島の若者たちの生活、アイデンティティを繊細に描くドラマ 沖縄をルーツに持つハワイ出身監督による「モロカイ・バウンド」【第2回沖縄環太平洋国際映画祭】
2025年2月28日 09:30
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沖縄県・那覇市で開催中の第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭「コンペティション長編部門」部門で、沖縄にルーツを持ち、ハワイで育ったアリカ・テンガン監督による「モロカイ・バウンド」が2月27日上映された。テンガン監督と、監督の妹でプロデューサーのサラがQ&Aに応じた。
本作は、2019年のトロントImagineNATIVE映画祭で最優秀ライブアクション短編映画賞を受賞し、オスカー候補となった自身の同名短編映画をもとに、長編作品として新たに撮影を行った。
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仮釈放中のカイノアは、息子と妻との関係を修復して自身の不在によって失われた年月を取り戻そうとする。しかし、父親になる準備ができていないほどに若い彼は、重くのしかかってくる過去を抱えながら、容易だが破滅的な選択へと誘われていく。豊かな自然と観光客が集うリゾート施設を抱える街で、生活のために犯罪に手を染めなければならなかった地元の若者の日常ややりきれなさを繊細な語り口で描く。
カイノアを演じたホールデン・マンドリアル=サントスはミュージシャンとしても活躍し、本作のために3つの楽曲を提供した。また、テンガン監督と5年間同居しており、家族ぐるみの付き合いだそう。「ホールデンと僕、それから妹のサラは同じ高校に通っていました。同じ街で一緒に育つ中で、友人たちが様々な困難に遭遇しているのを目の当たりにしてきました。短編から、その状況を投影するような作品が作れた」と、制作のきっかけを話す。
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「ほかのキャストも実際に同じ街で育った地元の友人たちを起用しています。そうすることで、物語に信憑性を持たせることができると考えました。僕の曾祖母がモロカイに長い間住んでおり、母親はそこで過ごした夏のことなど、色々な話を聞かせてくれました。モロカイに話のこの物語の種のようなものがあり、結果的に、この映画の主人公が、本来の自分たちの文化、ネイティブハワイの文化に立ち戻ろうとしたように、僕たちもモロカイと繋がりたいと考えたのです」
沖縄からの移民をルーツに持つテンガン監督。「僕にとって初めての沖縄、アジア訪問です。沖縄とのつながりは、とても特別なものだと感じています。映画の主人公が体験したように、自分のアイデンティティと再び繋がる機会が持てたという風に感じています」と述懐。サラさんは2度目の来沖で、「前回は母とともに世界うちなんちゅ大会に参加しました。沖縄にいる私たちの親戚にあたる人たちに会うことができ、それはとても素晴らしい体験でした。今回は自分たちの映画を持って沖縄に来ることができたので、それも素晴らしいことだと感じています」と語った。
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ハワイでは、プランテーション時代に各国からの移民労働者の間で発生し、定着したピジン英語と呼ばれる、独特の英語が話されている。テンガン監督は「ハワイの人間を描いた映画やテレビドラマなどで、ピジン英語のセリフがあっても、その響きは作られた感じが否めません。ですので、僕の今回のキャスティングにあたっては、ピジン英語を自然に使えるかどうかということを重要視しました」と説明する。
仮釈放中の主人公の設定については、「アメリカでは、1度でも罪を犯して犯罪者となり、前科がついてしまうと、ずっと悪者の扱いをされます。人は変われない、悪者は悪者のまま、とみなされる風潮がありますが、僕自身は人間は変われると思っています。もしかしたら、人生の最悪の瞬間があったのかもしれない。その時に罪を犯してしまったのかもしれません。人は変わりますし、悪かった時がその人自身の人生そのものを定義づけるようなことはあってはならないと考えています。この映画の中でもそのようなことを伝えたいと思いました」と作品に込めた思いを語った。なお、本作は今年の劇場公開が決定している。
「第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭」は、3月2日まで那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場などで開催。スケジュール、上映作品詳細は公式HP(https://www.cinema-at-sea.com/)で告知している。
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