「ザ・ネット」ルッツ・ダンベックが来日 戦後ドイツの“再教育”描く新作ドキュメンタリーを語る
2017年9月30日 11:00

[映画.com ニュース]「ザ・ネット」(2004)でヨーロッパ・メディア賞などを受賞した美術家・映像作家のルッツ・ダンベックの最新ドキュメンタリー作品「オーバーゲームズ」(16)の上映イベントが東京ドイツ文化センターの主催で、9月29日シアター・イメージフォーラムで行われ、来日したダンベックが作品を語った。
ナチズムのイデオロギーに染まったドイツ国民を、アメリカは精神病罹患者とみなし、人類学者や生物学者の最新の理論を取り込み、民主的で平和的な国民へと変貌させる「再教育」プログラムを立ち上げる。その「再教育」プログラムに戦後のテレビ・メディアがいかに寄与したか、戦後ドイツにおけるテレビの娯楽番組と政治教育の関係を検証するドキュメンタリー。
「『再教育』がドイツのメンタリティを大きく変えたことは間違いない。ただ、それが具体的にどういうプロセスで、何が起こったかということはわからない。様々なボタンを押して、何かのプロセスが起こった。その変質は何だったのか、外見が変わっただけで本質は変わっていないのではないかということを今作で描いた。先日の選挙を見ても、そういった一定の心配が起こっている」と話す。
映画では、文書や映像資料、そして研究者やテレビ番組プロデューサーらによる証言など、リサーチした膨大な情報をコラージュのように組み合わせ、監督の思考の広がりや多岐にわたる問題を視覚的に提示している。
「アニメーションのシートを重ねていくのと似たような作業をしていると言えます。私はすべてのコンセプトを作ってから映画を作り始めるのではなく、資料を集め、素材を積み重ねて映画を作ります。今作では、400冊の本を借り、ある本のページをめくったり、また違う資料に向かう動きがコラージュのように反映され、我々の思考の動きと一致します。アニメーションを作っていた時代も、言葉にできないようなものを表現していましたが、その精神は生きていると思う。中身に関しては、作り上げてからわかることもあり、いろいろな解釈が開かれている。決定的な断言はしません」と手法を説明した。
戦後ドイツの再教育の一端を担ったマスメディアの功罪とともに、消費主義が平和主義、民主主義というイデオロギーを超えて蔓延しているという現状を示唆する。「鳥瞰的に見ればアメリカにとってドイツのことは大きな問題ではない、アメリカにとって最大の問題は世界の市場の問題。相対的に見る視点が必要」「社会の中で、問題が解決できない部分に宗教が入り込んで、うまくいくように見えることはあるが、それで根本的に問題が解決するわけではない。現代社会ではそれが消費に代わり、メディアや娯楽ショーが入り込み、意味のある人生が行われているような錯覚を覚えさせるが、それは麻酔のようなものでしかないと思う」とまとめた。
また、前日の9月28日から29日にわたり、東京藝術大学で学生を対象としたワークショップが行われ、キャリアのスタートとなった、1980年代、東ドイツ時代のアニメーション作品の紹介からはじまり、代表作「ヘラクレス・コンセプト」など、「記憶の考古学」をテーマに、芸術、権力と学術の関係性を取り上げる自身のライフワークについて発表した。30日には、足立正生監督、早稲田大学の伊藤守教授、東京藝術大学の毛利嘉孝教授とともにシンポジウムに参加する。
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