「94歳のゲイ」長谷忠さんが初めての東京で舞台挨拶「みんな長生きするんやで」 「薔薇族」伊藤文学編集長とも対面
2024年4月20日 15:24
この日2回の上映は完売、満席の客席を前に長谷さんは「本当にありがとうございました。ありがとう(の言葉)以上だね。よう集まってくれたな。後悔してへん? そうでなかったらいいけど……よくこれだけのお客さんが来おったな、どうしたらいいのかわからへんわ」と、笑顔で戸惑いと喜びをあらわにした。
今回長谷さんにとって、初めての東京訪問となった。吉川監督と前日に大阪から新幹線で東京入りし、ボーンさん宅に滞在しているという。「箱根の山を越えるときに、トンネルがいくつもあって驚きました。東京はこんなに遠いところかと思いました。東京のみなさんはみんなええ顔してる。みんな長生きするんやで」とコメント。長谷さんは先日95歳の誕生日を迎えたという。
吉川監督は「長谷さんのドキュメンタリーを作りたい、と依頼した時の長谷さんの言葉が衝撃的だった。絶対に長谷さんをドキュメンタリーにしなくてはと考えた」「作り終えてから、満席の観客の前で長谷さんに舞台挨拶してほしいと思っていた」と公開初日を迎え、感慨深げに振り返る。そして、「テレビ版のDVDをお渡した時に、『これからも長谷さんの人生を伝えてほしい』と仰っていた。それがこの映画版を作る原動力になっている」と、2022年に放送されたテレビ版ドキュメンタリーに続き、本作にも登場するケアマネージャーの梅田さんの思い出を語った。
映画の後半から登場するボーンさんは、「梅田さんからバトンを渡されたのだと思いました。ほんの少しでも、長谷さんの何か支えになれれば」と、自身がかかわるボランティア活動で関西に行く際など、現在も定期的に長谷さんとの交流を続けていると明かす。
この日2度目の舞台挨拶では、日本で初めてのゲイ雑誌「薔薇族」編集長の伊藤文学さんが、長谷さんに花束贈呈を行った。伊藤さんは現在92歳、「長生きして、こういう催しに出席できたことに感激している。私はゲイではないのですが、ゲイの人たちを知り、日本最初のゲイの雑誌を382号まで出し続けました。たくさんのゲイの方々と知り合い、彼らの心の支えになれたことに感謝している。ありがとうございます」と挨拶。
長谷さんも「若い頃から『薔薇族』を読んでいた。伊藤さんがゲイではないことを知ってびっくりした。『薔薇族』から身勝手じゃないゲイの生き方を学んだ。『薔薇族』があったおかげで僕がある」と、伊藤さんとの初対面に感無量の面持ちだった。
明日、長谷さんはボーンさんとともに、東京レインボープライド2024に参加するという。「僕には異性愛者の友人が多いです。これは早いうちからカミングアウトできたから。(この映画やパレード参加が)カミングアウトにつながれば」とボーンさん。
長谷さんは「みなさんいい人ばっかり。悪い人になったらあかんよ。みんなええ顔してる……おべんちゃらやけどな(笑)」と最後に大阪ノリのジョークで会場の笑いをとり、吉川監督は「生きることは素晴らしい、と思える作品になっている。今苦しんでいる人、悩んでいる人たちにもいつか希望があると、この作品を通して伝えたい。そして差別や偏見と闘ってきた人たちの記録を見てほしい」と呼びかけていた。「94歳のゲイ」は公開中。
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