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記憶に翻ろうされる男女の心の距離、社会との距離の描き方が素晴らしい 「あの歌を憶えている」の見どころを語り合う

2025年2月15日 05:00

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ヴィヴィアン佐藤、住吉美紀が登壇
ヴィヴィアン佐藤、住吉美紀が登壇
(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

ジェシカ・チャステインが主演、ピーター・サースガードが共演した「あの歌を憶えている」の公開記念トークショーが2月12日、東京・渋谷のユーロライブで開催。アーティストで映画批評家のヴィヴィアン佐藤が司会を務め、フリーアナウンサーで文筆家の住吉美紀をゲストに、見どころを語り合った。

本作は、米ニューヨーク・ブルックリンを舞台に、心の傷を抱えながらソーシャルワーカーとして暮らすシングルマザーのシルヴィア(ジャステイン)と、若年性認知症による記憶がいを抱えるソール(サースガード)という、“記憶”に翻ろうされながら生きる男女の姿を描くヒューマンドラマ。

画像2(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

佐藤は、本作で描かれているさまざまな事象や日々のちょっとした出来事が、「みんなが思い当たる話」だといい、住吉も「ふたりともトラウマになるような経験をして、人生の大変なことを背負い込んでいるんだけど、(観客が)いろんなところで共感できるポイントが作られていて、ふたりの気持ちに入り込めるんですよね」と、深く同意する。住吉は、同じ女性としてシルヴィアに共感する一方、若年性認知症を抱えるソールにも思いを寄せたシーンがあったという。

住吉「自分がそういう状況でなくても想像して共感してしまいました。夜中にトイレに行って、戻ろうとして、自分の部屋がどっちかわからなくなるシーンがありましたが、本当に切なくて……。もし娘の部屋を開けたら怖がられるとか、彼のなかでいろんなことを考えて廊下に座り尽くしているのかと思うと、自分にその経験がなくても、本当に一瞬一瞬、大変な日々を生きているのが感じられました。そういう“入口”の作り方が素晴らしいなと思いました」

画像3(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

劇中では、英ロックバンド「プロコル・ハルム」の名曲「青い影」(原題「A Whiter Shade of Pale」)が印象的に流れる。佐藤は「すごく印象的だし、この映画にぴったり。60年代の曲だけど、どこか郷愁があり、神話的で懐かしさを感じさせる」と語る。住吉も「音楽って、理屈を超えて、心に直で入ってくる。映画の原題は『MEMORY』で“記憶”ですけど、音楽ってまさに記憶と結びついているもので、時を超えてそこに連れていってくれる力がある。“記憶”というタイトルの映画の重要なポイントとしてこの曲を据えるって、まさしく!という感じがします」と話した。

さらに住吉は、主人公ふたりをとらえる巧みなカメラワークにも言及。「(カメラが)常に距離をおいてふたりをとらえているんですね。彼らは社会と距離をとって生きていて、距離をとらざるを得ない寂しさ、警戒心もあって、その距離が(カメラワークに)表れていると思います。それ以上、周りが近づけないふたりであることを、観客に訴えてくるし、(観客は)少し離れた距離のあるところから見ているからこそ、ふたりがグッとつながった時の絆がすごく強く感じられると思います」と熱弁し、映画ならではのふたりの心の距離、社会との距離の描き方を絶賛する。

画像4(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

本作の脚本も手がけているミシェル・フランコ監督による、映画的で絶妙な描写については、佐藤が、ふたりが出会う同窓会のシーンを例に挙げる。「お酒の飲めないシルヴィアが『早く帰りたい』という感じなんですが、そこに(ソールが)ずっとチラチラと映ってるんです。何か(シルヴィアを)見ている人がいるな……と思ったら、近づいてくる、それを1カットで撮っているんです」と、見過ごされがちな、巧みな描写を讃えた。

画像5(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

そもそも、ふたりはなぜ、互いに惹かれ合うようになったのか――? 劇中では、明確な言葉では説明されないが、住吉は「細かい説明をしないで、余白を残してくれる面白さがある」「“傷がある”というのはしんどいことだけど、傷がある者同士だからこそつながることができる時があって、傷があるからこそ、心のひだの隙間に入れたんだと思うし、ほかの人じゃダメだったんだと思う。傷付き、悲しさを抱えている同志だからこその絆があり、ふたりはそれを嗅ぎ取ったんだと思います」と指摘。佐藤も「記憶を失くしていくソールと、忘れたい記憶があるシルヴィア――ネガとポジのジグソーパズルのようなポテンシャルがあった」と、頷いた。さらに住吉は、本作のメッセージを、以下のように紐解く。

住吉「この映画を見て、自分の傷について考えるという方もいると思います。いまの日本は本当に生きづらい時代だと思うし、ニュースを見るだけで傷つくことも多い。そういう意味で、誰もが傷を持っているけど、その最たる人たちが(映画のなかで)癒しを見つける。そこに希望を置いてくれたミシェル・フランコ監督に『ありがとうございます』という気持ちになるし、(映画の結末で描かれる)ああいう希望の置き方が、すごくリアルでした。理解者がいて、人と心がつながることでこれだけ救われ、希望を持って前を向いて歩いて行けると示し、私たちをも救ってくれていると感じます」

あの歌を憶えている」は2月21日に、東京の新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で公開。

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