【「ソウル・オブ・ワイン」評論】本物とは何かを味わうことができる、ワインへの愛で満たされたドキュメンタリー
2022年10月30日 16:30

映画を見ていて、こんなにもワインが飲みたくなったことはない。それは世界最高峰と言われる、1本数百万円も下らない高級ワインの代名詞であるロマネ=コンティをはじめ、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ムルソー、ヴォルネイなど、世界中の人々を魅了し続けるブルゴーニュワインを、筆者が飲んだことがないことも大きく起因している。しかし、手の届かない高級ワインを飲んでみたいという欲望をかきたてる以上に、このドキュメンタリーが、ワインへの愛で満たされているからなのだろう。
世界最高峰のワインを生み出すワイン愛好家の聖地、“神に愛された土地”と言われる、フランス、ブルゴーニュ地方。1年を通じて名だたる畑を守る生産者たちがワイン造りに魂を注ぐ。マリー=アンジュ・ゴルバネフスキー監督は、なかなか見ることのできない貴重な舞台裏、ブドウ畑と人間の何世紀にもわたる関係にスポットを当てている。そして、世代を超えてブドウ畑を守り続け、最高級ワインが生まれるプロセス、偉大なワインを追い求めて受け継がれてきた技と知恵を、四季を通して記録しており、“世界最高峰のワイン”の理由を知ることになる。
技と知恵が受け継がれてきたとはいえ、さすがに世界に流通させるためには自動化(機械化)されている工程もあるのではないかと思ったが、最初の畑の耕しから樹の剪定、摘み取り(収穫)、醸造、樽づくり、貯蔵に至るまで極力昔ながらのやり方で丹念に“魂を込めて”造られている。生産者や樽職人たちが土壌や生育環境といった自然の真理について、有名ソムリエや醸造学者たちがワインやその歴史について語る内容は実に深く、哲学的でさえある。そんな言葉とともに、四季を通してワインができるまでを我々は体験することになるのだ。
さらに、ゴルバネフスキー監督の眼差しは、どこか詩的で芸術的であり、ブルゴーニュ地方の自然を記録した映像は息を呑む美しさで、行ってみたいと思わせるほど。ワイン造りは大変な作業であろうが、伝統を受け継いできた生産者たちの表情は自信と喜びにあふれているように見え、まさに彼らのソウル(魂)を知れば、そんなワインを飲んでみたいと思わずにはいられない。終盤に、パリでビストロ、レストランを経営する日本人のオーナーソムリエ、オーナーシェフの二人が1945年もののジョルジュ・ルーミエを飲むシーンが秀逸だ。本物とは何かを味わうことができる作品である。
(C)2019 - SCHUCH Productions - Joparige Films - 127 Wall
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

アマチュア
【最愛の妻がテロリストに殺された――】殺しの経験ゼロ、しかし“最高の頭脳を持つ男”の復讐が始まる
提供:ディズニー

HERE 時を越えて
【何だこのすごい映画は!?】まるで動かない「バック・トゥ・ザ・フューチャー」 ラストの多幸感よ…
提供:キノフィルムズ

異常者×異常者×異常者のヤバい映画
【アクション好きに激烈オススメ】とにかくイカれてる!ハチャメチャに次ぐハチャメチャが痛快すぎた!
提供:KADOKAWA

絶対に絶対に絶対に“超ネタバレ厳禁”
【涙腺崩壊、感情がぐちゃぐちゃで大変】早く話したいから、お願いだから、みんな早く観てほしい。
提供:リトルモア

映画を安く観たい人、絶対にチェックして!
【映画2000円は高すぎる!!?】知らないと損な“1250円も安く観る裏ワザ”、ここに置いときます
提供:KDDI