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マニラでホームレス、高層マンションでセカンドライフ フィリピン在住邦人2人のドキュメント「ベイウォーク」12月24日公開

2022年10月4日 16:00

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「なれのはて」粂田剛の監督作
「なれのはて」粂田剛の監督作
(C)Uzo Muzo Production

昨年12月に公開され、話題を集めたフィリピンに生きる4人の困窮邦人のドキュメンタリー「なれのはて」。のべ7年の歳月をかけてフィリピンでカメラを回し続けた粂田剛監督が、「なれのはて」に収録できなかった人物たちにフォーカスを当て、再構成した作品「ベイウォーク」が、12月24日から公開される。

「世界三大夕日の名所」の一つと言われるマニラ。そんなマニラ市民の憩いの場が、海沿いに整備された遊歩道、ベイウォークだ。夕方までは、海沿いのそぞろ歩きを楽しむ家族連れや、夕日を眺めるカップルたちで賑わうが、夜になると、どこからかホームレスたちが集まる。

その中には、ひとりの日本人がいた。赤塚崇さん(58歳)。裏稼業で幅を利かせた生活をしていたもののフィリピンで騙されて一文無しに。日中は露店のタバコ売りの手伝い、夜はベイウォークで路上生活をしている。愛嬌のあるその人柄が幸いしてか、フィリピン人に助けられてばかりの毎日を送っている。

一方、ベイウォークにほど近い高層アパートメントに入居した関谷正美さん(62歳)。日本で年金生活を送っていた関谷さんだったが、楽しい老後を夢見て「呑む・打つ・買う」が歩いてできるフィリピンに移住を決めた。ベランダから海を臨む部屋で、セカンドライフをスタート。しかし、フィリピン人をなかなか信用できない関谷さんは、何をやってもうまくいかない。そのうちに、関谷さんは部屋に閉じこもってしまうようになる。

マニラの中心街、数100メートルしか離れていない場所で、対照的な暮らしをしている2人に共通しているのは、50代を過ぎて身寄りのない海外で自分なりのリスタート=再起をかけて生きているということ。その姿は観る我々自身にも、いつかくる老後の生き方を捉えなおすきっかけになるに違いない。

12月24日から新宿K’s cinemaほか全国公開。

粂田剛監督コメント
ベイウォーク」公開に当たって
日本から海外に飛び出した人たちの“その後”に興味があった。
彼らがそこでどんな暮らしをして、何を食べ、周りにはどんな人たちがいるのか…その生活は幸せか?それとも不幸か?今の自分の境遇を嘆いているのか、満足しているのか、または諦めているのか?そして故国日本に対してどんな感情を抱いているのか?彼らのことを知りたかった。それを何らかの作品にして残したかった。
2012年から 2019年の間、カメラを持って20回ほどフィリピンを訪れ、多くの日本人に会った。ほとんどが男性だった。犯罪を犯して逃げてきた人、フィリピン人女性と結婚し移住した人、女性を追ってやって来てどん底に落ちた人、貧困の中家族を作り暮らしている人…当たり前だが一人ひとりにそれぞれの人生があり、それぞれの思いがあった。撮影させてくれた人も、撮影はダメだという人もいた。次に行った時は行方不明になっていた人もいた。継続的に撮影させてくれた人は7人だった。その中の4人を主人公に「なれのはて」という映画を作った。映画は第3回東京ドキュメンタリー映画祭でグランプリ&観客賞を受賞し、一般劇場公開されることになった。素直に嬉しかったが、そのあと、多少の割り切れなさが残った。映画に入らなかった人たちのことだった。長年にわたって撮影させてくれたのに、作品に結実しなかった人たち…彼らに申し訳なかった。彼らのためにもう1本、映画を作るべきだと思った。誰にも評価されなかったとしても。
そんな思いで完成させたのが今回の「ベイウォーク」だ。
この映画には、マニラで無一文になりホームレスにまで落ちぶれた男性と、老後をフィリピンで過ごそうと移住してきた男性が登場する。彼らの生活圏はほぼ重なっているが、互いの存在を知ることはない。片やストリートを這うように生き、もう片方は高層マンションにひとり暮らす。彼らの行く末がどうなるのかは…ぜひ映画をご覧になってほしい。
自分がなぜ、日本を捨て海外に暮らす人間たちに惹かれたのか。それまでの暮らしをリセットして新しい人生を生きる彼らが羨ましかった?そう思ったこともあった。どん底で生きる彼らの暮らしの中に、むき出しの「生」を感じた?そんな瞬間もあったが、それだけではない気がした。
7年間取材して2本の映画を作り、彼らのことを知るための長い旅はいったん終わったが、答えは、未だに分からない。

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