“アングラの旗手”足立正生監督、「断食芸人」に込めた若者へのメッセージ語る
2016年2月28日 13:30
[映画.com ニュース] 足立正生監督がフランツ・カフカの短編小説を映画化した「断食芸人」が2月27日、東京・渋谷のユーロスペースで公開初日を迎え、主演の山本浩司をはじめ流山児祥、井端珠里、伊藤弘子、本多章一、愛奏、守谷周人、安部田宇観、足立監督が同館で舞台挨拶を行った。
“アングラの旗手”として知られる足立監督が、「断食芸人」として見世物になっていく男と、男を取り巻くグロテスクで不穏な禍々しい異様な世界を描いた。足立監督は、「精一杯楽しんでこの映画を作らせていただいたので、その楽しさが面白さとして生きていればそれ以上言うことはないです」と真摯な面持ち。さらに、今作のテーマには福島原発事故が根底にあるといい、「何も言えないということではなく何も言わないということで、非常に生きづらい社会をどうこじ開けて生きていくのかという、若い人たちへのメッセージになれば」と力強く語った。
この言葉を受け、周りに流されるままに「断食芸人」に祭り上げられる主人公を演じた山本は、「監督の持っているメッセージをまったく理解せずに演じていました。ただひたすら、『食べたいものがなかった』という、単純な動機でそこにいるということを徹底してやった」と本音を吐露。「シンプルな演出が多かったので、それに沿って何も考えずに。それで良かったですよね?」と足立監督に目をやると、「まったくその通りです」と太鼓判を押され、安どの表情を浮かべていた。
また、「テロリスト 幽閉者」(2006)にも出演した流山児は「こんな映画ってない。アングラって本当自由なんだな」と驚きを隠さない。「映画から自由が消えつつあるなかで、監督は本当に自由に映画を撮ったんだと思いました。世界には圧倒的に通じる。わけ分からないけど面白い」とアピールした。
さらに、今作で俳優デビューを果たした守谷は「足立監督と初めて会って、言葉にすごく力があると思った。言葉に一切偽りがなくて、すごくいい大人に出会えて幸せ」と胸中を明かした。続けて、「これから僕がどんなにいい作品に出合おうと、どんなにたくさんの作品に出合おうと、この『断食芸人』がデビュー作であると胸を張って言えると思います」と緊張気味に話すと、足立監督は目を細め、会場からは拍手が沸き起こっていた。
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