想田和弘監督、新作「牡蠣工場」を通して“文明の病”を痛感
2016年2月20日 16:00

[映画.com ニュース] 岡山県の牡蠣工場で働く人々の姿を記録したドキュメンタリー映画「牡蠣工場」が2月20日、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開され、撮影・編集・製作を手がけた想田和弘監督が舞台挨拶に出席した。
ナレーションやBGMなどを排した、想田監督独自のドキュメンタリー手法「観察映画」の第6弾。最盛期には20軒近く牡蠣工場が存在した岡山・牛窓町の現状を通じ、グローバル化、少子高齢化、過疎化、労働問題、移民問題、さらに東日本大震災の影響など、日本が抱える諸問題を浮き彫りにする。
牛窓町は義理の祖母の郷里であり、夏休みは同町にある築150年の民家で過ごすという想田監督。漁師の生活をカメラに収める過程で、偶然牡蠣工場を取材したことで着想を得たといい、「観察映画の手法はアクシデントを歓迎します。工場を見せてもらうことで、何が見えるのかというところが作品の着想です」と振り返った。
想田監督は、約9カ月間に及ぶ編集作業の中で、改めて気づいたことがあるという。牡蠣工場のオーナーの息子に「工場を継がないんですか?」と聞いた場面だそうで、「『全然継ぐ気はない』と言われ、撮影中は『継げばいいのに、なんでだろう』と思ったんです。しかし編集時にすごく反省しました。僕自身も同じだったからです」と神妙な面持ちで語る。
自身の境遇と重ね合わせ、「僕の父は、栃木の足利でマフラーを作る小さい会社をやっていて、僕も当然のように継がなかったんです。父も継いでくれと言わなかった」。“当然のように継がなかった”理由を考えるうち、「もしかすると僕らは、子どものころから勉強していい学校に行って、ホワイトカラーになれというメッセージを受け取り続けてきたのではないか」という仮定に行き着いた想田監督は、「本来は農家になれとか漁師になれというメッセージがあってもいいはずなのに、ほとんど受け取ってこなかった気がする。そういう衝撃的なことに気がついたんです」と述懐する。
想田監督は「第一次、第二次産業はきついし儲からない、社会的ステータスはなぜか低い。第三次産業は給料もいいしステータスが高いから、そうなりなさい。社会はおそらく、そういう価値観です」と見解を述べ、「これは歪んだ価値観で、ごはんを作る人が居ないと困るわけだから、本来は皆同じ給料やステータスにないといけないのに、そうなっていない」と厳しく指摘。そして「僕も田舎を出てニューヨークに住み、映画を作っているから批判する資格もない。自分もそういう構造の中に無自覚に居たということに、すごくショックを受けたんです」と自省しつつ、「日本だけではなくアメリカでも同じだし、発展途上国では『貧困から抜け出すためには勉強をしなさい』ともっと言われる。これは根深い問題で、文明の病だと思う。その価値観があるからこそ、牡蠣工場にも人が来ないわけです」と、ホワイトカラーが優位だと想定される社会に警鐘を鳴らした。
フォトギャラリー
関連ニュース





映画.com注目特集をチェック

入国審査
【これめっちゃ面白かった】この2人、空港の入国審査で何時間も尋問される…一体なぜ? 衝撃の結末へ
提供:松竹

またピクサーが大傑作つくったんですか…
【大人がボロボロ泣く感動超大作】両親を失った主人公の再生。そのままの君が好きだよ。
提供:ディズニー

映画界を変える“究極の推し活”がある。
【革命的すぎてヤバい】大好きな俳優と映画を、まさかの方法でとことん応援できる!!
提供:フィリップ証券

ジュラシック・ワールド 復活の大地
【超絶パワーアップ】マジ最高だった!! 究極のスリル、圧倒的な感動、限界突破の興奮!!!
提供:東宝東和

何だこのむちゃくちゃ“刺さる”映画は!?
【尋常でなく期待してる】“命より大事な誰か”のためなら、自分の限界を超えられる。
提供:ディズニー