【ホラー映画コラム】「生き人形マリア」これまでにない凄まじいインパクトを放つ人形ホラー
2021年8月28日 21:00
Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「OSOREZONE」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は、食べ食べさんが「間違いなく一見の価値はある」と太鼓判を押す「生き人形マリア」をご紹介。
チャッキーにアナベルなど、人形を恐怖の対象としたホラー作品はこれまでに数多く作られてきた。一口に人形ホラーといっても、人形そのものが動いて人を襲ったり、人形に宿った呪いが周りの人間を狂わせたりと、その中でも様々なバリエーションが生み出され、現在ではだいぶ飽和してきた感じもある。そんな人形ホラー界隈に1本の作品が、東南アジア・フィリピンから殴り込みをかけてきた。そして、ある程度出尽くしたであろうこのジャンルに、これまでにない凄まじいインパクトを与えた。それが、今回紹介する「生き人形マリア」である。
橋からバスが落ちるという悲惨な事故によって、愛する娘を失ってしまった3組の親たち。悲しみに暮れる彼らの元に、それぞれ等身大の人形が送られてくる。人形は、いずれも亡くなってしまった娘たちの顔が模してあった。これは、精神科医のマノロ博士による精神治療の一環で送られたものだった。最初は不気味がっていた親たちだったが、次第に人形に愛情を注ぐようになる。だが、やがてその周囲で恐ろしい現象が頻発し……。
冒頭でも書いた通り、本作はこれまでにない凄まじいインパクトを放つ人形ホラーである。インパクトを与える大きな要因は2つある。まず1つ目は人形のビジュアルだ。不幸な事故によって亡くなった娘の顔を模して造られたそれは、お世辞にも可愛いとは言えない。というか、中途半端にリアルを追及しているため、不気味の谷のどん底に落ちたかのような恐るべき見た目になってしまっている。何故か目の下にある付け睫毛も相まって、とにかく不気味だ。あとデカい。デカくて不気味なので始末に負えない。夜中に見たら間違いなく失神する。他の何かと比較しようのない異様なビジュアルであり、動かなくても十分に怖い。アナベルも見た目は確かに怖いが、アレは完全に怖がらせる目的のデザインだ。だが、本作の少女人形は愛らしい見た目を目指して作ろうとした結果メチャクチャ怖くなった感じで、余計に最悪だ。見たらその晩、悪夢に出るレベルのヤバさなので、覚悟して鑑賞してほしい。
そして2つ目の特徴は、人形の暴れっぷりだ。本作の人形は、本当にビックリするくらい異常に活発に動き回る。人形が動く映画は数多くあるが、それを他作品とは比べ物にならないほど過剰にした結果、唯一無二の恐怖映像が誕生した。チャッキーがピョコピョコ移動するなんてレベルじゃない。完全に人の動きで激しく暴れ回るのだ! 製作の裏側を紹介した資料などが見つからず、正確なところは分からないが、映像を観る限り恐らく子供に人形の特殊メイクをして暴れさせていると思う。あまりにもアグレッシブで、その動きは最早人形という概念を遥かに超越している。奴らが包丁を片手にダッシュで襲い掛かってくる絵面は、衝撃的という言葉すら生ぬるい。設定はまるで違うが、どことなく「ザ・ブルード 怒りのメタファー」を彷彿とさせる。人形ホラーであって人形ホラーでないような独特の映像が、強烈に脳裏に焼き付く。後半、3体の人形たちがキャッキャッと楽しそうに車で何度も人を轢くシーンは本作のハイライト。恐ろしいと同時にどこか微笑ましいあのシーンは特に何度も観たい。
ストーリーはかなり粗削りだが、上記2点の人形パワーで最後までゴリ押ししていく超勢い重視な作りで最後まで引っ張っていく。そんな本作を手掛けたのは勢い溢れる新人ではなく、テレビドラマや映画をいくつも手掛けてきたベテランのウェン・V・デラマス監督である。筆者は殆ど彼の作品は観られていないが、フィリピンでは特大ヒットを連発している売れっ子だ。彼のフィルモグラフィーはロマンス物やコメディが中心で、キャリアの中で唯一手掛けたホラーが本作となる。とても初ホラーとは思えない見事な仕上がりで、デラマス監督の撮ったホラーがもっと観たい!と思わせてくれた。しかし彼は、2016年に49歳という若さでこの世を去ってしまっている。まだまだこれからだというのに本当に残念だ……。改めてご冥福をお祈りしたい。
本作は、不気味極まりない人形のビジュアルと圧倒的な見せ場のパワーで、飽和した人形ホラージャンルに新たな風穴を開けてくれた。フィリピン映画の勢いと過剰なサービス精神に圧倒されること請け合いの作品だ。間違いなく一見の価値はある。
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