【第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭】NDUにマブイ特別賞 復帰直前の沖縄、東アジアの近代民衆史描く「アジアはひとつ」を関係者が解説
2025年2月27日 10:30

沖縄県・那覇市で開催中の第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭で、特別贈賞「マブイ特別賞」を受賞したNDU(日本ドキュメンタリストユニオン)による「アジアはひとつ」が2月25日上映された。上映後には、大阪公立大学客員研究員の中村葉子氏らNDU関係者を迎えてのトークイベントが行われた。
1968年に結成されたNDUは、60年代末~70年代にかけて、日本映画やドキュメンタリーの既成概念を打ち破り、革新的な作品を生み出してきた映画制作集団。復帰前の沖縄を記録した傑作「アジアはひとつ」(72)は、沖縄の復帰に伴う集団就職や観光事業が進む様から始まり、近代日本資本主義の発展過程で犠牲になった西表炭坑夫の歴史、日本の植民地時代を生きた朝鮮人や、戦後帰国できずに放置された台湾人の姿も映す。撮影当時、日中国交回復の裏で台湾と断交になったため、寄港を許されない「密航」の台湾漁船に与那国島で遭遇し、船員らを追ってNDUは台湾へと渡る。その後台湾の山地で日本語を話し、日本兵として戦ったタイヤル民族と出会い、日本の植民地支配の痕跡を目の当たりにする。

NDU主要メンバーであった、布川徹郎氏の晩年の5年間共に活動したという中村氏。NDUは早稲田大学の中退者を中心に結成され、学生運動とベトナム反戦運動が盛んな時代に結成された、政治的な問題を扱うグループであり、1960年代の日本のヌーベルバーグの流れの末端に位置すると説明し、コザ市で売春をしていた女性たちと生活をしながら撮った「沖縄エロス外伝 モトシンカカランヌー」(71)、日本で被爆した朝鮮人たちを追った「倭奴へ―在韓被爆者 無告の二十六年」(71)など、「アジアはひとつ」以外の作品も紹介する。

そして、「映画会社や共産党系の党派的な後ろ盾は一切持たず、自主制作、自主上映という個人で映画作りを始めた。自分たちの日常を自分たちで撮る、今で言うとSNSのように自分たちで発信することの走り。その後世に与えた影響も非常に大きい」「(日本を代表する)ドキュメンタリストの小川紳介や土本典昭が国内の政治問題を扱っていたとすれば、NDUはもう少し外に目を向け、東アジアという大きなスケールで作品を描いた。土本や小川のように評価されても良かったが、フィルム状態の問題や上映機会が少なかった」と話す。

「アジアはひとつ」については、「東アジアの人々の歴史を万華鏡のように描いた」「海のロードムービー的要素が大きい」作品だといい、「NDUは日本の近代史の裏面を見てきた。東アジアの遠く離れた場所でも、日本の近代の植民地主義の暴力を目撃し、それを見つめていった稀有な映画集団だった」と振り返った。

トークには、NDU関係者の今郁義氏、田中芳秀氏も参加。今氏は「無名性に徹するのが僕らのスタートの原点。誰がカメラで、音を撮ったのか、参加した人しかわからない」とクレジット無しで集団で映画を作ったNDUの信条について語り、田中氏は「今日見てもかっこよく、アジテーションのすごい映画。既成概念を逸脱していこうという若者のパワーが感じられる。日本のドキュメンタリー史の教科書的なところにはNDUは入ってこないが、もっと評価されるべき」とコメントした。
「第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭」は、3月2日まで那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場などで開催。スケジュール、上映作品詳細は公式HP(https://www.cinema-at-sea.com/)で告知している。
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