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【「キル・チーム」評論】A24が全米配給権を獲得した「実話」 逃げ場のない戦場で行われた“チームでの殺人”

2021年1月24日 15:00

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「キル・チーム」
「キル・チーム」

仲間、絆、結束――これらの言葉は、時と場合により、美しいイメージからかけ離れてしまうことがある。例えば、用いられる場所が「戦場」だった場合。命を賭す日々の中では、生存におけるキーワードとなるだろう。だが、一度でも離反してしまえば、それらの繋がりは、最も身近な脅威へと変貌を遂げる。A24が全米配給権を獲得した本作では、この「逃げ場のない状況」を目撃することになる。

ドキュメンタリー作家として2度のアカデミー賞ノミネートを果たしたダン・クラウス監督。彼が題材にしたのは「アフガニスタンで米兵が一般市民を殺害していた」という衝撃の実話だ。俳優陣に軍隊トレーニングを受けさせたうえで撮影するという徹底したリアリズムもさることながら、ナット・ウルフアレクサンダー・スカルスガルドが演じた、正義感と愛国心に燃える新兵アンドリューと治安を守るために殺人を正当化する軍曹ディークスというキャラの対比も光っている。

殺人部隊(キル・チーム)を率いるディークスは「看守」とも言えるだろう。チームという「檻」に閉じ込めた者たちの闘争心を煽り、時には親愛の情をもって、彼らの心を支配していく。やがて提案するのは塀の中で“楽しく過ごす”ために行う、ねつ造した敵の殺害だ。100%成功が保証されたミッションをクリアし、兵士たちは士気を高める。彼らは、犯罪に手を染めて「本物の囚人」となってしまうのだ。

印象的な挿話として「良心の空砲」というものがある。これは、銃殺隊を例にあげ「怖気づく者のために、1丁の空砲を仕込む」というもの。重要になってくるのは「誰が殺した(殺さなかったか)」という点ではなく「全員(チーム)で殺した」という考え方だ。ディークスの理想的な部隊を表すようなエピソードとも言えるだろう。

この理念に従えない者も、当然出てくる。だが、彼はふと気づくのだ。自らが「檻」にいることを。「看守」に歯向かうことは容易ではなく、同胞への裏切りは許されない。つまり「檻」の一員で居続けることが、最も安全な選択肢となってくる。正義を貫いたとしても、「戦場」では命の保証はない。

本作では、2種類の殺人が描かれる。1つ目は「俺たちは人を殺す。それが仕事だ」とディークスが語る職務としての殺人。もうひとつは、民間人を敵に偽装して死に至らしめた行為。ともに「人の死」という結果は変わらないが、裁きの対象となるのは後者だけ。2つの殺人の間に、大きな差が生じているという現実を、まざまざと突き付けられるはずだ。

(岡田寛司)

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