【最終話直前!】謎の能力“●”が日本人の姿をエグり出す 「七夕の国」に込められたテーマとは?
2024年8月8日 14:00
岩明均氏のSF漫画を映像化するドラマシリーズ「七夕の国」が8月9日、第10話「祭り」で、ついに最終話を迎えることになった。謎の巨大な球体“●(まる)”によって、ビルや人が丸くエグられる怪事件が多発する日本を舞台に、祖父から受け継いだ「触れることなく、あらゆる物に小さな穴を開ける」という無益な超能力を持つ大学生・ナン丸こと南丸洋二(細田佳央太)が、人知を超えた戦いに巻き込まれる。
岩明氏の代表作といえば、過去に実写映画化され、最近では韓国版としてNetflixで実写ドラマ化された「寄生獣」。プロデューサーの山本晃久と瀧悠輔監督は、学生時代から岩明作品の大ファンだったといい、「寄生獣」と同じく人間の存在そのものに哲学的な風刺と問いかけを盛り込み、それをエンタテインメントとして昇華させる傑作「七夕の国」の実写ドラマ化に踏み切った。深夜ドラマの仕事でタッグを組んだこともある両名にとっては、悲願の企画である。
「歴史民族学的な要素とSF、ミステリーが組み合わさった絶妙な娯楽作。それに描かれる物語は時代に左右されない強さを持っている」(山本プロデューサー)
その言葉通り、本作に触れるとまず引き込まれるのが、古い風俗を重んじる閉鎖的な丸川町(丸神の里)のミステリー的な不気味さ、現実世界からはかけ離れた超常的な能力、それを繰り出す脅威・丸神頼之(山田孝之)の存在だ。同時に、物語は“役に立たない”能力を持て余す平凡な大学生・ナン丸を追って進んでいく。卒業を控えても就職の見込みは立たず、それでいて、どこか能天気なナン丸の姿は、「七夕の国」の世界観において“異質”に見えるかもしれない。
次第に明らかになるのは、ナン丸と頼之という対照的なキャラクターが、謎の球体を操る能力を持つ“窓の外に手が届くもの”であるということ。能力で人助けしたいナン丸と、自らの野望のために殺りくを繰り返す頼之。同じ能力者でありながら、それぞれの理念をもって行動する彼らの違いが、より明確に浮かび上がってくる。
そんなふたりについて、瀧監督は「真逆の選択肢をとるナン丸も頼之も、恐らく、それぞれが、その時の素直な気持ちに沿ったら、あの結論を出した、ということでしかないと思うんです」と語る。ナン丸役の細田も「どちらも自分のやっていることが正義だと思って進んでいる。ナン丸と頼之がどうして食い違っているかを紐解くと、『昔からその文化が近くにあったかどうか』という点が、最終的にふたりの考え方の違いにつながっているのかなと思います」と分析する。
すでにドラマで描かれているが、頼之とナン丸のルーツは、ともに丸神の里にある。しかし、●の能力をめぐる因習を外部に出さない、閉鎖的な里で生まれ育った頼之と、そんな文化風習と無縁なまま、外の世界で成長したナン丸では、能力に対する価値観や捉え方が全く異なっている。まもなく最終話を迎える本作の結末も、そんな両者の違いが重要なテーマになるはずだ。
そもそも、ふたりの違いは何を意味しているのか? 瀧監督は「岩明先生がどこまでそのつもりで書いておられるのかはわかりませんが、非常に“日本人”や“日本”というものをテーマにしているような感覚があります」と指摘。「原作は30年近く前の作品ですが、『きっといまも日本人って、こんな感じだよな』と。日本人はナン丸と頼之の真ん中にいて、極論を取ると、それぞれのキャラクターは日本人の両端にいるみたいなイメージで撮っています」と、不測の事態に巻き込まれる人々の顛末に、日本という国の民族性を重ねる。
「多くの日本人は、こんな危機に直面したら、きっと丸神の里の人々みたいになってしまうんじゃないかなというイメージが、実はあって。そこに対して、何が正しいわけではないですが、両方の道を示してくれているのが、ナン丸と頼之なのかなと。そういう気持ちで撮りました」(瀧監督)
