エストニアで同性婚を認めさせる原動力となった映画「Firebird」予告 エリート将校と二等兵の愛を描く
2024年1月11日 10:00

1970年代後期の冷戦時代、ソビエト占領下のエストニアを舞台に、エリート将校と二等兵の愛を描く「Firebirdファイアバード」の予告編と、ペーテル・レバネ監督と主演のオレグ・ザゴロドニーのビデオメッセージがお披露目。あわせて、ふたりが2月6日に来日することも決定した。ウクライナ・キーウ出身のザゴロドニーは、ウクライナが戦禍にある現在、海外渡航が非常に困難ななかで、訪日を果たす。
本作は、ロシアの無名の俳優セルゲイ・フェティソフさんが書き遺した回想録「ロマンについての物語」を、「ペット・ショップ・ボーイズ」の「Together」MVなどで知られるエストニア出身のレバネ監督が映画化。イギリスの注目俳優トム・プライヤーと、ザゴロドニーが共演した。レバネ監督はプライヤーとともに、フェティソフさんへのインタビューを通して脚本を開発。2017年にフェティソフさんが65歳の若さで逝去したあとも、その遺志を継ぎ、映画を完成させた。
(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED/ReallyLikeFilms予告編には、緊張感が漂うエストニアで、ふたりの愛が深まる過程が映し出されている。モスクワで役者を夢見る若き二等兵セルゲイ(プライヤー)は、兵役を終える日を迎えようとしていた。ある日、パイロット将校のロマン(ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属される。セルゲイは、ロマンの毅然として謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われ、一方のロマンも、セルゲイと目が合った瞬間、体に閃光が走るのを感じていた。
写真という共通の趣味を持つふたりの友情は、やがて愛へと変わるが、当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処される運命だった。さらに、女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐が、ふたりの身辺調査を始める。映像の最後には、「火・熱・太陽の象徴である“火の鳥”(ファイアバード)には、永遠の命と大きな愛の力が宿っている。しかしその圧倒的な強さゆえ、触れると火傷をすることもある」という言葉が切り取られている。
(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED/ReallyLikeFilms
(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED/ReallyLikeFilmsビデオメッセージは、レバネ監督はロンドンで、ザゴロドニーはキーウで、数日前に撮影したもの。ふたりとも、来日の喜びを語っている。レバネ監督は、かねて同性婚を国に認めさせるためのさまざまなロビー活動に参加していた。14年には、地元のインタビューに、以下のように答えている。
「今日、エストニアは人種と寛容、あるいは国家が禁止し、侵害し、命令するもののうち、どの価値観が正しいと考えるかを選択しなければならない時に来ています。私は今ロンドンに住んでいますが、イギリスでも同性婚法案について活発な議論が展開されています。なぜなら、この春に女王が結婚法の最終版に署名したからです。それは性別に関係なく全ての人々に結婚の権利を与えるものです。エストニアでは住民投票どころか議論することさえ許されない」
(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED/ReallyLikeFilmsしかし7年後の21年、エストニアで本作が、LGBTQ映画として初めて一般劇場公開されると、コロナ禍にも関わらず大ヒットを記録。同時に配信も行った結果、同国で公開された全ての映画のなかで、4番目に収益をあげた作品となった。本作のメッセージは大きな反響を呼び、公開から2年後の23年3月には、国会で同性婚法案が議決され、24年1月に施行されるに至った。エストニアは、バルト三国はもちろん、旧ソ連圏では初、世界で35カ国目の同性婚承認国となった。
「Firebirdファイアバード」は、2月9日から東京・新宿ピカデリーほかで全国公開。2月6日に来日するレバネ監督とザゴロドニーは、東京・横浜・名古屋・京都・大阪などで行われる劇場舞台挨拶に登壇する。
(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. ALL RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms
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