ケリー・ライカート監督が語る日本劇場初公開作「ファースト・カウ」、ミシェル・ウィリアムズとのタッグ作「ショーイング・アップ」
2023年12月21日 16:00
2020年・第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作で、アメリカのインディペンデント映画界で高く評価されるケリー・ライカート監督が、西部開拓時代のアメリカで成功を夢みる2人の男の友情を、アメリカの原風景とともに描いたヒューマンドラマ「ファースト・カウ」が、12月22日公開される。
また、2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作で、ミシェル・ウィリアムズと4度目のタッグを組んだ「ショーイング・アップ」も、特集「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」も上映と、同時期に2作が日本のスクリーンで紹介されるライカート監督がオンラインインタビューに応じた。
「ファースト・カウ」は西部開拓時代のオレゴン州が舞台。アメリカンドリームを求めて未開の地へ移住した料理人クッキーと中国人移民キング・ルーは意気投合し、ある大胆な計画を思いつく。それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である牛からミルクを盗み、ドーナツをつくって一獲千金を狙うというビジネスだった――という物語だ。
「ファースト・カウ」は、特に思い入れの深い作品です。今まで撮った作品のなかで、最も楽しんで撮ることができた作品で、最も短期間で撮り上げた作品でもあります。私の住まいの近くで撮影し、秋でしたが厚着をすれば寒さも苦にならない時期でした。週末を挟み、週5日の撮影ができたことも良い経験でした。
原作小説はおよそ40年間を描く壮大な物語で、オレゴンから中国に渡ったりもします。時代も現代から1920年を行ったり来たりするので、全編を映画化するとなると大規模で相当な費用が掛かります。ですから、我々は1820年代の話に絞りました。そして、小説には牛が登場しません。原作者で、今回共同脚本のジョナサン・レイモンドが、牛のアイディアを出してきて、それが映画化のきっかけになり、映画に収まりきるキャラクターとエピソードを新たに構築しました。牛のミルクを盗むというエピソードは映画オリジナルのものです。
登場人物を構築するにあたって性別は関係ないですが、「ファースト・カウ」は1820年代という時代設定なので、実際に存在していた人間を考えると、いわゆるインディアン、アメリカ先住民の女性以外の女性が登場することは考えづらく、男性ふたりがメインになっています。「ショーイング・アップ」では現代女性ふたりの内面の複雑さにより重きを置いています。
1820年代と現代という時代の違いもありますが、撮影や編集をしている中で、これは自分らしいな、と気づくこともあります。「ファースト・カウ」はほぼ屋外撮影ですが、「ショーイング・アップ」は私の作品の中で最も屋内撮影が多かった作品です。コロナ中の撮影もありましたし、登場する動物も異なるので、とても良い経験になりました。
まずは彼女が脚本に興味を示してくれるのがありがたいことなのですが、そしてとても気が合うので一緒に仕事をするのが楽しく、楽なのです。ミシェルはとても仕事熱心で、体の動きを必要とするような場面も果敢に挑戦してくれるのです。一般的に俳優は、自分が与えられるパートが小さいと、その中で演技の幅を試すようなことはしないのですが、彼女はいろいろとチャレンジして、ベテランとなった今でも成長し続けています。声の出し方、体の使い方……新しいことに挑戦する姿が素晴らしいと思います。
今回、映画祭期間中の取材は受けずに、迷子になりながら初めての東京や京都の街を歩き回っていました。私の住むポートランドの人たちは、とても日本が好きなのです。日本の方もポートランドを愛してくれているので、相思相愛の関係だと思います。東京国際映画祭では特に小津安二郎の作品を見ていました。どの作品も素晴らしくて、無声時代の作品も見られてうれしかったです。今回、日本訪問への期待を大きくしていましたが、実際はそれ以上のものでした。とにかくアメリカとは全く違う場所だという印象で、毎分ごとに新しいものを発見できた素晴らしい滞在でしたね。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
不都合な記憶 NEW
【伊藤英明演じるナオキがヤバ過ぎ】妻を何度も作り直す…映画史に残る“サイコパス”爆誕!?
提供:Prime Video
ビートルジュース ビートルジュース NEW
【史上初“全身吹替”が最高すぎて横転】近年で最も“吹替が合う”映画が決定…全世代、参加必須!
提供:ワーナー・ブラザース映画
サウンド・オブ・フリーダム
【子どもが売られている…】おぞましい児童性的人身売買を追い、異例の大ヒットとなった衝撃作
提供:ハーク
憐れみの3章
【脳をかき乱す“傑作”】異才が放つ“新・衝撃体験”…不思議と何度も観たくなる快感と混沌と歓喜
提供:ディズニー
ヴェノム ザ・ラストダンス NEW
【映画.com土下座】1回観てください…こんな面白いのに、食わず嫌いで未見は本当にもったいない!
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
休暇をもらって天国から降りてきた亡き母と、母が残したレシピで定食屋を営む娘が過ごす3日間を描いたファンタジーストーリー。 亡くなって3年目になる日、ポクチャは天国から3日間の休暇を与えられ、ルール案内を担当する新人ガイドととも幽霊として地上に降りてくる。娘のチンジュはアメリカの大学で教授を務めており、そのことを母として誇らしく思っていたポクチャだったが、チンジュは教授を辞めて故郷の家に戻り、定食屋を営んでいた。それを知った母の戸惑いには気づかず、チンジュは親友のミジンとともに、ポクチャの残したレシピを再現していく。その懐かしい味とともに、チンジュの中で次第に母との思い出がよみがえっていく。 母ポクチャ役は韓国で「国民の母」とも呼ばれ親しまれるベテラン俳優のキム・ヘスク、娘チンジュ役はドラマ「海街チャチャチャ」「オーマイビーナス」などで人気のシン・ミナ。「7番房の奇跡」「ハナ 奇跡の46日間」などで知られるユ・ヨンアによる脚本で、「僕の特別な兄弟」のユク・サンヒョ監督がメガホンをとった。劇中に登場する家庭料理の数々も見どころ。
「シチズンフォー スノーデンの暴露」で第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したローラ・ポイトラス監督が、写真家ナン・ゴールディンの人生とキャリア、そして彼女が医療用麻薬オピオイド蔓延の責任を追及する活動を追ったドキュメンタリー。 ゴールディンは姉の死をきっかけに10代から写真家の道を歩み始め、自分自身や家族、友人のポートレートや、薬物、セクシュアリティなど時代性を反映した作品を生み出してきた。手術時にオピオイド系の鎮痛剤オキシコンチンを投与されて中毒となり生死の境をさまよった彼女は、2017年に支援団体P.A.I.N.を創設。オキシコンチンを販売する製薬会社パーデュー・ファーマ社とそのオーナーである大富豪サックラー家、そしてサックラー家から多額の寄付を受けた芸術界の責任を追及するが……。 2022年・第79回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。第95回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞にノミネート。
「トランスフォーマー」シリーズで人気のジョシュ・デュアメルが主演するサスペンスアクション。消防士のジェレミーは、冷酷非情なギャングのボス、ヘイガンがかかわる殺人事件現場を目撃してしまい、命を狙われる。警察に保護されたジェレミーは、証人保護プログラムにより名前と住む場所を変えて身を隠すが、それでもヘイガンは執ようにジェレミーを追ってくる。やがて恋人や友人にまで危険が及んだことで、ジェレミーは逃げ隠れるのをやめ、大切な人たちを守るため一転して追う者へと変ぼうしていく。ジェレミーを守る刑事セラ役でブルース・ウィリスが共演。