第25回東京フィルメックス、最優秀賞作品賞はジョージアの妊娠中絶がテーマの「四月」 インドの社会問題描く「サントーシュ」が審査員特別賞&学生審査員賞
2024年11月30日 22:29
第25回東京フィルメックスの授賞式が11月30日、東京・丸の内TOEIで開催された。フランス、イタリア、ジョージア合作、デア・クルムベガスビリ監督「四月」が最優秀賞作品賞に輝いた。
「四月」は、保守的なジョージア社会で、他に選択肢のない女性たちに対し、使命感から自らのリスクも顧みずに妊娠中絶の処置を行う産婦人科医を描いた物語。クルムベガスビリ監督は「この映画は制作に参加した全員の努力と献身の結晶です。映画を作るのは簡単なではないし、決して容易な道のりではありませんでした。特にこの映画に関しては多くの制約があり、ジョージアでこの映画の制作を手伝ってくれた人々は非常に勇敢でした。本当にありがとうございました」とビデオメッセージを寄せた。
審査員のラ・フランシス・ホイは最優秀作品賞を選んだ理由について「この大胆で冷仏な長編映画は、保守的な農村地帯で女性が直面する厳しい現実を突きつけています。彼女たちの自由は、それが体に関わるものであろうと、欲望の表現に関わるものであろうと、絶え間ない戦いなのです。監督は、骨太なリアリズムとシュールレアリズム的なホラーを融合させ、吸い込まれるような挑発的な体験を生み出しています。緻密で丹念に作り込まれた撮影は、観客の視線を捉え、私たちの視点や関わりを積極的に考えさせます。 この作品は、形式的な勝利であるとともに、計り知れない感連性と共鳴性を持つ作品です」と語った。
審査員特別賞は、インド、イギリス、ドイツ、フランス合作のサンディヤ・スリ監督による「サントーシュ」。「不可触民」である少女の死の捜査を担当することになった女性警察官サントーシュの視点から、性差別、汚職、権力闘争、そしてカースト制度や宗教によるインド社会の分断を描く。また本作は、学生審査員賞も受賞した。
ビデオメッセージを寄せたスリ監督は、26年前に英語教師として日本に滞在し、観客として山形国際ドキュメンタリー映画祭で見た作品に感銘を受け、自らカメラを回すようになり、映画の道に進むことになったという逸話を披露。「『サントーシュ』を持って日本に帰ってくることができたのは、私にとってとても意義深いことでした。インドに関する多くの問題について多くを語ると同時に、 サントーシュにとって非常に個人的な、そして非常に普遍的な映画を作りたかったのです」と作品への思い入れを語った。審査員のカトリーヌ・デュサールは「容赦ないストーリー展開のダークスリラーで、見事に演じられた女性キャラクターを通じて社会の法直性と不平等を痛烈に描き出しています。 舞台は現在のインドではありますが、世界中に蔓延している妥協と呼応しています」と評した。
そのほか、台湾、シンガポール、フランス合作、チャン・ウェイリャン監督、イン・ヨウチャオ共同監督による「白衣蒼狗」が、スペシャル・メンションを受けた。
そして、審査員でもあるロウ・イエ監督の「未完成の映画」が観客賞を受賞。ロウ・イエ監督は、講評として、審査員3人がそれぞれの意見を述べながら、審査をしていったというプロセスを説明し、「(出品作の)監督の皆さんに心から感謝をしたいと思います。監督たちの視点で世界を色々と見ることができ、我々の世界、夢を広げてくれましたことに感謝します」と結んだ。
審査員特別賞:サンディヤ・スリ監督「サントーシュ」
観客賞:ロウ・イエ監督「未完成の映画」
学生審査員賞:サンディヤ・スリ監督「サントーシュ」
タレンツ・トーキョー・アワード2024:「The Rivers Know Our Names 」(マイ・フエン・チー/ベトナム)
スペシャル・メンション:チャン・ウェイリャン監督「白衣蒼狗」
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
時代は変わった。映画は“タテ”で観る時代。
年に数100本映画を鑑賞する人が、半信半疑で“タテ”で映画を観てみた結果…【意外な傑作、続々】
提供:TikTok Japan
年末年始は“地球滅亡”
【完全無料で大満足の映画体験】ここは、映画を愛する者たちの“安住の地”――
提供:BS12
【推しの子】 The Final Act
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い!
【オススメ“新傑作”】大犯罪者が田舎へ左遷→一般人と犯罪、暴力、やりたい放題…ヤバい爽快!!
提供:Paramount+
外道の歌
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…安心・安全に飽きたらここに来い【テレビでは流せない“猛毒作”】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の伝説的一作
【超重要作】あれもこれも出てくる! 大歓喜、大興奮、大満足、感動すら覚える極上体験!
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
映画を500円で観る裏ワザ
【知らないと損】「2000円は高い」というあなたに…“エグい安くなる神割り引き”、教えます
提供:KDDI
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。