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ピンク・フロイドの創始者で、後にドロップアウトしてしまった憎めない男の人生【映画.com編集長コラム】

2024年5月17日 13:00

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画像1(C)2023 A CAT CALLED ROVER.ALL RIGHTS RESERVED. (C)Syd Barrett Music Ltd (C)Aubrey Powell_Hipgnosis

このシド・バレットに関するドキュメンタリー「シド・バレット 独りぼっちの狂気」は、今のところ(2024年5月現在)、個人的に今年最大の収穫です。あくまで個人的な意見です。シド・バレットを知らない人には「ふーん、こんな人がいたんだ」「別に凄い人じゃないじゃん」って思われるかも知れません。

でも、ピンク・フロイドを知ってる人、その楽曲になじみのある人には、是非とも興味を持って欲しい映画です。

ピンク・フロイドは、いわゆるプログレのバンドで、1973年のアルバム「狂気(The Dark Side of the Moon)」が、世界中で、とりわけアメリカで超絶大ヒットを記録して有名になったバンドです。

「狂気(The Dark Side of the Moon)」ジャケット写真
「狂気(The Dark Side of the Moon)」ジャケット写真
Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images

3角形のプリズムを光が屈折して通過するジャケット写真、見たことありますよね? 「狂気」は名盤中の名盤で、ロックとかジャズとかクラシックの垣根を越えて世界中の音楽ファンに親しまれ、ビルボードのアルバムチャートで1位になると、その後何年にも渡ってチャートにランクし続けます。後にマイケル・ジャクソンの「スリラー」に抜かれるまで「世界でもっとも売れたレコードアルバム」だったのです。「狂気」という邦題の通り、人々の心に潜む狂気や欲望を表現したアルバムで、目覚まし時計の音やキャッシュレジスターの音を効果音として取り入れるなど、実験的なサウンドアプローチも話題になりました。ちなみに、私もいまだに愛聴しています。歌詞も全曲覚えています。

「狂気」は世界中で売れました。サウンドも終始ゴージャスで、アルバムを最初から最後まで通して聞く、コンセプトアルバムとしての満足度も高かった。狂気についての楽曲なのに、アルバム聴き終わると、何だか幸せな気分になるんですよ。

「炎 あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)」ジャケット写真
「炎 あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)」ジャケット写真
Photo by Rahman Hassani/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

そして、このお化けアルバムの次回作としてピンク・フロイドがリリースしたのが「炎 あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)」です。ここで、「狂気」で喜んでいたファンたちは冷や水を浴びせられる。

冒頭の「Shine on You Crazy Diamond(狂ったダイアモンド)」から始まって、楽曲が暗い。終始内省的で、ある種の喪失感が全編に漂っています。サウンドはさておき、歌詞がヘビーなんです。Wish You Were Hereの「You」、Shine on You Crazy Diamondの「You」とは、シド・バレットのことでした。ざっくり言えば「バンドは大成功を遂げた。しかしあなたはそこにいない。若い頃みたいに、あなたは狂ったダイヤモンドのように輝いて欲しい」というメッセージを帯びた、シド・バレットに捧げられたアルバムだったんです。アルバムのリリースは1975年。シドがバンドを去ってから、8年が過ぎていました。

画像2(C)2023 A CAT CALLED ROVER.ALL RIGHTS RESERVED. (C)Syd Barrett Music Ltd (C)Aubrey Powell_Hipgnosis
画像3(C)2023 A CAT CALLED ROVER.ALL RIGHTS RESERVED. (C)Syd Barrett Music Ltd (C)Aubrey Powell_Hipgnosis

しかし当時の私は、シド・バレットのことをほとんど知りません。ピンク・フロイドのファーストアルバム発売時に在席していたのは知っていますが、その後のシドに関するニュースと言えば、「どうやら行方不明状態らしい」とか、「激太りになっている姿を目撃された」などのネガティブなものばかり。世界で大ヒットを成し遂げたバンドが、わざわざアルバム1枚を使ってトリビュートする意味が全然ピンと来なかったんです。

ところが今回この映画を見て、当時から現在に至るUKロックの記憶で、失われたピースがガチっとはまったのです。シド・バレットは、ピンク・フロイドの圧倒的なリーダーで、作詞・作曲・ステージ演出などのすべてを担っていたことが分かります。自ずと「シド・バレット、凄いヤツだったんじゃん!」というイメージが力強く湧き上がる。ですが、そのイメージはあんまり長続きしません。「凄いヤツ」から「ダメダメ男」への転落っぷりがまた凄まじいんです。

画像4(C)2023 A CAT CALLED ROVER.ALL RIGHTS RESERVED. (C)Syd Barrett Music Ltd (C)Aubrey Powell_Hipgnosis

映画の内容についてこれ以上語るのは止めておきます。どんどん暗くなってしまうから。しかし、創造的な支柱を失ったバンドが、その後大成功するというストーリーもまた珍しい。ピンク・フロイドは、楽曲の魅力もさることながら、ステージ演出の際だったユニークさでも人気を誇っていました。ツアーをやると世界中でソールドアウトになるバンドとしても有名でしたが、そのルーツをこの映画で垣間見ることができます。

映画では、ピンク・フロイドの各メンバーや、アルバムのジャケットをデザインしていたヒプノシス(当時)の中心人物ストーム・トーガソンや、シドの交際相手だった女性たちが生前のシドについてたっぷり語っています。シドは、女性にめちゃめちゃモてていたことも分かります。

画像5(C)2023 A CAT CALLED ROVER.ALL RIGHTS RESERVED. (C)Syd Barrett Music Ltd (C)Aubrey Powell_Hipgnosis

UKロックの黄金時代を築いたひとりでありながら、その後シーンからドロップアウトしてしまったシド・バレット。こうして1本の映画になったという事実が非常に感慨深いです。彼の人生は「語られるべき人生」だったってことですからね。

(駒井尚文)
画像6(C)2023 A CAT CALLED ROVER.ALL RIGHTS RESERVED. (C)Syd Barrett Music Ltd (C)Aubrey Powell_Hipgnosis

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