細田も「考え方によっては、ナン丸と頼之は、きっとどちらも正しいので、そこはぜひ実際見た方に『自分はどっち派だ』というように意見を持っていただけると、うれしいなと思っています」と、作品が投げかける●を視聴者がどうキャッチするのか、期待を寄せている。
配信開始から約1カ月が過ぎ、圧倒的なスケール感と俳優陣の熱演に視聴者が魅了され、回を重ねるごとに、謎が謎を巻き起こす“イッキ見必須”の展開に、SNSでは考察合戦が熱を帯びている。ついに真っ向から対峙するナン丸と頼之の選択は、どんな結末を導き出すのか? きっと、見返すたびに「“ナン丸派”なのか、“頼之派”なのか」と自問自答したくなるはず。それぞれの正義を貫いて、繰り出される●が、いまを生きる日本人の姿をくっきりとエグり出すだろう。
「七夕の国」は、ディズニープラス「スター」で、独占配信中。最終話である第10話「祭り」は、8月9日の午後4時に配信開始される。
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
十一人の賊軍 NEW
【本音レビュー】嘘があふれる世界で、本作はただリアルを突きつける。偽物はいらない。本物を観ろ。
提供:東映
映画料金が500円になる“裏ワザ” NEW
【仰天】「2000円は高い」という、あなただけに伝授…期間限定の最強キャンペーンに急げ!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 NEW
【人生最高の映画は?】彼らは即答する、「グラディエーター」だと…最新作に「今年ベスト」究極の絶賛
提供:東和ピクチャーズ
ヴェノム ザ・ラストダンス NEW
【最高の最終章だった】まさかの涙腺大決壊…すべての感情がバグり、ラストは涙で視界がぼやける
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
“サイコパス”、最愛の娘とライブへ行く
ライブ会場に300人の警察!! 「シックス・センス」監督が贈る予測不能の極上スリラー!
提供:ワーナー・ブラザース映画
予告編だけでめちゃくちゃ面白そう
見たことも聞いたこともない物語! 私たちの「コレ観たかった」全部入り“新傑作”誕生か!?
提供:ワーナー・ブラザース映画
八犬伝
【90%の観客が「想像超えた面白さ」と回答】「ゴジラ-1.0」監督も心酔した“前代未聞”の渾身作
提供:キノフィルムズ
追加料金ナシで映画館を極上にする方法、こっそり教えます
【利用すると「こんなすごいの!?」と絶句】案件とか関係なしに、シンプルにめちゃ良いのでオススメ
提供:TOHOシネマズ
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ
【ネタバレ解説・考察】“賛否両論の衝撃作”を100倍味わう徹底攻略ガイド あのシーンの意味は?
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ハングルを作り出したことで知られる世宗大王と、彼に仕えた科学者チョン・ヨンシルの身分を超えた熱い絆を描いた韓国の歴史ロマン。「ベルリンファイル」のハン・ソッキュが世宗大王、「悪いやつら」のチェ・ミンシクがチャン・ヨンシルを演じ、2人にとっては「シュリ」以来20年ぶりの共演作となった。朝鮮王朝が明国の影響下にあった時代。第4代王・世宗は、奴婢の身分ながら科学者として才能にあふれたチャン・ヨンシルを武官に任命し、ヨンシルは、豊富な科学知識と高い技術力で水時計や天体観測機器を次々と発明し、庶民の生活に大いに貢献する。また、朝鮮の自立を成し遂げたい世宗は、朝鮮独自の文字であるハングルを作ろうと考えていた。2人は身分の差を超え、特別な絆を結んでいくが、朝鮮の独立を許さない明からの攻撃を恐れた臣下たちは、秘密裏に2人を引き離そうとする。監督は「四月の雪」「ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女」のホ・ジノ。