シャルロット・ゲンズブール初監督作は母、ジェーン・バーキンのドキュメンタリー チューリッヒ映画祭でキャリア語る
2022年9月30日 15:00
第18回チューリッヒ映画祭で、シャルロット・ゲンズブールが傑出した才能に与えられるゴールデン・アイ・アワードを受賞した。過去にはジェイク・ギレンホール、クリステン・スチュワート、オリビア・コールマンなどが授与されている。
アーティスティック・ディレクターのクリスチャン・ジュンゲンは、「彼女はヨーロッパ映画のなかで、もっとも多面的なキャラクター・アクトレスのひとり。勇気ある選択で知られ、どんなジャンルにおいても役に人間的な深みと真実味を与えることができる。そのカリスマ性で観客を虜にし、映画全体を牽引できる数少ない役者のひとりです」と賞賛した。
授賞式で舞台にあがったシャルロットは感動しながら謙虚に感謝を表し、「これまでまったくキャリアを築くということを考える必要なくやってこられたのは、とても恵まれていたと思います。すべては幸運に依るものでした。好きなことだけをやっていられる毎日はとても恵まれています。瞬間を掴みとり、驚きを忘れず、できるだけ自身でコントロールをしないこと、それこそわたしが望んでいることです」と語った。
この日、マスタークラスのトークも開催したシャルロットは、およそ45分にわたり、俳優になるきっかけから、その後キャリアの転機となったラース・フォン・トリアーとの出会いと度重なるコラボレーション、さらに昨年彼女が初監督をした、母ジェーン・バーキンに関するドキュメンタリー、「ジェーンとシャルロット(仮題)」のことと両親に対する思いを語った。
トリアーについては、「わたしにとって、ラース前とラース後で分けられるほどに異なります。彼は毎回異なるペルソナを見せてくれる人で、つねに驚きと刺激をもたらしてくれるとともに、俳優に多くの自由を与えてくれる。わたしは自分が与えられるものすべてを与えたつもりですが、それでも役を作りあげたのはわたしではなく、ラースです。『ニンフォマニアック』の撮影では、わたしは義父を亡くしたばかりだったのですが、ラースはとても理解があって優しかった。撮影はとても楽しかったですよ! わたしの足元に2人の男性を挟んだラブシーンなど、あまりに過激ゆえにコミカルで、わたしもラースも笑っていました」
「ジェーンとシャルロット(仮題)」については、ジェーン・バーキンの日本ツアーに同行してカメラを回したものの、その後ジェーンがためらったため中断し、2年後に彼女の意向で再開したことを打ち明けた。本作は日本でも来年公開が予定されている。
チューリッヒではさらに、彼女がレベル・ウィルソンやトリーヌ・ディルホムと共演したセリン・ジョーンズとトム・スターンの共同監督作、「The Almond and the Seahorse」がワールドプレミアで披露され、ジョーンズ監督、ウィルソン、ディルホムも顔を揃えた。コロナ禍にリバプールで撮影された本作についてシャルロットは、「撮影日数よりホテルに拘束されている日の方が多かったですが(笑)、みんなと家族のような結束を感じられ、とても素敵な経験でした」と振り返った。
本作はシャルロットとディルホム、ウィルソンとジョーンズ扮する2組のカップルのそれぞれ片方が、脳障害による記憶喪失の問題を抱え、カップルがいかにそれを乗り越えていくかがテーマのシリアスなドラマ。ウィルソンはこれまででもっともシリアスな役柄に挑み、シャルロットはレズビアンの役柄を自然体で演じている。彼女自身、かつて水上スキーの事故で生死をさまよった恐怖が、テーマを身近に感じるのに役立ったと語った。
今後はジャン・デュジャルダンと共演するAmazonプライム・ビデオのシリーズがある他、ダニー・ブーン監督、主演のコメディを撮影予定で、ますます多忙な活躍をみせてくれそうだ。(佐藤久理子)
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