【「続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画」評論】14年ぶりに戻ってきた「ボラット」、娘役も登場する続編にのけぞる
2020年11月28日 22:00

「ボラット」が全米公開されたのは、2006年の11月でした(日本公開は2007年)。かなり悪趣味でお下劣な、観客を選ぶタイプの映画でしたが、全米ではバカ受けで、ボックスオフィスでは2週連続1位を記録し、最終的に全世界で2億6000万ドルも稼いたサプライズヒット作です。
内容は、周到に準備された「どっきりカメラ」という趣なのですが、とにかく主人公ボラット(サシャ・バロン・コーエン)の行いがムチャクチャで、もう犯罪スレスレ。実は、後から何件も訴訟を起こされています。ボラットは「ワタシは?、田舎の国カザフスタンから来ました! アメリカのこと、何も分かりませ?ん」というウソの設定で、次々にアメリカの善良な市民をおちょくっていきます。
ニューヨークの地下鉄の中で、初対面の男に挨拶のキスをしようとしたり、カバンから生きた鶏を車内に放ったり。しかし皆、騙されていることに全く気づかない。「フェイクドキュメンタリー」の体をしていますが、綿密に計画された悪ふざけ。そしてこれが、抱腹絶倒の連続を巻き起こします。カザフスタンの政府関係者も最初は激怒していましたが、やがて「国の知名度が上がってむしろ感謝している」と態度を変えたとか。1作目を未見の方は、是非チャレンジしてみて下さい。私も久しぶりに再見しましたが、全然古くない。改めて大笑いしました。
しかも、その14年ぶりの続編が出た今は、1作目と2作目を続けて見られるという素晴らしい時代!
そもそも「ボラット」は、あまりにヒットしたので、続編がすぐに作られるはずでした。ところが、ボラットのキャラクターが有名になりすぎたので、ロケを始めるとすぐに大衆が集まってきてしまい、まったく撮影にならなかったのだとか。
では、今回の「続・ボラット」はどういう手を使ったか? なんと「ボラットの娘」を新キャラとして投入し、顔のバレていない娘が、父親ばりの悪ふざけを繰り広げるという作戦なのです。頭いいねえ。
ボラットの悪ふざけパワーが2倍になって、それはもう、1作目をしのぐ抱腹絶倒のオンパレード。親子揃っての下ネタはもちろん、トランプネタに新型コロナネタと縦横無尽に暴れまくってます。
まあしかし1作目もそうでしたが、悪趣味でお下劣な内容には「苦手」だとか「許せない」という声も多いのは確か。道徳観や良心とトレードオフな笑いです。
それにしても、ボラットの娘トゥーターがとにかく凄い。演じるマリア・バカローバはめっちゃ身体張ってる。彼女は、オスカーノミネートもあり得ますね。ちなみに1作目は、ゴールデングローブ賞の主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)をバロン・コーエンが受賞、作品賞にもノミネート。アカデミー賞では脚色賞にノミネートされました。
本作で、トランプの顧問弁護士であるルディ・ジュリアーニは、ものの見事にボラットの娘にハメられました。好色ジジイぶりを遺憾なく発揮していますが、すんでの所でボラット父に救われたと言っていいでしょう。
トランプ再選を阻止するために、大統領選の直前にAmazon Primeでリリースされた本作ですが、選挙の結果はボラット陣営の目論見通りになりましたね。
そう言えば本作には、ボラットがトランプタワーの看板の脇で排便するシーンがあるんですよ。今回、1作目も見直したら、同じシーンが1作目にもありました。この人、筋金入りのトランプ嫌いだったんですね。納得。
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