10人に4人の割合…女性ホームレスを描くフランス映画が横浜で上映
2019年6月21日 18:04

[映画.com ニュース] フランスの最新映画を紹介する「フランス映画祭2019 横浜」が、横浜・みなとみらい地区で開催中だ。今年は良質な人間ドラマをはじめ、ホラーやアニメーションなどバラエティ豊かな16作品を紹介する。6月22日に上映される「社会の片隅で」は、これまで見過ごされていた女性ホームレスと彼女たちを支えるソーシャルワーカーを描いた物語だ。来日したルイ=ジュリアン・プティ監督に話を聞いた。
クレア・ラジュニーというドキュメンタリー作家が、ホームレス収容センターで6カ月過ごした経験を書いた「Sur la route des invisible」というルポタージュが原作です。クレアから連絡を受けて著書を読み、ホームレスというテーマそのものではなく、そこに集まる女性たちの姿に、私はポジティブなものを感じ、映像化したいと思いました。その後、私もクレアと一緒に1年かけてフランスのあちこちの収容センターをまわりました。
女性ホームレスはもちろん、彼女たちを助けるソーシャルワーカーもアンビジブル、見えない人なのです。他の人を助けようとしているけれど、彼女たちもそれぞれに問題を抱え、誰からも助けてもらえず、透明人間のような存在なのです。
原作は証言集ですので、物語を組み立てる必要がありました。そこで、社会派コメディにしようと考え、写実的でありながらも光に向かっていく物語、ユーモアと愛と、ヒューマニティをテーマにしました。
カトリーヌとジュリーという役柄の2人は原作で描かれた人をモデルにし、共にプロの俳優に演じてもらいました。ビヨンセやブリジット・マクロンなど著名人の愛称がつけられた女性たちは、すべて過去にホームレスを経験している人たちです。主にホームレス収容センターなどの施設で暮らす300人の女性に会い、1時間ずつ話を聞きました。300時間異なる物語を聞いたのです。それとは別に演劇ワークショップを行い、100人の女性に自分の尊敬する女性の名前を名乗ってもらい、出演者を選びました。DV被害者など、身元や名前を知られたくない人もいるので、そういった仮の名前を使うことは、実際に収容センターで行われるやり方です。また、ユーモラスで温かな空間を作ることにも役立ちます。
DV被害に遭い、夫を殺してしまった女性も出てきます。自分にうそををつきたくないと、正直に告白する彼女の話を聞くと、人生を戦い抜いた女性だと思いました。彼女に出演してもらって、私もチームも学ぶことがありました。皆、些細な日常の問題を抱えていますが、彼女が背負ったものはそんなものではないのです。彼女から大きな力をもらい、今でも連絡を取り合っています。
また、主人公のソーシャルワーカーのオドレイは、著者のクレアと重なります。彼女は社会活動家ではありませんが、ホームレスの人々を助けたいという気持ちが強く、一緒に道路やパーキングで寝たりすることをを厭いませんでした。

フランス映画といえば、パリの大きなアパルトマンで、美男美女が何不自由ない生活をしているような描写が多いですが、フランス人のほとんどはこの映画に出てくるような街で生きていると思います。失業率が高く、不安定な生活を送っている人が多いのです。現在600万人がホームレスだそうで、それは人口の10パーセントという大きな割合で、10人に4人が女性なのです。
ロケ地は北部のリールの近くですが、あえて場所が特定されないように意図しました。不安定な生活を送る人は世界中にいます。ですので、日本の皆さんからどんな反応が出るのか興味深いです。絵葉書のように美しいパリと、パリ以外のフランス、そういった違いを見ていただけたらと思います。
もちろん、フランス国内でもこんなに女性のホームレスが多いことは知られていませんでした。原作の本とこの映画によって認識されたようです。ホームレスの女性は暴行を受けたりされないように隠れたり、髪を短くして女性とわからないようにしたりという工夫をして路上生活を続けているので気づかれにくいのです。フランスでも新しい話題として注目を集めました。
最初の長編は食品廃棄について、2作目はイザベル・アジャーニを主演に燃え尽き症候群をテーマにしました。不公平があるこの社会で、映画どんなソリューションを提案できるのか、現代社会が抱える問題を観客に考えてもらえるような作品をこれからも作っていきたいと思います。
「社会の片隅で」は6月22日、イオンシネマみなとみらいで12時30分から上映。「フランス映画祭 2019
横浜」(http://unifrance.jp/festival/2019/)は、23日まで開催。チケットは発売中。
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