「侍タイムスリッパー」躍進中。「カメラを止めるな!」の再現なるか?【映画.com編集長コラム】
2024年9月21日 08:00
話題の映画「侍タイムスリッパー」、ようやく映画館で鑑賞しました。池袋シネマ・ロサでの公開日が8月17日なので、およそ1カ月後の鑑賞です。評判通り、なかなか楽しい映画でした。
当初、同館1館だけでの公開が、今や全国63館に拡大。この後も100館規模が確定しており、2018年の「カメラを止めるな!」の大躍進を彷彿させますが、監督もどうやらそんな展開を意識している模様です。
状況整理もかねて「侍タイムスリッパー」のここまでの軌跡を簡単にまとめてみましょう。
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池袋シネマ・ロサ1館で公開
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SNSで好評が広がり、連日満席に
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川崎チネチッタでも公開が始まる
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海外の映画祭でも観客賞を受賞
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大手ギャガが配給に参加し、全国63館に拡大公開 ← 今ココ
どうですか? 製作費300万円で最終的に興収30億円超えた「カメラを止めるな!」の軌跡を、見事になぞっていますよ。今のところ。
「侍タイムスリッパー」の製作費は不明ですが、超ローバジェットのインディーズ作品であることは、見れば誰だって分かります。そんな作品が、じわじわヒットしていって、興行収入をグングン伸ばしていく展開って最高に胸熱です。ここまででもなかなかのサクセスストーリーですが、ストーリーはまだまだ続いていきそうです。
ちなみに「カメラを止めるな!」は、冒頭から30分ぐらいがワンカット長回しのゾンビ映画で、その後、当該ゾンビ映画のメイキングオブのプロセスを紹介していくという入れ子な構成でした。けっこう凝ってましたよね。ただし、前半、ゾンビが気色悪いとか、映像が手ぶれしまくって気持ち悪いなどの意見もあったと記憶しています。
一方の「侍タイムスリッパー」は、同じく映画制作現場の物語ですが、時系列的には一本道で進みます。幕末の京都で落雷を受けた侍(主人公)が、現代の京都撮影所にタイムスリップ。周囲の助けもあって何とか現代の環境に順応し、時代劇の斬られ役としての仕事を得て、第二の人生を歩み始める。
「カメラを止めるな!」のようなハラハラドキドキ感は希薄ですが、その代わりに観客層が広く、とりわけシニアの共感を呼びそうです。内容的にも申し分なく、年末の日本の賞レースの番狂わせ的な存在になるかも知れません。タイトルは「侍タイムスリッパー」ですが、複数系にして「侍タイムスリッパーズ」でも面白かったかも知れません。いっそ「侍バック・トゥ・ザ・フューチャー」もアリじゃないかと思いましたが、さすがにこれだとB級感丸出しですかね。
海外での評判も良く、今のところRottenTomatoesでは、100%Freshになっています(2024年9月20日現在)。まだ映画祭だけの上映なので一般ユーザーのスコアはありませんが、7件ポストされているレビューは絶賛の嵐です。
2024年9月29日:シンガポール JAPANESE FILM FESTIVAL
2024年10月:オーストラリア JAPANESE FILM FESTIVAL
2024年10月:ハワイ HAWAI'I INTERNATIONAL FILM FESTIVAL
2024年10月:スペイン Sitges Festival(シッチェス・カタルーニャ国際映画祭)パノラマコンペティション
この中では、ハワイの映画祭には私も参加したことがあるのですが、侍がテーマの本作ならば、上映が盛り上がること間違いありません。あと、ホラー映画やジャンル映画の多い、スペインのシッチェス映画祭というのも面白そうですね。海外の映画祭で喝采を浴びて、アウトバウンドでも興収が上がれば最高ですね。
「カメラを止めるな!」が大ヒットしたことがきっかけで、私はこのコラムを書き始めたのですが、当時の原稿で次のように書きました。「『カメラを止めるな!』は、過去10年、いや20年遡ってみても、同様の事例にたどり着かないほど希有な成功事例です」。そこから6年経って、その事例にもっとも近い「侍タイムスリッパー」が現れました。最終的に、興収がどのレベルまで到達するかは分かりません。もしかしたら、数億円レベルで止まってしまうかも知れません。しかし、現時点で「成功事例の2件目」と断言して構わないと思います。間違いなく、映画作家を志す人たちに夢と希望をもたらす、希有な作品です。
執筆者紹介
駒井尚文 (こまいなおふみ)
1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi
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