【海外ドラマ用語辞典:第12回】脚本家とタレントの抱き合わせ企画 米テレビドラマの87%を占めるパッケージングの仕組み
2021年6月6日 12:00

ゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未来氏が、ハリウッドの業界用語を通じて、ドラマ制作の内部事情を明かします。
パッケージング(packaging):エージェンシーが所属する脚本家とタレント(役者や監督)をセットにした企画を作ること。テレビドラマの大半がこれで出来ている。
俳優から監督、脚本家まで、ハリウッドで活躍している大半の人は、それぞれ代理人を付けている。案件の獲得と契約の締結が仕事で、本人への報酬の一部を手数料として受け取るシステムなため、よりよい条件を勝ち取ろうとクライアントのために奮闘する。分野の違いこそあれ、アスリートの契約更改や移籍交渉を行うスポーツエージェントと基本的に同じだ。
代理人は、たいていエージェンシーに所属している。アメリカにはクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)、ICMパートナーズ(ICM)、ウィリアム・モリス・エンデバー(WME)、ユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)といった大手がある。それぞれのエージェンシーは多彩なタレントを抱えているから、自社タレントを組み合わせた企画を作り上げて、売り込みを行うことがある。
例えば、あるエージェンシーに所属する脚本家が、テレビドラマのパイロット版の脚本を執筆する。これをもとに、エージェンシーは所属タレントのなかから主演と演出家を組み合わせ、パイロット版の脚本家とタレントのセットの企画案を立ちあげる。これをパッケージングと呼ぶ。
テレビ制作会社にとってみれば、パイロット版の脚本のみならず、クリエイティブとキャストのトップが決まっているので、企画開発に時間をかけることなく、すぐに制作に取りかかることができるメリットがある。かくして、大半のテレビドラマがパッケージングを経て、実現している。
大手エージェンシーが多様なタレントを抱えているからこそ実現できるシステムで、過去数十年にわたってハリウッドで機能してきた。個々のタレントが個別に交渉するよりも、パッケージング契約を包括的に結ぶほうが、制作会社、エージェンシーの双方にとってメリットが大きいことも作用している。

だが、2019年、ドラマの設計図となるシナリオを生み出す脚本家たちが、パッケージング契約にNOを突きつけた。
米脚本家組合(WGA)によれば、16~17年に放送されたテレビドラマの87%がパッケージングによって制作されたものだ。だが、ドラマの制作本数が増えているにもかかわらず、脚本家の収入はアップしていないという。原因はパッケージング契約に構造的な問題があるためだと主張する。
問題の1つ目は、パッケージング契約の場合、エージェンシーはパッケージを売りつけることが目的となることだ。制作会社が重要視するのはパッケージに含まれるキャストや監督のほうなので、それをレバレッジにエージェンシーは契約額アップを狙う。その一方で、もともと軽視されがちな脚本家の待遇はさらに疎かにされてしまう。脚本家のために奮闘するインセンティブが働かないのだ。
2つ目は利害衝突だ。近年、エージェンシーが相次いで映像制作会社を立ちあげており、WMEはエンデバー・コンテント、CAAはWiip、UTAはCivic Center Mediaを設立。そして、これらの制作会社ともパッケージング契約を結んでいる。関連企業に対して、エージェンシーが強気な交渉を行うはずもない。

そこで、WGAはエージェンシーに対し、パッケージ契約の破棄や関連企業への出資率を2割以下にするなど、新たな行動規範の採択を求めた。そして、応じないエージェンシー、および、代理人から、所属脚本家を離脱させたのだ。かくして多くの有名脚本家がフリーエージェントとなった。
その後、しばらく膠着状態が続いたが、20年になると大手エージェンシーであるCAA、WME、UTAが相次いでWGAと合意。そして、21年2月に最後のWMEが合意し、WGAが完全勝利を収めることになった。
大手エージェンシー側が折れた背景には、新型コロナウイルスの蔓延があると言われている。コロナ禍であらゆる映像制作がストップしたため、収益が大幅ダウン。そんななか、ロックダウン状態でも稼いでくれる脚本家たちとの再契約が急務であると悟ったのだ。
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