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【「バッドボーイズ RIDE OR DIE」評論】素材の味を引き立てあうチームの結束力で逆境をチャンスに変えた爽快作

2024年6月29日 22:30

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「バッドボーイズ RIDE OR DIE」
「バッドボーイズ RIDE OR DIE」

1995年のシリーズ始動から間もなく30年。過去、マイク&マーカスの前には多様な困難が立ちはだかってきたが、それにも増して近年のウィル・スミスが陥った状況は深刻なものだった。あの真っ暗闇のトンネルから這い出る最初の光が本作であるなら、そこには観客を唸らせるに足る突き抜けたクオリティが不可欠だ。

結論から言うと、今回の第4弾はシリーズで一番ノリ良く、創造性の針が振り切れた快作に仕上がった。特筆すべき点は3つ。ふたりのキャラの熟成味が増していること。とりわけマーティン・ローレンスが率先して演技や笑いの面でスミスを牽引していること。そしてベルギー出身の若手バディ監督、アディル&ビラルによるアクション表現がなおいっそう爆発していること。

ストーリーの面では、前作で命を散らせたハワード警部(ジョー・パントリアーノ)が思いがけない形でちょっとだけカムバックするのが嬉しいし画期的だ。バッドボーイズの二人はこのハワードの意志を継ぎ、街を蝕む麻薬カルテルをめぐって独自の捜査を開始。しかし敵の罠にハマり、身内のマイアミ市警から追われる立場となってしまう・・・。

二人とも昔に比べると滑舌や身のこなしのキレはなくなったが、歳相応の背伸びしない柔軟さがむしろ心地よく映える。その上、健康問題すら持ち味にし、マーカスに至っては序盤から心臓発作であの世とこの世を縦横無尽に行き交う始末。生還すると神の啓示を受けたかの如く「私は不死身である!」と根拠なき無謀さを身にまとうようになる(いつもとは攻守逆転だ)。こういった荒唐無稽さを愛嬌たっぷりに表現できるのは今や還暦に近く脂の乗り切ったローレンスだからこそ。

また、彼らは決して孤立無援ではない。若手(ハイテク捜査班)の仲間がいるし、マイクの息子だっている。何より最強の援護射撃となるのがアディル&ビラルが放つ超絶的なカメラワークだろう。長回しや主観ショットを取り入れ、特に輸送機内で巻き起こる空中アクションなどは創造性の針が振り切れていてやたらと楽しい。かつてマイケル・ベイが注いだカオスなパワーを引き継ぎつつ、それとはまた一味違う洗練されたアウトプットの形であっと言わせてくれるのがたまらない魅力だ。

巻き起こるアクションに身を委ね、頭の中を空っぽにして楽しめる―――この常套句がいっさい嫌味を持たず、むしろ勲章の如くあてはまる作品は久々である。

(牛津厚信)

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