過去映像を一切使わぬ「Dr.コトー診療所」の凄味【ドラマシリーズあらすじも完全網羅】
2022年12月17日 12:00
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吉岡秀隆さん主演の名作ドラマを映画化し、16年ぶりに製作された「Dr.コトー診療所」が12月16日、全国で封切られました。レギュラーキャストがこぞって復帰したことでも大きな話題を呼んだ今作ですが、ドラマを見ていなかったからといって躊躇(ちゅうちょ)する必要はありません。今回の記事では、ネタバレすることなく今作の魅力、見どころを紹介します。
「Dr.コトー診療所」は山田貴敏氏の同名漫画を原作に、2003年、04年、06年にドラマ化された名作の16年ぶりの続編にして、完結編。日本の西端に位置する自然豊かな孤島・志木那島を舞台に、たった1人の医師として島民たちの命を背負ってきたコトーこと五島健助と、島の人々との関わり合いを通して命の尊さを描いています。
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16年ぶりだから、心が揺さぶられるわけではありません。今作を今作たらしめている所以は、過去を述懐するのではなく“現在(いま)”にフォーカスを当てている点です。スペシャルドラマを含めれば24話分のアーカイブがあるのにもかかわらず、過去の映像を一切使うことなく構成されていることからも、作り手たちの矜持がうかがえます。裏を返せば、芸能界を引退していた富岡涼が今作だけのために俳優復帰を果たしたほか、レギュラーキャスト全員はもちろん、今や管理職になっている当時現場の最前線に立っていたスタッフが再び離島に再結集したからこそ、作品の世界観を一気に呼び戻すことに成功し、過去映像に頼る必要がなかったともいえます。
さて、ドラマシリーズでどのようなエピソードが描かれていたのか、簡単に振り返ってみましょう。
ドラマは、東京の大学病院で外科医をしていた五島健助が星野正一と共に漁船に乗り込み、本土(沖縄本島)から6時間かかる志木那島を目指すところから始まる。看護師の彩佳や役場の職員で診療所事務長の和田をスタッフとして張り切る五島だが、それまでの経緯から島の医師を信用しない島民たちは診療所に全く寄り付かない。
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最初の患者となった島の少年から感謝のしるしとして贈られた診療所の旗に「ドクターコト―診療所」と記されていたため、五島は島民からコトーと呼ばれることになる。コトーの医師としての技量の確かさと誠実な人柄は次第に島民に受け入れられ、交流を深めていく。そんななか、コトーが大学病院を辞めるきっかけになった医療事故の関係者・巽謙司が来島し、最終話に向けて島民を巻き込む大波乱となる。
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島を挙げての祭りの最中に星野昌代が家で倒れているのを、診療所から戻った娘の彩佳が発見する。コトーの緊急手術により一命を取り留めたものの、脳内出血の後遺症が残り、右半身が不自由になってしまう。昌代の異変に気づけなかったことで、夫の正一や彩佳は後々まで自分を責め続けることになる。
一方、コトーに憧れ医師を目指す島の少年、原剛洋は東京の私立中学受験を決意する。漁師では十分な学費が得られないと考えた父の剛利は、漁船を手放して本土に出稼ぎに行く決断をする。
本土から志木那島への船内でひとりの女性が数人の男に絡まれていたため、村長が仲裁に入るが突き飛ばされた衝撃で頭を強打。港で待機していたコトーらが診療所へ搬送する。理学療法士の資格取得のため上京した彩佳に代わり、看護師として赴任する予定の仲依ミナも成り行きから緊急手術に立ち会うが、初めて医療現場を直視したショックで気を失ってしまう。
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そんな折、彩佳が乳がんを患っていることが発覚。家族や島民に心配をかけまいと東京で独りで手術を受ける決意をするが、主治医の鳴海から連絡を受けたコトーは電話で彩佳の本心を聞き、彩佳の手術のために東京へ赴く。自身の妻を執刀した過去を持つ鳴海から、身内同然の彩佳を執刀することへの覚悟を問われたコトーは一瞬動揺するが、手術は無事に成功。コトーは再び島の診療所で日々、治療に奮闘する。
映画では、「Dr.コトー診療所2006」から16年後を描いており、コトーと彩佳が結婚し、2人の間にはもうすぐ子どもが誕生するという設定で始まります。志木那島でも日本の他の地域と同じく過疎高齢化が進む中、島民たちの誰もがコトーの診療所があることに安心し、変わらぬ暮らしを送り続けていましたが、診療所の平穏な日常に、ある変化が忍び寄ってきます……。
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16年という年月が、しっかりと刻まれている点も見逃すことができません。お馴染みともいえる、コトーの自転車での訪問診療のシーンでも、それは見て取れます。吉岡さんの髪には白いものが増えましたし、キャストひとりひとりが16年分の経験を全身に刻み込んでいます。コトーが乗る自転車は、電動アシスト自転車になっている点にお気づきの方も多いのではないでしょうか。
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それでも、ひとたび吉岡さんが与那国島でのロケで自転車にまたがると、島民から「あ! コトー先生だ!」と声をかけらえるひと幕があったと聞きます。吉岡さんも、「自転車で少し走ってみたら、お母さんと小さいお子さんが『コトー先生!』と呼びかけてくれて……。もう16年も経っているのに、こんなに幼い子がそう言ってくれるのがすごく嬉しかったです。ずっとこの島ではコトー先生はコトー先生なんだと思うと、とても嬉しかったですし、頑張らなくちゃいけないと思いました」と語っています。
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今作でプロデューサーを務めた森谷雄氏は、メガホンをとった中江功監督とは助監督時代からの付き合いで、35年来の友だと言います。20年の春ごろに中江監督から参加要請を受けた際、「なぜ映画にするのか?」という問いかけを突き詰め、「世の中で医療に携わる人たちへのエール。そして、その尊さを知った人々への生きるメッセージを描けたら…」という思いで参加を決めたそうです。脚本開発に2年以上かけるなど、作り手たちがひとつになって届ける「生きる勇気」を劇場でご確認ください。
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