インド全土でリバイバル上映が話題 約30年前に製作された日本とインドの合作アニメーション「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」佐々木皓一監督がトーク
2025年3月18日 16:00

新潟市で開催中の第3回新潟国際アニメーション映画祭の「アジアの風」部門で3月16日、日本とインドの合作アニメーション「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」(1993)が上映され、佐々木皓一監督、慶應義塾大学准教授の三原龍太郎氏がトークを行った。
古代インドから語り継がれている神話をもとにした物語で、4Kデジタルリマスター版が1月24日(現地時間)からインド全土、インドにおける日本映画史上最大規模の621スクリーンで上映され、大きな話題を集めている。
まずは三原氏が「この作品は、インドでは結構有名な作品で、ある年代以上の方に関しては子どもの頃、必ずと言ってよいほど見たことがある知名度のあるアニメーション映画です。しかし、日本ではほぼ認知されていません」「ヒンズー教の2大叙事詩のひとつで、インドでは非常に有名な物語。インド側もクリエイティブにはだいぶ関わっており、ラーム・モハンさんという、インドアニメーションの父と呼ばれるほど有名な方がインド側の監督」と概要を説明する。制作費はおよそ8億円、制作陣総勢450人体制、当時としてもかなり大規模で作られた映画だった。

佐々木監督は、「マジンガーZ」「タイムボカン」「サザエさん」「おじゃまんが山田くん」など東映動画、トップクラフトでの演出作品をはじめとしたキャリアを紹介。トップクラフトを退社後、アニメーション業界で10年以上の経験を経てフリーランスとなったのち、関係者から「ラーマーヤナ」のシナリオを見てほしいと依頼されたという。
「監督やってくれって言うんじゃなくて、最初はシナリオをちょっとこ見てくれないかみたいなところから始まりました。でも最初は断ったんです。アニメーションの仕事が嫌になったのではなく。チーフディレクターになると、代理店のプロデューサーとか、テレビ局のプロデューサーとか、CM会社の偉い人とか、そういう人と付き合うことが多くなっちゃいます。どうしてもなんか人種が違うと感じて」と当時の心境を吐露。「『猿飛佐助』が終わる頃にはもう2度と監督はやりませんからと言って、演出をやっていたので、もうシナリオなんか……」と思っていたそうだが、度重なる依頼を受け、国立国会図書館でリサーチを始めた。
大長編であることからシナリオ化は難しい、1本の映画にするのは無理だが「●●外伝」などの形であれば……と伝えても、「これはインドで公開する作品で、インドの映画は2~3時間からが普通、外がものすごい暑いから映画館に涼みに来るんだと。それで、寝ない人は映画を見る。だから3時間ぐらい全然長くない」と1本の映画としてのシナリオづくりを説得されたそう。朝から夕方まで図書館に通って何カ月もかかって「ラーマーヤナ」を読み、「400本以上のテレビシリーズの演出はやっていましたが、シナリオは書いたことがなかった。でもとにかく引き受けました」と経緯を明かし、135分の映画としてまとめた。
「いくつも戦いのシーンがあり、猿の兵士の死体が山のように積まれて、そこから川のように血が流れる、そういう描写がありました。でも私はそれはアニメーションではつくれない。私は人を殺すのが大嫌いなんです。(携わった)いくつかの『名探偵コナン』も殺人を解き明かす物語ですが、嫌だった。でも、殺し合いではなく大勢が戦うようなシーンには惹かれた」といい、技術面での工程、経費面を説明し、日本のアニメーションの作品よりも予算があったことも、後押しになったという。

「原作でも、合戦シーンは見せ場というか、ハイライトなんです」と三原氏。「サル軍が戦っているところにどんどん爆弾を落としていくシーン、90年代初頭にCGでなく作られている。今ではできないのではないか。佐々木監督の欲望が炸裂しているのでは」と、本作の見どころとしてモブシーンの贅沢さを挙げる。
日本側が基本的な絵作りとアニメーション制作、音響はインドという役割分担で、インドは多言語国家であることから、インド公開版は英語で制作され、声優が先に声を吹き込んでから映像を制作するプレスコという手法がとられた。佐々木監督は「だからプレスコは具体的にどういうセリフを、どういう状況で話すのかを考えた。言葉の大きさだけなく、体の動きも。そういうことを全部考えなきゃいけなかった」とシナリオ制作の苦労も語った。

上映後は観客から様々な質問も多く寄せられ、「これだけのクオリティがあるにも関わらず、日本では残念ながらあまり知られていなかった。今こういうような形で認知されるようになってきたことは、私のようなアニメの歴史を見ているような人間にとっても、非常に意義深いこと」と三原氏は本作の重要性を語った。
第3回新潟国際アニメーション映画祭は3月20日まで開催、チケットは好評発売中。最新情報は随時公式サイト(https://niaff.net)で告知している。
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