりすごく羨ましいです。いっそ、俺たちでグループ作りますか(笑)。

――この作品を通して感じたお互いの俳優としての魅力と、ファンに特に見てほしいポイントを教えていただけますか。
佐藤:志尊は、本当に“過去一”いいんじゃないですか。とっつきにくい坂本という役を、むしろチャーミングに見せている。その芝居の塩梅が絶妙で、ものすごく愛されるキャラクターになっている。先日、韓国の方に映像を見せたら「なんだこのキーボードの人は?かっこいいな」と言っていました。町田についても「なんだあのイケメンは」って(笑)。まずロン毛が超似合うし、ギタリストとしての佇まいも完璧。「TENBLANK」の中では一番大人なポジションで、まさに少女漫画の王子様。2人ともやばいことになっているので、覚悟して見てほしいです。
志尊:この作品には、健くんが今まで培ってきた人脈や経験、その全てを懸けている姿が映っています。撮影中、急にげっそり痩せたり、家に帰っても黙々と練習したり。本当に消えてなくなっちゃうんじゃないかと思うくらいの儚さや危うさが見えたのは初めてで、それが藤谷という役の色気や深みにつながっている。彼の集大成であり、新しい一面が見られると思います。
町田: 藤谷の持つ危うさと、撮影中の健くん自身が持つ危うさがリンクしていました。「大丈夫?倒れるんじゃない?」と思うくらいで。ここまでソリッドな役は今までの作品では見たことがなかったので、健くんが確実にこの作品の見どころです。ライブシーンも圧巻ですし、結局この「グラスハート」という作品は、佐藤健そのものなんだなと感じました。

――プロデューサーとしての仕事はいかがでしたか?
佐藤:大変なのは当たり前ですが、その責任がある分、やりがいも大きい。幸せな立場を与えてもらったなと思いながらやっていました。俳優業の延長線上というか、「いい作品を作る」という点では、どの作品でも気持ちは変わりません。ただ、プロデューサーとしてクレジットされたことで責任感はより強くなりましたね。自分が発言することで作品が良くなる余地があるならと、より積極的に関わっていきました。特に楽器演奏に関しては、自分だからこそここまで追い込めた。他の俳優さんに「ここまでやれ」とは言えないですから。そういう意味では、過去の自分にはできなかったことだと思います。
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