【「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」評論】妥協なし! 不可能を超えたアドベンチャー体験に大興奮の2時間43分
2023年7月23日 12:00

まったく、このシリーズに「妥協」という言葉は通用しないのだろう。我々はトム・クルーズが毎度、率先して限界越えする姿に驚かされてきたが、今回の完成度は過去作を凌ぐ。既に広く知られる「崖からの大ジャンプ」も確かに秀逸なのだけれど、筆者がそれ以上に恐れ入るのは、やはりトムとクリストファー・マッカリー監督が見せる研ぎ澄まされたコンビネーションだ。他の追随を許さぬ究極のエンターテイナーと、映画界最強のストーリーテラー。二人が呼吸を合わせて足を踏み出すと、現代で最もスリルとエモーションに富んだシークエンスが次々と生まれる。
それは例えば序盤、政府情報機関の要人たちが現状について語り合うシーンでも顕著で、マッカリーはここにひと工夫加えることで得体の知れない緊張感をじわじわと充満させる。動きが少ないシーンでも観客の目と心を惹きつけるのだから、やがて巨大舞台へ場を移すとどれほどの緊迫感に包まれるのか。期待は否応なく高まるばかりだ。
物語は様々な思惑を持った登場人物が入り乱れ、「あるアイテムを追え!」という伝統的なマクガフィン構造で突き進んでいく。砂漠で銃撃戦を繰り広げ、巨大空港内を全力で疾走し、ローマでは硬軟織り交ぜたカーチェイスが勃発……。どの場面にもシリーズ独特のタイムリミット感があり、メインテーマがもたらす破格の高揚感がある。
都市から都市へと移動するたび、その土地がもつ特色を高濃度でストーリーへと循環させる語り口の重厚さには舌を巻くばかり。さらにお馴染みのメンバーが相変わらずの存在感と絆とでミッションを支える一方、今回初登場となるヘイリー・アトウェルの役どころが颯爽としていて素晴らしい。グレースという役名にどこか往年の名女優を思わせる凛とした響きすら感じるほどだ。
CGで何でも描けて、AIが人間に取って代わろうかという現代に、本作は“生身の躍動”を実感させてくれるはず。不可能を超越するアクション同様、キャラとキャラが起こす化学反応もまたとびきりの生命力と、予想を超えたダイナミックな展開を作品にもたらしてやまない。トムが粉骨砕身で作り出す映画はやはり観る者の心を確実に捉え、そして魂の深部へと伝染する。気力がみるみる満たされていくこの感じ。鑑賞後、理由もなく全力で走り出したくなる映画も、実に久々である。
(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
人生にぶっ刺さる一本
【すべての瞬間が魂に突き刺さる】どうしようもなく心が動き、打ち震えるほどの体験が待っている
提供:ディズニー
ブルーボーイ事件
【日本で実際に起きた“衝撃事件”を映画化】鑑賞後、あなたは“幸せ”の本当の意味を知る――
提供:KDDI
プレデター バッドランド
【ヤバすぎる世界へようこそ】“最弱”ד下半身を失ったアンドロイド”=非常識なまでの“面白さと感動”
提供:ディズニー
あまりにも凄すぎた
【“日本の暗部”に切り込んだ圧倒的衝撃作】これはフィクションかノンフィクションか?
提供:アニモプロデュース
盤上の向日葵
【「国宝」の次に観るべき極上日本映画に…】本作を推す! 壮絶な演技対決、至極のミステリー、圧巻ラスト
提供:松竹
てっぺんの向こうにあなたがいる
【世界が絶賛の日本映画、ついに公開】“胸に響く感動”に賞賛続々…きっとあなたの“大切な1本”になる
提供:キノフィルムズ