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D・チャゼル監督×R・ゴズリング、ミュージカル映画を復活させた2人が見せた“夢”

2017年2月25日 08:00

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デイミアン・チャゼル監督と ライアン・ゴズリング
デイミアン・チャゼル監督と ライアン・ゴズリング

[映画.com ニュース] 夢を追う人、現実を受け入れた人、そんなすべての人々とロサンゼルス・ハリウッドへの究極のラブレターが完成した。夢と現実が交錯する「ラ・ラ・ランド」で、ミュージカル映画をリアリズムとともに現代的に復活させた若き才能デイミアン・チャゼル監督と、繊細かつ情熱的な演技で世界中をとりこにしたライアン・ゴズリングが、今作への思いを語った。

映画は、ハリウッドで女優になることを夢見るミア(エマ・ストーン)と、売れないジャズピアニストのセバスチャン(ゴズリング)の恋と人生を、歌とダンスを交えて彩り豊かに描いた。劇中でセバスチャンは「ジャズは死につつある」と嘆くが、現在のミュージカル映画も同じく“死につつある”ジャンルだ。チャゼル監督が「資金集めをするときには、ミュージカルやジャズは、映画の要素として人気がないと嫌というほど思い知らされたし、興行成績も見こめないと何度も言われた」と明かす。

しかし、蓋を開けてみれば、数々の映画賞を総なめにし、第89回アカデミー賞には史上最多タイの14ノミネートを果たしている。

チャゼル監督は、「普段は目にしないものでも、面白いものがあると気づかせることは映画の役目だと思う。ミュージカルが大嫌いとか、ジャズが聞こえてくるとラジオを止めてしまうような人にこそ見てもらいたい。こういうのもありなんだと思ってほしいんです」と映画監督としての使命感をのぞかせる。

その言葉を具現化したのが、セバスチャンとミアが出会うオープニングシーンと、初めて2人きりで踊るシーンだ。オープニングは、大渋滞しているロサンゼルスの高速道路で、キャストが息のそろったステップを披露し、往年のミュージカルを彷彿させたかと思えば、ヒップホップやブレイクといった様々なジャンルのダンスを挿入して現代に引き戻すなど、とにかく目が離せない。スニーカーの靴底が自由にアスファルトを蹴る音が、観客を一気に独自の世界に引き込んでいく。

2人が夜景を背に踊るシーンでは、ハイヒールを履いていたミアが、バッグからダンスシューズを取り出し、息の合った動きのなかで堂々と履き替えてしまう。“突然歌って踊り出す”という、ミュージカルのアートフォームへの苦手意識を逆手にとる演出には脱帽だ。今作で、歌とダンスが物語の延長線上に自然と存在するのは、そんな巧みな演出と、主演2人の演技力の賜物だろう。

恋に落ちたミアとセバスチャンだが、セバスチャンが生活費のために加入したバンドが成功すると、気持ちがすれ違い始める。同時期に大きな挫折を味わったミアは、ついに夢を諦めると言い出す。ハリウッドで成功を掴んだゴズリングとチャゼル監督も、ミアのように自らの才能を信じられないことがあると話す。

「落ち込んだ経験はたくさんある」「結局のところ、運なんだ」と話すゴズリング。そんな理不尽な世界での成功の鍵は「努力と忍耐」だという。

「自分を高め続けることで、運を掴めるポジションにたどり着けると思う」。今作のためにピアノを「3カ月間一心不乱に練習」し、手元のクローズアップさえ吹き替えなしで演じきったゴズリングが言うのだから、間違いない。

今作の構想をハーバード大学在学中からあたため、ようやく実現させたチャゼル監督も“挫折”を熟知している。「ミアが『私には才能がないかもしれない』と言う場面は、もっともパーソナルなシーンのひとつ。僕自身、自信満々でエゴにまみれている自分と、まったく自信がない自分の間を行ったり来たりしているからね(笑)」

「長い間、自分が見たい映画を作ってきた」というゴズリングは、今作ではそれと同時に「観客がどんな映画体験をするのかを意識する」こともできたと満足げに語り、そのバランスをとったチャゼル監督の手腕を称える。

「僕たちにとっては、この映画を作れただけで大勝利。撮影が終わったときには、『やってやったぞ!』ってみんなでハイタッチしたよ。もしもこの映画が誰にも好かれなくても、僕たちは誇りに思っているからそれでいいと思ったんだ。でも公開したら、観客の反応があって、何度も繰り返し見たという人もいる。この映画の世界観が受け入れられたことで、大勢の人がこんな映画や、こんなリスクをとる監督を求めていると感じられて、とても励みになっているよ」

ゴズリングから絶賛され、照れくさそうにうつむくチャゼル監督。そんな穏やかな表情の内に秘められた映画への思いはとてつもなく熱い。

「大スクリーンで見なきゃいけない映画を作りたいんです。自分や周囲の人が経験した個人的で小さな物語を、大きく広げて大スクリーン向けの叙事的なものに仕上げたい。何かを暴露してさらすような作品になるかもしれないけれど、それはもっともエキサイティングなアートにもなり得るからね」

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