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キャストの85%が元収監者or関係者の“異色映画” グレッグ・クウェダー監督が明かす徹底したケア&RTAのパワー

2025年4月9日 18:00

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主演のコールマン・ドミンゴ(左)、グレッグ・クウェダー監督(右)
主演のコールマン・ドミンゴ(左)、グレッグ・クウェダー監督(右)
(C)2023 DIVINE FILM, LLC. All rights reserved.

第97回アカデミー賞で3部門にノミネートされた「シンシン SING SING」が4月11日に日本公開を迎える。映画.comでは、メガホンをとったグレッグ・クウェダー監督のオフィシャルインタビューを独占入手。丁寧な映画づくりの裏側を明かしている。

ニューヨークに実在する最重警備のシンシン刑務所を舞台に、収監者たちが刑務所内の更生プログラム「RTA」の舞台演劇に参加することで自分自身を見つめなおし、より良い人生を送っていくための生き方を模索していく。クウェダー監督は9年の月日をかけて脚本を執筆し、製作から監督まで務めあげている。

映画で描かれるRTAプログラム(Rehabilitation Through the Arts=芸術を通じたリハビリテーション)についてはちょうど9年前に知ったという。

クウェダー監督「9年前、私はカンザス州の刑務所の短編ドキュメンタリーをプロデュースしており、撮影で初めて刑務所の中に入りました。そこで若い男の人が部屋の中でレスキュードッグを育てている姿を目にしたんです。互いに癒しを得ている人間と犬の姿を見てとても驚き、その夜ホテルに戻ってから刑務所の中で同じようなプログラムが他に行われていないかどうか調べました。そうしてRTAプログラムがニューヨークの刑務所で行われているということを知りました。喜劇を上演していた記事を読みましたが遊び心やユーモアの背景に、非常に複雑な、そして暗い物語があるという対比に驚き感銘を受けました。それがこの映画のはじまりです」
ディヴァインG本人とドミンゴとクウェダー監督
ディヴァインG本人とドミンゴとクウェダー監督
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脚本も自ら執筆し、アカデミー賞の脚色賞にノミネートを果たしたクウェダー監督。この作業では、実際にRTAに参加する人々の大きな協力があったようだ。

クウェダー監督「アカデミー賞の授賞式に出席することが、幼い頃からの夢だったので叶えることができて本当に嬉しかったです。しかしそれは、映画にも登場するディヴァインGとクラレンス・“ディヴァイン・アイ”・マクリン本人の協力なくしては叶えることができなかった。脚本を執筆している最中に、RTAの関係者から彼らを紹介してもらい、実際にシンシン刑務所内で経験したことや友情についてのエピソードなどの情報を提供してくれたのです。具体的な例をあげるなら、映画の前半でディヴァイン・アイが若い白人男性から500ドルを巻き上げるシーン。あの時に使ったトリックというのは実際にクラレンスがやっていたことなんです(笑)。それからディヴァインGに関しては、仮釈放の審問会のシーンで女性から『この面接でもあなたは演技をしているの?』と心ない一言を投げかけられますが、その台詞も実際に彼が言われたことなんです」
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本作は、クラレンス含め出演するキャストの85%が元収監者および関係者で構成されているという異色の映画。映画撮影に不慣れなキャストたちを起用することについては、どのように考えていたのだろうか。

クウェダー監督「監督としての私の仕事の主要な部分は“環境を作る”ことだと考えていました。みんなを歓迎し、みんなが安心して自分をさらけ出せるような、最高の演技ができるような場所を作ること、そして願わくは映画の撮影の現場そのものがRTAプログラムと同じように喜びと温かさに満ちているものであってほしかったのです。私自身も実際にボランティアでプログラムに参加するなどして勉強をしましたが、主演のコールマン・ドミンゴが大きな助けになりました。彼らはこれまで舞台演劇をやってきましたが、カメラの前ではまた別の芝居が求められます。かつて、学校でも演技を教えた経験を持つコールマンという素晴らしいリーダーが彼らの教師にもなってくれたんです」

現場にはカウンセラーも常駐しており、出演者のケアを徹底的に行っていた。

クウェダー監督「彼らにとっては、やっとの思いで出ることができた刑務所に戻るということは、役を演じるという目的があったとしてもやはり辛いことだったと思います。なにかあった時にはすぐにカウンセリングを受けられるよう万全に準備をしていたのですが、キャスト間でお互いのサポートシステムのようなものがなんとなくできていたので、結果カウンセラーの稼働はほぼありませんでした。カウンセリングにかかることよりも、“カウンセラーが現場にいる”ということに価値があったと思っています。ロケ地である刑務所での撮影中、クラレンスは体が少し痒くなったり、彼の体がそこにいることを拒絶しているように感じることがあったと話していました。一方で、自由になった自分が今、あの当時着ていた受刑者服に袖を通すことにパワーがあるとも言っていました。受刑者服を受刑者としてではなく、外に出た自由な人として着られることにすごく意味があったようです。そして彼らはRTAプログラムをとても誇りに思っているので、刑務所を再び訪れる不快さよりも、映画を通じてRTAの素晴らしさを伝えていくという目的のほうに重きを置いていたので、私たちは互いが互いを支え合っていると感じました」
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映画では、RTAプログラムにて、仲間と一丸となって舞台を作り上げていく工程、そして演技をとおして自分の感情と向き合うことから“生き直す”ことを学んでいく登場人物たちの姿が描かれる。クウェダー監督、芸術が人に良い影響をもたらすことを信じていると語る。

クウェダー監督「この映画を作ってみて私が発見したことは、芸術は人を前進させる、ということ。芸術を取り上げてしまったら、人は後退してしまうでしょう。芸術の力はとてもパワフルです。それは、シンシン刑務所のような世界で最も危険な場所のひとつとして知られるあの場所で、RTAがその力が証明したのであれば世界中どこでも同じことが起こるはずだと、私は信じています」

シンシン SING SING」は、4月11日から東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開。

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