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【新春特別対談Vol.1】井浦新×高良健吾、愛して止まぬ映画のこと

2021年1月2日 12:00

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取材に応じた井浦新と高良健吾
取材に応じた井浦新と高良健吾

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の人々が日常生活において大きな変化を目の当たりにした。映画業界も封切りを予定していた新作は軒並み公開延期となり、政府による緊急事態宣言を受けて全国の映画館が休業を余儀なくされたことは記憶に新しい。デビュー以降、常に映画、映画館と真摯に向き合ってきた俳優の井浦新高良健吾にこの1年について、そしてこれからのことを語り合ってもらった。(取材・文/編集部、写真/きるけ)

コロナ禍にあって、エンタテインメント業界に属する人々は“不要不急”という4文字に感情を大きく揺さぶられ、日常としてとらえていた撮影現場もストップしてしまった。ふたりはその時、何を思い、どう過ごしていたのだろうか。

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井浦「僕は誰かのために何かをするというのではなく、まずは観てくれる人のために目の前のことをひとつひとつやっていくだけで精一杯なんですが、そのなかで本当にこの仕事って誰のためになっているのかなという思いは、いつも持っていました」

そんな中で、改めて強く認識したことがあった。

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井浦「映画もドラマも、全ての撮影が止まってしまった。活動すること、行動することを封じられ、2カ月くらい映画館に行けなかった。家で何をしていたかといえば、観られなかった作品、観たかった作品、もう一度観ようと思っていた作品を、あらゆる形で見て、改めて映像作品の必要性を感じる機会になったんです。僕は比較的早い段階から現場が動き出したので、何を注意すべきなのか現場でトライ&エラーを繰り返していました。明らかにそれまでの現場とは居方、過ごし方、やり方も違うわけですが、自分が休止期間にエンタメを渇望したからこそ、文化・芸術というものがないと人間らしくいられないんだと思い知らされたからこそ、以前よりも『誰かの何かにはなれるんだ』と信じられる力が沸いてきた。今やっている仕事を、もっと信じてみようかなと思えるようになりました」

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一方、高良は「手の込んだエンタメ作品が好きだ」ということを再認識する期間だったようだ。

高良「最近は特に手軽で気軽なエンタメが求められている気がしているんです。自粛期間中に、自分たちが出来ることって何だろう? と考えて、行定勲監督がリモートで製作した作品(『きょうのできごと a day in the home』)へ参加させて頂きました。やった意味はすごくありましたが、リモートは主流にはならないし、やっぱり自分は手の込んだものが好きなんだと再確認しました。エンタメ業界を見ていると、とっかかりやすいものって少し手軽なものという印象があるんです。手の込んだものって、僕でいったら映画の現場ということになる。それを信じたいし、これが下火になっていくのはおかしいし、もっともっと手の込んだものが増えていって良いと思います。それに対して、どういう風に人を呼んだらいいのかとか、自分がどういう風にかかわっていったらいいのかなというのは、コロナ以降、今まで以上に考えるようになってきましたね」

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ふたりは、コロナ対策をするうえでのシステムの変化は認めているが、「現場自体はそれほど変わっていない」と口にする。

井浦「僕らがデビューするよりもずっと昔から同じように、撮影の現場では地味なものだし、こつこつと小さなことを積み重ねていくことの連続でしかないんです。ただそこに、フェイスシールドを付けたり、マスクを付けたり、感染症対策は徹底的にやっていますね」

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高良「やっていることは変わらないんですが、何が世の中に受け入れられているのかは変わってきている気がするんです。そして現場で言うと、フェイスシールドって、僕にとっては相当面白いんです。テストまでは付けているわけですが、この人は本番でそういう芝居をしてくるんだという面白さ。本番で気づかされることで、自分の表現も少し変わってきてしまう。段取りで構築していって本番で出すというよりも、段取りのもうひとつ先の本番で、初めてマスクを取ってその人の表情が見られるという状況は、僕には興味深いんですよね」

(Vol.2へ続く)

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執筆者紹介

大塚史貴 (おおつか・ふみたか)

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映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。

Twitter:@com56362672


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